【教えていただいた方】
1973年生まれ。日本医科大学卒業後、産婦人科医に。その後、美容皮膚科治療、栄養療法、点滴療法、ホルモン療法を統合したトータルアンチエイジング理論を確立。2008年「日本機能性医学研究所」を設立(2009年に法人化)。2017年、スーパーフードとしての牧草牛(グラスフェッドビーフ)の普及を目指し、日本初の牧草牛専門精肉店「Saito Farm」をオープン。2022年、機能性医学と再生医療を融合させた治療拠点として「斎藤クリニック」を開設。著書に『サーファーに花粉症はいない』(小学館)、『病気を遠ざける! 1日1回日光浴 日本人は知らないビタミンDの実力』(講談社+α新書)ほか多数。斎藤クリニック、Saito Farm
[遅延型フードアレルギーの検査結果は、このように食物ごとにグラフとして表示されます。数値が高いほどアレルギー反応が高いということ。卵は卵白と卵黄は別々に、乳製品は牛乳以外の乳の反応も見ることが可能です]
♦“昭和の朝食メニュー”をやめたら、肌悩みや不調が改善することも!
「毎日食べているものが、ちょっとした不調、人によっては重大な不調につながっていることをまずは自覚しましょう。特に昭和に生まれ育ってきた世代には、今も昭和の食習慣をずっと続けている人がけっこういます。栄養面からしても、タンパク質や糖質は、昭和に最適といわれていた摂取量は、実はかなり間違っていたことがわかってきています。タンパク質は少なすぎ、糖質はとりすぎ。食物繊維も少なすぎましたね。
油の選び方なども、昭和世代の健康概念が不健康だったことは明らか。昔は“サラダ油”が健康であるとされ、今ではトランス脂肪酸として叩かれている “マーガリン”が、バターよりもよいとされていたわけですからね」。
とは、このアレルギーに詳しい医師、斎藤クリニックの斎藤糧三先生。
前回もお伝えしたように、日本人の遅延型フードアレルギー(食物過敏症)の原因で特に多い食べ物TOP3は卵、乳製品、小麦粉でした。
昭和の時代、ハイカラといわれていた朝食メニューを思い出してみましょう。
トースト(+マーガリンorジャム)
卵料理(+サラダ油)
牛乳やヨーグルトなど
そこにサラダやフルーツを足し、今も同じような朝食を食べている人、多いですよね? 少なくとも、朝食に卵、乳製品、小麦粉を3拍子そろえて食べている人は多いと思います。
数カ月前、この検査を受けたモリタさんもその一人。
顔の広範囲にできた肝斑は3年もレーザー治療を続けたのに改善せず。ずっと下痢ぎみだったので、医薬品やサプリを月に3万円分も買って飲んでいたのによくならず。そして、朝が苦手(なかなか起きられない)なことも、それはそういう体質なのだと思っていたそうです。
斎藤先生の勧めで遅延型フードアレルギーの検査をしてみると、なんとよく食べている卵と乳製品が高反応。
そこでこれらを除去し始めました。もちろん、除去する代わりに、アレルギーリスクの少ない肉などでタンパク質をしっかりとり、サプリメントはビタミン類・ミネラル類をとれるものに変えました。
すると、わずか2、3週間で肌が激変!
肝斑が薄くなり、きめが整って肌表面がなめらかになってきました。血色もよくなったせいか、それまでまわりから「幸薄そう」などと言われていた顔が、イキイキして見えると言われるほどに!
3カ月後には、お腹の調子もよくなったうえ、朝から元気に起きられるようになったというのです。
♦大好物ほどアレルギー高反応で、ショックを受ける人も多い遅延型フードアレルギー
モリタさんが受けたのは、採血により反応している食品がわかる遅延型フードアレルギー(食物過敏症)検査。検査するのは免疫グロブリンG(IgG)という抗体の数値です。一方、皮膚科などの医療機関で、健康保険が適用になる即時型の食物アレルギー検査は、免疫グロブリンE(IgE)の抗体値を調べます。
「アレルギー検査をしたことがある」という人のうち、大半が受けているのは即時型アレルギーの検査です。この検査で反応する食品がなかったからといって、遅延型でも反応しないとは限りません。逆に、一般的なアレルギー検査で「陽性」と言われた食品でも、遅延型では反応が出ない場合も多いのです。
[一般的な食物アレルギー検査と遅延型アレルギーの検査では、同一人物でもこんなふうに検査結果が大きく異なるのもよくあること(出典:アンブロシア社内資料)]
「『この肌トラブルは何かのアレルギーかもしれない』と、病院で何度か検査をしたにもかかわらず、何も反応がなく、原因がわからないことはよくあります。そんな人がIgG抗体、遅延型フードアレルギー検査を受けてみると、大好物でよく食べているものの反応が高く、びっくりしたり納得したり…ということもあります。
検査の結果を見て高反応の食品を除去してみると、悩んでいた症状が意外にあっさり軽減することも。つまり、遅延型アレルギー検査は、一般のアレルギー検査では原因がわからない方のための補助的な検査とも言えますね」
そう教えてくれるのは、遅延型フードアレルギーの検査キットを14年前から販売し、普及活動に取り組んでいる会社アンブロシアの代表取締役、 志賀惠子さん。
「弊社の検査を利用された方々からは、改善されたという嬉しいメッセージをたくさんいただいていますが、一番多いのは顔や手などの肌トラブルに関するもの。
人に見える部分のトラブルは大きなストレスですから、良くなった喜びもひとしおなのかもしれませんね。
その他、慢性的な頭痛や下痢、強い疲労感、午後の強い眠気や集中力の欠如、関節痛、痩せにくさなど、さまざまな症状が改善したお話も。
治す方法がないと思われがちな紫外線アレルギーなども、食習慣を変えて治った方もいました。
また、すでに40年近く遅延型フードアレルギー検査が利用されているアメリカでは、更年期の不定愁訴にも関係しているとの報告があります。
更年期の不眠、メンタルの不安定さ、イライラやうつっぽさなどの改善に役立つようです。
食を変えることでメンタルまでもハッピーに変わるというのは実に興味深いことですね。ご主人が検査を受けて高反応食品の除去食を始めたら『主人が穏やかで優しい性格になった』という方もいらっしゃいましたよ」(志賀さん)
ふたつをわかりやすく比較してみましょう。
即時型、遅延型という呼び名が違うだけとは思えない違いがあります。
更年期の不調を疑うとき、同時に遅延型フードアレルギー(食物過敏症)検査も視野に入れておきたいものです。
「長年アトピーに悩まれている方でも、アレルギー検査は小さい時に一度受けたきり、という方は少なくありません。
何らかの症状がある方は、ぜひ一度保険適用のIgE抗体の検査も受け、両方の検査結果を参考にされることをおすすめします」(志賀さん)
【お話を伺った方】
外資系エレクトロニクス企業でキャリアを重ねる。2名の若い同僚の突然死をきっかけに、「残りの人生、人の健康と幸せに関わる仕事がしたい」と思うようになり、2008年にアンブロシアを設立。同年、ボンド大学大学院MBA卒業。遅延型フードアレルギー検査キットをはじめ、ストレス、ホルモン、有害物質など、体の状態を知り健康に近づくための各種検査キットを提供
取材・文/蓮見則子