ぎっくり腰の首版が寝違えです
痛くて首を回せない、腕が上がらない…。寝違えはとてもつらいものです。
「多くの場合、不自然な寝方で眠り続けたときに発症する、首や肩まわりの筋肉や靱帯(じんたい)に起こる、急性の炎症です。いわば、ぎっくり腰ならぬ、『ぎっくり首』です(笑)。
通常は無意識のうちに寝返りを打つことで、自然と首や体の姿勢を変えて、一部分にだけ負担がかからないようにしています。しかしながら、疲労がたまっていたり、飲酒後、質の悪い睡眠、合わない枕などで、寝返りが少ないと起こしやすくなります」(武田淳也先生)
首が痛くて動かせない、時には頭痛や背中にまで痛みを感じることがあります。通常、数時間~3日ほどで改善します。痛みが強い場合には、整形外科を受診して、他の病気(頸椎椎間板ヘルニア、頸椎症性神経根症など)の可能性がないかを調べてもらうといいでしょう。
ぎっくり首なので、まずは安静!
「寝違えは急性の炎症です。動かして痛い方向には動かさないのがいいでしょう。無理やり動かしたりストレッチなどを行うと、逆効果になることもあります。まずは安静にして、患部を冷やすなどして、痛みが弱まるのを待ちます。
医療機関では、消炎鎮痛剤や筋弛緩薬の内服薬や湿布薬の処方、電気療法で筋肉を緩めたり、痛む筋肉や筋膜に局所麻酔薬を注射する方法などがあります。
回復し始めたら、まわりの筋肉から徐々に動かす!
痛みが落ち着いてきたら、血流の改善をしていきます。いきなり患部ではなく、まわりの筋肉から少しずつ動かしていきましょう。
解消法1:肩甲骨の可動域を広げる
肩甲骨の内転(寄せる)ストレッチ
骨盤を床に対して垂直になるようにして、横から見て足、骨盤、頭が一直線上にくるように立ちます。両腕を後ろに引いて両手を組み、20秒キープします。左右の肩甲骨を寄せるように意識します。
肩甲骨の外転(離す)ストレッチ
① 椅子に座り、両足は骨盤の幅くらいに開きます。息を吸いながら、骨盤の延長線上に頭がくるように姿勢を正し、両腕を前に出して、胸の前で両手を組みます。
② 息を吐きながら、腕をさらに前に出し、上体を後ろに引くようにして、背中を丸めます。頭は下げて、首の後ろと背骨が伸びるのを感じます。息を吸いながら、元に戻ります。これを数回繰り返します。
解消法2:頭部下のツボ押しで血流アップ!
「首の後ろ、髪の生え際にある、肩こりにも効く3つのツボを押すのもいいでしょう。天柱(てんちゅう)は太い筋肉の外側、頭蓋骨の下のくぼみ。完骨(かんこつ)は耳の後ろにある出っ張った骨の先端あたり。風池(ふうち)はその真ん中あたりです。
【押し方】
4指で後頭部を覆うようにして、左右の親指の腹で、天柱→風池→完骨の順に、息を吐きながらゆっくりと、気持ちいいと思う圧で押していきます。数回繰り返します。
位置にあまりこだわりすぎず、気持ちいいと思う場所を押すのでOKです。
解消法3:寝がえりがしやすい自分に合った枕を!
「日頃から湯船につかり、頸部や肩を温めて、血行を促すように心がけましょう。
また、寝返りが打ちやすい枕にすることも大事。枕の中身を出し入れして調整できるものにしたり、低めの枕にタオルを重ねて高さを調整していく方法もあります。また、世界的に整形外科的枕(Orthopedic Pillow)として知られている枕もあるので、いくつか試して、自分に合った高さ、クッション性、形の枕を見つけることが肝心です」
【教えていただいた方】
「整形外科 スポーツ・栄養クリニック」(福岡、東京・代官山)理事長。日本で初めて医療にピラティスを取り入れ、独自の「カラダ取説」プログラムの普及に尽力
イラスト/かくたりかこ 構成・文/山村浩子