樫出恒代(かしで ひさよ)
漢方薬剤師・漢方ライフクリエーター。漢方カウンセリングルームKaon代表。Kaon漢方アカデミー代表。新潟薬科大学薬学部卒業後、一人ひとりのこころとからだにていねいに向き合う漢方カウンセリングを提唱。連載「女性のための漢方救急箱」の味わいあるイラストは、本人によるもの。美容家・吉川千明氏との共著に「内側からキレイを引き出す 美肌漢方塾」(小学館)
<悩み>
「40年来の便秘症で、腸活に興味があるのでいろいろと試しましたが、これというものに出会うことができません。食べものでは、ヨーグルト各種・納豆・キムチ・ザワークラウト・乳酸菌サプリ・もずく酢・大麦など。よく“これを食べ始めたら、スッキリ!”というような情報も見かけますが、本当にどうすればいいかを知りたいです」(50歳・会社員)
<回答>
体を温め、巡らせる。シンプルなことが、便秘解消の大きなカギになります。
食べものだけでは解決しないことも
便秘に効くといわれる食品やサプリをあれこれ試しても効果がない…。
その原因は、腸の動きの悪さ(腸の蠕動運動)が弱っていることにあるかもしれません。
漢方では、腸の動きが悪い時、それは血の巡り(血流)や気の巡り(エネルギーの流れ)が滞っているサインと考えます。特に更年期以降は体全体の巡りが悪くなりやすく、冷えやエネルギー不足が起きがち。すると、いくら体にいいものを食べていても、腸がきちんと動いてくれない、ということがあるのです。
例えば、相談者さんも食べてみたというヨーグルト。
たしかに乳酸菌は腸によいと言われますが、漢方的に見ると乳製品は、「消化にエネルギーを使う」「体を冷やす」といった側面もあり、ヨーグルトを食べるとお腹が張ってしまう、という人も。その点、納豆やキムチは発酵食品として優秀で、漢方的にも腸の動きを助けるいい食材。
ですが、それらの食品を食べても便秘が改善しない場合は、そもそも体がうまく吸収・排出できる状態に整っていない可能性が考えられます。
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キーワードは「温める」と「巡らせる」
便秘に悩んだとき、ぜひ一度意識してほしいのが、体の冷えです。
お腹を触ってみると冷たい、太ももがひんやりしているという人は、腸が冷えて、働きづらくなっているのかもしれません。そこで漢方的におすすめなのが、体を温めて、巡りをよくする成分をとること。
例えば…
陳皮(ちんぴ)…みかんの皮を干したもので、気をめぐらせ、腸の働きをサポート
生姜…体を芯から温めて、余分な水分を排出
シナモンやなつめ、朝鮮人参…冷えを和らげつつ、エネルギーを補う
手前味噌で恐縮ですが、私がオリジナルで作っている「KAON茶」という漢方ブレンドティーには、これらの成分がバランスよくブレンドされているので、 体質改善の手助けにおすすめです。
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また、市販の便秘薬には「センナ」「大黄」など、刺激性の生薬成分が入っていることがあります。
これらは一時的に便を出す作用はあるのですが、実は体を冷やしやすく、長期的には便秘を悪化させてしまうことも。もし相談者さんが服用しているのであれば、いったん中止して、体を温めながら腸を整える効果のある漢方薬を検討してください。
例えば、以下のようなものです。
・潤腸湯(じゅんちょうとう)…潤いを与えながら穏やかに出す
・桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)…冷えをとり、腸の動きを助ける
・大建中湯(たいけんちゅうとう)…血流を良くしておなかを温めることで、胃腸の働きを整える
ただし、どの漢方薬が合うかは体質次第。服用には、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
記事が続きます自分の“今”の状態を知る
「ヨーグルトがいい」「このサプリが効く」など、あふれる健康情報の中で、私たちはつい、正解を外に探してしまいがちです。
でも本当に大切なのは、自分の体の声を聞くこと。お腹が冷たくないか? 朝は食欲がないか? 夜は、寝る直前まで食べていないか? 水を飲みすぎていないか?
まずは、それらの生活リズムがどうなっているのか、振り返ってみましょう。なぜなら、便秘と深くかかわっているのが、この生活リズムだからです。
・朝ごはんは食べる(味噌汁や温かいご飯がおすすめ)
・夜遅くまで食べたり飲んだりしない。なるべく12時間は、空腹時間をつくる
・寝起きや食後に腸へ刺激を与える(温かい飲み物、軽いストレッチも◎)
健康情報や食べ物に頼る前に、まずはこれらの生活リズム、習慣を意識してください。特に「朝、お腹が空かない」という人は、夜の食生活が関係していることがほとんどです。夜遅くに食べていると、朝、空腹感が起こらないのは当然ですよね。結果的に腸が刺激されず、便が出ない、という悪循環になってしまいます。まずは夜20時までに食事を終えることを目標に、基本を見直してください。
情報よりも、自分の感覚を信じる
そもそも、体質も生活も、みんな違います。キムチや乳酸菌サプリなど、誰かにとっては救世主となったものも、相談者さんには合っていなかったのではないでしょうか? だからこそ、いったん情報のリサーチからは立ち止まって、「私は暑がり? 寒がり?」「三食ちゃんと食べている?」「ダラダラ間食していない?」など、自分の体としっかりと対話することから始めてみてください。
そして腸も、一日中働きっぱなしでは疲れてしまいます。 しっかり食べて、しっかり休ませる。そのリズムをつくるだけで、便通がスムーズになることもあるのです。便秘もまた、体からの大切なサインですから、あせらず、試行錯誤しながら、自分に合った本来のリズムを見つけていきましょう。
取材・文/井尾淳子
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