免疫力アップに貢献する「オステオポンチン」
筋力や生殖力、記憶力などを若く保つ「オステオカルシン」
ホルモンというと、内臓から分泌されているものと思いがちですが、実は骨からも分泌され、ヒトの若さや健康にかかわっていることがわかってきました。そして骨から分泌される代表的なホルモンが「オステオポンチン」「オステオカルシン」です。どんなホルモンなのか、工藤先生に伺いました。
「骨には、古くなった骨を壊す破骨細胞と、新しい骨をつくる骨芽細胞があります。そして破骨細胞が古い骨を壊す“骨吸収”と、骨芽細胞が新しい骨をつくる“骨形成”を繰り返すことで骨は新しく生まれ変わっています。そして、オステオポンチンとオステオカルシンは、どちらも骨芽細胞から分泌されます。
まずオステオポンチンは、骨髄で血液をつくり出す造血細胞の機能を若く保つ働きや、免疫細胞の量をコントロールする働きがあり、全身の免疫力アップに貢献しています。オステオポンチンは、母乳に最も多く含まれる成分でもあり、赤ちゃんの免疫に働きかけ、感染症やウイルスから守る役割を果たしています。
一方、オステオカルシンは血液を通じて脳や生殖器、筋肉、膵臓(すいぞう)などに届けられ、筋力や生殖力、記憶力などを若く保つ作用があることから、“若返りホルモン”と呼ばれています。
認知・記憶機能の改善、心臓・血管の健康維持、血糖値の上昇抑制、肝機能の向上、筋肉の増強、脂肪の蓄積抑制、生殖能力の向上、栄養素吸収の促進と多くの働きがあります。ですから、このふたつのホルモンがしっかり分泌されていると、病気にかかりにくくなり、若々しさも維持できるのです。
ただし、オステオポンチンについては、加齢や内臓脂肪の増加などによって免疫細胞から大量に放出されると、一転して老化や慢性疾患が進むという研究報告もあるので、適度に分泌されていることが大切。未だ研究途中なのですが、今後解明されていくことで、若さを保つ有益な方法が見つかることが期待されます」
<オステオポンチンの働き>
・骨を形成する
・造血細胞の機能を保つ
・免疫に働きかけ、ウイルスや感染症を防ぐ
・傷を治すために免疫を活性化する
<オステオカルシンの働き>
・骨の強度を増加させる
・認知・記憶機能の改善
・心臓・血管の健康維持
・血糖値の上昇を抑える
・肝機能を高める
・筋肉を増やす
・脂肪の蓄積を抑える
・生殖能力を高める
・栄養素の吸収を促進
骨量が減る更年期以降は、オステオポンチンもオステオカルシンも減少しやすい
残念なことに、年齢を重ねるとこのふたつのホルモンは減っていってしまうとか。
「女性ホルモンのエストロゲンには、骨芽細胞の働きを助けて破骨細胞の活動を抑える働きがあります。でも、更年期になるとエストロゲンの分泌量は減少し、閉経後はさらに激減するので、骨芽細胞の骨形成のスピードより破骨細胞による骨吸収のスピードが上回り、骨がもろくなっていきます。閉経後に骨粗しょう症になりやすくなるのはこのためです。骨量が少なくなると骨細胞の働きが停滞し、オステオポンチンやオステオカルシンの量も減ってしまいます。その結果、免疫力が落ちて病気になりやすくなったり、若々しさが保てず老化が進んでしまうのです」
ふたつの骨ホルモンの減少を防ぐためには“骨活”を習慣に
では、このふたつの骨ホルモンを減らさないためにはどうしたらよいのでしょうか。
「“骨活”をするのがおすすめです。骨は重力刺激を加えると育つので、“かかと落とし”やジャンプのような運動を習慣にしましょう。かかと落としは、両足のかかとを上げて全身で大きく伸びをしたら、一気にかかとをどすんと落とすだけです。1日30回を目安に毎日行いましょう。膝に痛みなどがある人は、椅子に座って行うのがおすすめです。
また、骨の構成成分であるカルシウムやタンパク質、カルシウムの吸収を助けるビタミンD、カルシウムの形成を促進するビタミンKなど骨に必要な栄養をとることも欠かせません。カルシウムは乳製品や小魚、ひじき、木綿豆腐、小松菜などに、ビタミンDは干ししいたけ、きくらげ、鮭やサンマなどの魚、ウナギの蒲焼き、しらす干しなどに多く含まれ、ビタミンKは納豆、ほうれん草、小松菜、モロヘイヤなどに豊富です。
ただ、閉経後はエストロゲンの枯渇によって、どうしても骨量が減少してしまうので、これを防ぐため、HRT(ホルモン補充療法)を検討するのもよいと思います」
骨活を習慣にして、ふたつのホルモンの減少を抑え、若々しさの維持と免疫機能の向上を目指しましょう。
【教えていただいた方】
写真・図版/Shutterstock 取材・文/和田美穂