本来、大切にしたいのは卵巣機能を保つこと
「治療について、特に丁寧に説明するのは40代。更年期に入っているものの閉経まで時間がある場合です。対症療法でもまだ症状がつらい。偽閉経療法でも小さくならない。筋腫だけ取るか子宮ごと取るか…。筋腫は再発するのですべて摘出できても後に再手術になる可能性も話すと、皆さん迷います。
そんなときに言うのは、女性ホルモンを出すのは卵巣なので、大事にしたいのはむしろ卵巣であること。近年は、昔に比べて子宮を温存する傾向にありますが、更年期の症状が出て、ホルモン補充療法(HRT)をしたくなったとき、エストロゲンを補充すればまた筋腫を育ててしまうことになり、しかも子宮体がんのリスクが高まってしまうことも話します。そのうえで、子宮を取るか残すかをじっくりと考えてほしいのです」
子宮を取るってどういうこと?
全摘する際、卵巣だけ残し、一般的には子宮体部と頸部を切り取ります。緊急手術などで子宮頸部(子宮の入り口)を残した場合、子宮頸がんのリスクは残ります。
●普通は子宮頸部まで取る
子宮は丸ごとなくなり、腟の最上部を縫い閉じます。性交には影響がないのが普通
●稀に子宮頸部を残すことも…
子宮頸部まで残すと、子宮頸がんのリスクがあるので、がん検診が必須になります
EPISODE
どうする子宮全摘出・私の場合
●異物を持っているより全摘してすっきり!
多発性の子宮筋腫で、数えきれないコブだらけ。子宮がぶどうみたいになっているとのこと。想像しただけで気持ち悪くなり、自分から全摘を希望しました。お腹も気分も爽快です。
●臓器がなくなるなんて不自然すぎ⁉
「体の中で取ってもよい臓器なんてない」と言われて育った私は、子宮摘出にも反対でした。ただ、筋腫に苦しめられていた姉が全摘して、生活が変わったのを見て、考え直しています。
●更年期の症状が始まっての決断
40代前半なのに汗やホットフラッシュ。筋腫の症状がつらかったのに更年期症状まで。医師からHRTの話を聞いて急に光が見え、子宮全摘後にHRTをスタート。今は元気百倍です。
●パッチを貼るだけ! 驚きのHRT
筋腫で子宮を摘出。卵巣があるからまだ大丈夫と言われていたのにさまざまな更年期症状が! そこでHRTを受けてみると、あっという間に改善。2日に1回お腹にパッチを貼るだけです。
●腸が戻っている! 生きている実感
腹腔鏡で子宮全摘したとき、翌日か翌々日から、お腹の中がグルグルする違和感。医師に聞くと、それは腸が元の位置に戻ろうとしている証しとのこと。生きている実感が湧きました。
【教えていただいた方】
日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療指導医。日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医。女性医療や女性ヘルスケア領域の確立に尽力
イラスト/内藤しなこ 構成・原文/蓮見則子