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更年期でイライラする人のライフスタイルとは? 鍼灸師が改善したリアル実例を紹介!

更年期によるイライラは「女性ホルモンの低下によって頭部や上半身に熱が上り、体が興奮と緊張にかたよってしまうことから始まります」と、鍼灸師の森田遼介さん。心にも力が入るうえ、筋肉や血管の緊張からも不調を招いてしまいがちなのだそう。森田さんが実際に改善したOurAge世代のリアルストーリーから、イライラの源を探ります。

「自律神経は、心の状態とも関係します」と、森田さん。鍼灸師として活動する中で、更年期に差しかかり自分のイライラが苦しい、というOurAge世代の患者の声を聞くことは多いと言います。まずは森田さんの元に来た、二人の女性のリアルなケースから紐解いていただきましょう。

 

【CASE1】
頭部の汗、首・肩こりからイライラ発症。薄毛の悩みも!

 

一人目は、海外で仕事をバリバリこなしているMさん(50代前半)。仕事先での人間関係のトラブルをきっかけに、徐々に暑がりになった実感があり、頭部から汗が吹き出るようになったそう。

海外でバリバリ仕事をこなすMさん

 

「パソコン業務が中心で、首・肩こりが慢性的にあったMさん。また、薄毛が目立つようになってきたことから、数カ月に一度のペースで日本に戻り、私の鍼灸マッサージを受けています。診察をしてみると、足の冷えが非常に強くあったのですが、薄毛や暑さなど、上半身の不調に気を取られていたため、下半身の冷えの自覚はなかったそうです」

 

東洋医学では、熱と一緒に気血が頭へ上り、停滞するとイライラしやすくなる、と考えます。「怒りが湧くことを、“頭に血が上る”ともいいますね。イライラしているときは交感神経が優位になっているので、血管が収縮し、手足末端は冷えています。怒っているとき、人の手足は冷たくなる、ということは、ちょっと気にしてみてください」

 

イライラしやすい人は、頭皮の血流も停滞しやすくなることで、毛髪に栄養が行き届かなくなり、Mさんのように薄毛の原因になる場合も。「イライラしやすく緊張が抜けない人には、10本の指を使って頭皮をスライドするように、時々マッサージをすることもおすすめしています」

 

慢性的な首・肩こりもまた、交感神経優位の状態を助長させてしまうそう。東洋医学の観点から見ると、首の筋肉の硬さは胸や背中に関係し、背中の硬さは腰や足と関係が深いので、全身をみていく必要があるのだとか。

 

「Mさんの場合は食欲のなさや睡眠不足もあったことから内臓のケアもしつつ、ストレスを抱え込まない環境や考え方、足首を冷やさない工夫や食事の提案、休肝日をつくる指導で、不調は徐々に改善していきました。現在は住んでいる地域でも鍼灸院を見つけ、帰国したときは私の鍼灸を受けて、改善に向かっています」

【CASE2】
オーバーワークの自覚がない人は要注意

 

二人目は、4人の子どもを持つOさん(40代前半)。

 

「週6で夜遅い時間までダンス教室に通っている三女と四女のために送迎に追われるばかりか、2歳の孫の世話も手伝いつつ、自営業を営む夫のサポートもしているという、とにかく忙しい日々を過ごし、イライラも増している状態。そんなOさんはある日突然、高熱が1カ月続いて入院をしてしまい、退院後に鍼灸の依頼がありました」

 

4人の子どもの送り迎えが忙しいOさん

病院でさまざまな検査をしても原因がわからず、とりあえず退院をしたものの、倒れる前兆としては手首や膝の関節痛があったそう。森田さんの鍼灸を通じて、「夢を見ることが多く睡眠が浅い」「皮膚に赤い点々が、さまざまな部位にある」などがわかり、どれも熱を持つ不調で体がオーバーヒートを起こし、慢性疲労症候群に更年期が重なったのでは、という結論に。

 

「この方は“趣味が育児です”と言うくらいに、一生懸命お子さんたちをサポートしていました。体を触ると、どこも筋肉が硬く緊張しているにもかかわらず、疲労感の自覚はあまりないようで驚きました。人の数倍は動いていても、ご本人にとってはその実感はなく、普通だと思っていたそうです」

 

疲れやストレスが徐々に蓄積していくと、自覚できなくなることがあり、「そこが人間の体の怖いところです」と森田さん。

 

「例えば、一時的に肩こりの自覚があったとしても、放っておくと感じなくなる現象が起きます。これを順応といいますが、治ったと思ってまた疲労やストレスをためると血流が悪くなり、内臓の働きにも不調が起こり始めて、自己免疫力も低下していきます」

 

特に、頭痛や動悸は危険なサインで、放っておくとある日突然、脳梗塞や心筋梗塞にまで発展してしまう可能性もあるのだとか。

 

「体力がある人ほど我慢もきく分、大きな病気になりやすく、治療師が特に心配するタイプです。Oさんもそれに該当していましたが、忙しさをセーブすることは難しかったことから私が夜に往診し、週2回から治療を開始。セルフケアとしては、日中は少しの時間でも横になって休む(うたた寝ではなく)、スマホを見る時間を極力減らすことから始めました。横になることで内臓は休むことができ、スマホは緊張や興奮を高ぶらせる交感神経を刺激するため、就寝1時間前から制限をかけるよう提案しました」

 

1年間の治療を続けた結果、今では大きな不調もなく、状態は改善へ。現在は3週に一度のペースの治療で、忙しい生活の中でもメンテナンスができているそうです。

 

「気分の問題」と諦める前に

 

更年期のイライラについて森田さんは、「病名だけにとらわれず、不調と体質、生活スタイルなどから改善法を組み立てていく鍼灸も、ぜひ活用してほしい」とのこと。

 

「東洋医学のよさは、不調が改善していくことで治療の間隔をあけていき、再び同じ不調が出ないよう、他の病気の発症リスクを軽減すること。つまり、自己免疫力を向上して、維持する予防ができる、ということです。体に特別な負荷をかけていなければ、月に1回程度で、自分では気づきにくい筋肉の硬さなどを治療師が見つけ、改善していきます。継続することで生涯の医療費コストを大幅に軽減できることにつながりますし、生活の質をよいレベルで保ち、健康寿命を延ばせることにまでつながっていくと思っています」

 

人生100年時代といわれる現代は、東洋医学の領域でもいいかかりつけ医を見つけて、定期的なお付き合いすることが、大切なのかもしれません。

 

 

【教えてくれたのは】

森田遼介
森田遼介さん
TC鍼灸マッサージ院院長。はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師(国家資格)
公式サイトを見る
Instagram

鍼灸院などに勤めながら、勤務後や休日に個人で訪問治療を行い、予約1年待ちが続いたタイミングで2023年2月に独立、4カ月で予約満杯となる。現在は埼玉・東京エリアの訪問自費治療を中心に活動。人生100年時代をできるだけQOL(生活の質)を落とさない目的の治療が需要として高い。*現在、新規予約は紹介制のみ。近著に「自律神経にいいこと大全100

 

 

イラスト/きくちりえ(Softdesign) 取材・文/井尾淳子

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