Q. 婦人科でのメンタル不調にはどんな治療がありますか?
A. 投薬治療と心理療法を行います
「心の不調は女性ホルモンに揺さぶられて起こる一時的な情動のことが多いのですが、中には実際にうつ病の方もいらっしゃいます。
婦人科に来院した患者さんのうち、最終的に女性ホルモンの減少による更年期症状だった人は約26%、うつ病や気分障害が27.6%、不安症が12.3%というデータがあります。
うつ病も軽度な場合は婦人科で対応するところもあります。更年期の抑うつである可能性が高い場合はHRT(ホルモン補充療)や漢方薬が第一選択肢ですが、軽度なうつ病には心理療法でカウンセリングや行動療法などをベースに、必要に応じて向精神薬が処方されることも。
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などが使われます。これはHRT(ホルモン補充療)が使えない更年期の抑うつにも有効です。しかしながら重度の場合は、婦人科よりも専門である精神科や心療内科を受診したほうがいいので、紹介するのが一般的です」
メンタル不調で婦人科で行われる治療
●HRT(ホルモン補充療)
減少した女性ホルモンを補充することで、更年期のさまざまな症状を緩和する療法。メンタル不調にも効果的
●漢方薬
東洋独特の「気・血・水」から原因を探ります。一人一人の体質を見極めて決めるので、同じ症状で薬が異なることも
●向精神薬
メンタル分野の薬の総称で、抗うつ薬のように病気そのものに効くものと、睡眠薬のように症状を緩和するものがあります
●心理療法
カウンセリング、リラクセーション法のひとつである自律訓練法、思考の歪みに働きかける行動療法、ストレス対処法のマインドフルネスなど
婦人科では投薬療法が主流になり、おもにHRT(ホルモン補充療)と漢方薬が2大療法。しかしうつ症状が強い場合は、向精神薬や心理療法などを実践するところもあります
福島県立医科大学 ふくしま子ども・女性医療支援センター 特任教授。日本産科婦人科学会・日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医・指導医。専門は更年期医療学、女性心身医学、女性ヘルスケア。相談やカウンセリングを中心としたケアサポートとともに、最新のテクノロジーや視点を取り入れて、更年期を取り巻く環境や文化を積極的にアップデート。
構成・原文/山村浩子