一見、平凡な「肩こり」でも、思いがけない病気が隠れていることも…。それを見逃さないためにも、併発する症状などから、隠れた病気の可能性をチェック!
今回の話を伺った先生
総合診療医。東京医科歯科大学医学部附属病院・総合診療科科長。同大学院 医歯学総合研究科 全人的医療開発学講座 総合診療医学分野教授。三重大学名誉教授
「症状の観察」で、隠れた病気を見逃さない!
40代50代なら誰しも不調のひとつやふたつは抱えているもの。でも、放置している不調の中に、治療が必要な病気が潜んでいる場合もあります。
「調子が悪いと思ったら、まずはかかりつけ医や総合診療医に相談を」と言うのは、東京医科歯科大学附属病院・総合診療科の竹村洋典先生。「そして、受診の際に最も重要なのは、症状をできる限り細かく伝えることです」
自己診断は禁物。不調は放置せず、医師に相談を
“痛み”といっても、どんな痛みがどのくらい続いているかで、考えられる病気も異なります。①どこに(部位)どんな症状(痛み、しびれなど)があるのか、②その程度(眠れないほど痛いなど)、③始まった時期や頻度、継続時間、時間帯、④症状が軽減または悪化する要因(入浴で楽になるなど)、⑤併発する症状があるかなど、症状を細かく観察することが、隠れた病気を見逃さないためのポイントです。
「不調の原因や病気の自己判断は禁物。医師は想像以上にさまざまな要因を考えて診断と治療を行なっています。ここでご紹介するケースは、医療機関にかかるうえでの“参考”として役立てていただければと思います」
ひどい肩こり
もはや現代病ともいえる肩こり。多くは筋肉の緊張が原因ですが、ほかの症状が伴うようなら、下記のような病気も考えられます。
50歳以上の大人の女性に多く発症する、原因不明の炎症性疾患です。肩から首の痛みに加え、発熱、腰や大腿部、四肢に近い部分に筋肉痛がある場合は、この病気の可能性があります。就寝中の痛みで寝返りが打ちにくくなることも。多くはないものの、失明するケースもあります。血液検査でCRP高値、赤沈亢進(せきちんこうしん)などの炎症反応があるのが特徴。治療はステロイド薬がよく効きます。ただの肩こりと片づけないことが肝心です。
甲状腺ホルモンが不足する病気で、臓器の働きや細胞の代謝が低下するため、体のあちこちに不調が出ます。気力が出ない、寒がり、便秘、髪が薄くなる症状も。
体内のカリウムが不足すると、消化管や筋肉、腎臓、神経系に不調が生じます。血清カリウム濃度が3.5mEq/L未満だと「低カリウム血症」。肩の痛みに加えて、しびれ、筋力低下、嘔吐などの症状が現れたら要注意。
体の広い範囲に激しい痛みが3カ月以上続くようなら、この病気の可能性も。疲労感、不眠、うつ症状などの不定愁訴も伴います。
イラスト/しおたまこ 構成・原文/山村浩子