対策1:なにはなくとも「規則正しい生活」から!
私たちの体には、昼間活動して、夜は休息するという体内リズムが備わっています。
例えば、夜寝ると体温は下がり、朝起きて活動を始めると上昇し、夕方もっとも高くなります。血圧やホルモンの分泌も、こうした体内リズムと連動しています。この体内リズムを調整しているのが自律神経。このため、昼夜が逆転したような乱れた生活をしていると、自律神経のバランスが崩れてしまうのです。
「免疫細胞は、自律神経のバランスが整っているときに元気になります。地味なようですが、朝決まった時間に起きて、夜もできるだけ同じ時間に寝る…そんな規則正しい生活を心がけることが、免疫力アップの第一歩。特に、朝は太陽の光を浴びることで体内リズムが整うので、早起きを心がけるとさらにいいでしょう」(奥村先生)
対策2:いちばんの細胞修復法は「睡眠」!
「免疫細胞の主役であるNK細胞(第1回参照)も、昼間よく働き、夜には働きがスローダウンして免疫力が低下します。ですから、この時間に睡眠をとることがとても大事。また、アンチエイジングホルモンと呼ばれる成長ホルモンの約7割が、睡眠中に分泌されます。疲れた細胞の修復が行われるのも睡眠中です。睡眠なくして、健康維持はできません」
夜、早くは眠れない…という人も、少なくとも心身ともに夜はリラックスモードで過ごすようにしましょう。
対策3:自分なりのストレス解消法をもつ
ストレスを受けているときは、自律神経のうちの「交感神経」が優位になっています。ストレスが多い現代社会においては、交感神経が優位の状態がどうしても長時間続いてしまいがち。その結果、自律神経のバランスが崩れることが、NK細胞の働きを弱めてしまう大きな原因に!
だからこそ、ストレスを溜めないよう、自分なりのストレス解消法を持つことがとても大切。深呼吸を行う、瞑想する、趣味を楽しむ、軽い運動をする、おいしいものを食べる、気のおけない友人と会話を楽しむ…など、あなたがストレスを忘れてリラックスできる方法を探してみましょう。
「生真面目で完璧主義の人ほど、ストレスを溜め込みやすい傾向があります。しかし、なにごとも“ほどほどに”がいちばん。上手にオンとオフを切り替える、自分をほめるということも大切です。ストレスを上手に解消できる人ほど、免疫力がアップすると言っても過言ではありません」(奥村先生)
とはいっても、逆にストレスがまったくない=刺激がない状態でも免疫力は落ちるとのこと! 特に高齢者は、積極的に人との関わりを持ち、適度な刺激を受けることも必要です。新型コロナウイルス対策による外出自粛でも、1日中、家の中に引きこもってゴロゴロ過ごすのは要注意。1日1回は外の空気を吸いに散歩に出かけるなど、上手に気分転換をして、メリハリのある生活を心がけましょう。
対策4:笑うことでNK細胞が元気になる!
昔から「笑う門には福来る」といわれますが、実際に、笑うとNK細胞が活性化するという実験結果があります。
3時間のお笑いライブを見た前後で血液検査を行ったところ、NK細胞が18人中14人で活性化していたのです。笑うことで心身がリラックスし、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンやβエンドルフィンなどの脳内ホルモンが分泌され、結果、NK細胞が活性化されたと考えられます。
(*実験はがんや難病の患者のための生きがい療法実践会を主宰する医師グループと、日本笑い学会が1991年に共同に実施)
笑いのタネはなんでもOK。もしも笑う気になれなくても、つくり笑いでも効果があるそう。笑顔をつくる表情筋が、幸せホルモンであるセロトニンの分泌を促してくれます。
対策5:ストレスケアにはビタミンC
私たちの体は、ストレスがかかるとアドレナリンを分泌し、心拍数、血糖値、エネルギー代謝などを調整してストレスに対抗しようとします。このアドレナリンを合成するのに欠かせないのがビタミンCです。ですから、なにかストレスを受けると、ビタミンCがあっという間に消費されてしまいます。
「また、ビタミンCは皮膚や臓器すべての細胞の元になっているコラーゲンの合成にも不可欠。ビタミンCをしっかり摂取することで、免疫システムの第一段階である皮膚や粘膜を丈夫にしたり、免疫システムの主役ともいえるマクロファージやNK細胞を活性化したりして、ウイルスや細菌に強い体に導いてくれます」
ビタミンCは柑橘類、ベリー類、キウイ、ブロッコリー、トマトなどに多く含まれます。毎日摂るのはもちろん、心身にストレスを受けたときは、さらにたっぷりのビタミンCを!
対策6:食事は楽しい気分で! が鉄則
毎日の体をつくる食事は、食べる食材の内容も大切ですが、その食べ方がもっと重要だと奥村先生。
「体にいいからと、嫌いなものや味気ないものをイヤイヤ食べたのではかえってストレスに。今日はパスタにサラダ、明日は焼き魚にお味噌汁、でもときにはラーメンや丼ものetc…と、バラエティ豊かな食卓なら、結果、さまざまな栄養が摂れて、気持ちも楽しくなります。
また、緊張する人との会食は交感神経が優位になるため、消化吸収が悪くなってしまいます。食事はあくまで“楽しい気分でおいしく食べる”ことがなにより大事。幸せホルモンのセロトニンや多幸感を与えるβエンドルフィンなどの脳内ホルモンが分泌され、NK細胞の働きが活性化します。
また、“こうあらねば”が強すぎる生真面目な人は、ちょっと肩の力を抜いて、なにごとも楽しく取り組むことも免疫力アップの秘訣かもしれません」
第8回は、免疫力を上げる方法その3、「基礎代謝」を上げるための具体的な方法をご紹介します!
監修/奥村 康さん(おくむらこう・医学博士)
順天堂大学医学部免疫学特任教授。アトピー疾患研究センター長。スタンフォード大学リサーチフェロー、東京大学医学部講師、順天堂大学医学部教授、同大学医学部長などを経て、現職。免疫学の国際的権威である。著書多数。
イラスト/しおたまこ 取材・文/山村浩子