日々の小さな積み重ねが、健やかな心と体をつくる。
切実ではなく、楽しみながら続けたい自分のための小さな約束。少しずつ変わっていく体に「ありがとう」と言いたくなるYOJO(養生)ライフとは。
今回のYOJOライフは墨の濃淡で人物、植物、ファッションなどを描く墨画(SUMIGA)が人気のイラストレーター、緒方 環さん。2回にわけてご紹介します。
緒方 環さん Tamaki Ogata
profile
1968年生まれ。多摩美術大学テキスタイルデザイン科卒業後、渡仏。2年間のパリ滞在を経てイラストレーターに。墨の濃淡で人物、植物、ファッションなどを描く墨画(SUMIGA)が人気。国内外のアパレル、コスメブランドへのイラスト提供や書籍の装画、レストランの壁画制作なども行う。2011年より器シリーズ「hakuji」をデザイン&プロデュース。2021年11月26日〜12月25日 東京ミッドタウン六本木・ガレリア3F「STYLE MEETS PEOPLE」にてSUMIGA展を開催。
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毎朝のルーティンと一日の中のオン・オフは、25年間続いているおまじないのようなもの
墨の濃淡で唯一無二の世界を描く緒方環さん。子どもの頃から強かった好きな物へのこだわりが20代のパリ暮らしで美意識としてさらに磨かれ、自分の理想に妥協は一切なし。服や家具なども、以前は気に入るデザインでなければ購入しなかったといいます。
「今思えば頑固のひと言に尽きますが、自分の中の変化のきっかけは東日本大震災でした。大事にしていたオブジェが次々と棚から落ちて壊れていくさまを見て、物に強くこだわっていた気持ちがすーっと冷めるのを感じて。
その後、住み慣れた部屋からの引っ越しや、19年間ともに暮らした愛犬の死を経験して、そこまでストイックにならなくてもいいんじゃないかと、徐々に思うようになったんです」
そこから少しずつ自分を“緩める”ことができるようになったそう。
「今は更年期の年代。50歳手前で閉経しましたが、もともと生理が煩わしかったので、やっと解放された! という喜びのほうが大きかったです。
ただ体調面では、小学生の頃から肩こりや頭痛がひどく鍼(はり)治療を受けていたほどで、昔も今も不調のデパートでつねに低空飛行。冷え症だったのが暑がりになったり、疲れやすくなったり、更年期や加齢で起きやすい不調も感じますね」
昔から緊張しがちで気持ちが張り詰めやすいという緒方さん。今の体調とメンタルの折り合いをつけるために意識して行うのが、朝のルーティンと一日の中でのオン・オフの切り替え。
「朝は頭と体のウォーミングアップのために。仕事が終わったら切り替えの儀式を。心身のバランスが整いますし、25年以上仕事を続けてこられた重要な決まりごとだと思っています」
次回は、緒方 環さんの4つのYOJOをご紹介します。
撮影/フルフォード海 取材・原文/向井真樹