川に囲まれ、橋がそこここに架かる大阪・堂島に2024年8月オープンしたアーバンラグジュアリーホテル、フォーシーズンズホテル大阪。ビルの1~2階と28~37階部分がホテルフロアという構成です。
1階のロビーはモダンでかつ、緑が見えて寛げる雰囲気。
インテリアは、キュリオシティ、SIMPLICITY、デザインスタジオ・スピンという3つのデザイン会社が手掛けているので、フロアによって印象や雰囲気が違うのが特徴。
エレベーターの扉があくと、予想していなかった世界観に驚き、誘われるので、心躍ります。
他にも、ロビーや客室、廊下にもアート作品が点在、新進気鋭のクリエイターたちによる新しい大阪の表現はエネルギーに満ちていて、大阪パワーを思わせます。
ロビーからは高層エレベーターで上へ。
36階ワンフロアを使ったウェルネス&スパは、エントランスからアートが実に印象的!
そして、天空のプールは一面窓で朝昼夜と表情を変えのていくので、ずっと見ていたくなります。長さは16m。
ほんわか温かいハイドロマッサージ機能付きバイタリティープールに入って、大阪のビル群と川に架かるいくつもの橋を眺めているのも至福。
トリートメントルームも見晴らしよしです。
「ネセンス」「オモロヴィッツァ」「chi to sé true チトセトゥルー」とスパメニューのプロダクツも3種類ありどれもとてもいいのですが、特に注目したのは、チトセトゥルー。
このフェイシャルのチトセトゥルー、プロダクツを今年試して屈指の良さを感じたもの。豊富なミネラルが凝縮された海洋深層水や温泉水、発酵米ぬか、和漢成分などの有効成分が、とぅるとぅるのテクスチャーを作っています。これを使って指圧やニーディング(こねるようにもみほぐす)などをベースに独自の手技で顔全体の筋肉を解きほぐします。このコース、こちらでいちばんリーズナブルでホテルのスパとしても手が届くプライス。¥29,000(60分)
ジムは24時間使用可能。お風呂はゆったり、サウナもあります。そしてもうひとつこのように、貸切にできるプライベート浴室があったりします。
デラックスルームは、窓辺のソファが少し硬めなので、背筋を伸ばしてワーケーションもできるのは助かります。
窓際のテーブルにはウェルカムフルーツとマドレーヌが。1階のブーランジェリーのパンや焼き菓子は抜群に美味しいので、このおもてなしは魅力的です。
和モダンな畳の部屋がある、高層階の特別コンセプトフロアGENSUIは(玄水)はエレベーターホールからすでにほの暗く、陰翳礼讃の世界。海外のゲストに人気なのも納得です。
ここには宿泊者専用日本茶サロン「SABO」もあり、日本茶を淹れていただけます。
ここでチェックイン・アウトができたりも。朝はお弁当、夕方からは、ワインやウイスキーなどの提供もあります。
先のチトセトゥルーのコスメも飾ってあり、ここの和テイストにぴったりで、惹かれて買うゲストもいそうです。
そして2024年10月末、37階にオープンして話題になっているのが、「鮨 ラビス 大阪 ヤニック・アレノ」。
フランス国内に3つ星レストランを2軒手がけ、合計15のミシュランの星を持ち、料理界に名を馳せる巨匠ヤニック・アレノさん。彼がパリで2つ星を獲っている「L’Abysse」を、モナコのモンテカルロに続く世界で3店舗目として、ここフォーシーズンズホテル大阪にオープンさせたのです。
舞台美術家として著名なローランス・ボネル=アレノによる現代アートを象徴する内装は、夜だと夜景の中に浮かび上がる静寂の空間に浮遊するような気配を作り出しています。
アレノシェフと、30年を超えるキャリアの中で腕を磨いてきた料理長の安田 至さんの伝統的な鮨と和食の職人の技とで繰り出すは、フレンチと江戸前寿司の融合のコンテンポラリーな料理。
私もかなりの鮨好きでそこそこ食べてはいますが、このコース、前菜にも握りにもはっとさせられる新しい味わいがあり、それがワインにも日本酒にも合って、ちょっと驚きでした。
鮨好きで日本でよく鮨を食べているというアレノシェフ、他にも日本料理をかなり研究し尽くしているからこその鮨の再構築は、彼にしかできない料理でした。
アレノシェフとヤニック・アレノグループシェフの廻神シェフ。たくさんのお店をおふたりで築いてきています。
おまかせコースは、「エモーション」と名付けられた前菜4種、握り、デザート4種の3部構成。
ガリがりんごでできていたり、酢の役目をピクルスが担っていたり、エシャレットや揚げしょうががポイントに使われていたり、その計算され尽くした隠し味の素晴らしい感性は、鮨好きにこそ味わっていただきたいという完成度でした。
「トロマヨです」とアレノシェフの片腕の廻神シェフにいたずらっぽく出されたのは、大トロにゆで卵とねっとりとしたプルニエのキャビアが乗ったもの。
濃厚なのに、ゆで卵で作ったマヨパートにきれいな酸があり、生臭くなくまとまっていて、さすがの逸品。
牡蛎、麒麟菜、米のクリームは、鮨飯を半殺しにしたお米クリームに、軽く火入れをし、カットされた牡蛎と大葉ジュレにすだちをあしらい、カレー風味のあられを振っています。これも食べたことのない食感。
和でもあり、洋でもあるようで、牡蠣とクリーム、すだち、大葉がそれぞれ持つミネラル、酸、甘み、苦みが口の中でひとつになったとき、調和して新しい味わいが生まれていました。あられの食感とほのかなカレーのアクセントがまた効いています。緻密な計算。
お刺身は、ねっとりしてお酒が進む鰤の塩麹漬けと、しょうゆのほのかな香りと炭の香りに柚子がよぎる、中トロの炙り。ワイン好きでも刺身には、普段日本酒を合わせるのですが、これもまた、ワインにも日本酒にも合います。
どの日本酒もワインもペアリングはしっくり合っていますが、特にIWA5という、ドンペリニヨンの5代目醸造最高責任者を務めたリシャール・ジョフロワさんがワインの手法アッサンブラージュを用いて作り上げた日本酒は、ワインのようなニュアンスもあり、この料理の流れのどれにもぴたりと寄り添っていました。
握りもまた、というか握りこそ、新しい体験!
先の料理から、エシャレットや揚げしょうがなどを忍ばせるテクニックは、通奏低音のようにこちらにも、使われていました。
縞鯵。薄く切りつけて重ねる手法を光物にも用いています。
コシヒカリとササニシキのブレンドで作る酢飯の米粒がふわり立った握りはさすがの料理長の実力。
握りというより、魚料理的の一皿的なルックスの一品も。
ボタン海老の炭火焼き。この立派な牡丹海老はカウンターで炭で炙り、ミキュイに仕上げます。
ボタン海老とパリパリ海苔の炭火焼きは、先のボタン海老をくるりと巻いて同じく軽く炙った海苔で包んで手渡されます。ぷりっと歯が刺さる食感の後、濃厚な甘さがきて、ここにも生姜の香りが。
それは、みじん切りの生姜と炒った米をお酒で煮てソースにして塗っているから。巻物の変化球は料理として見事、酢飯に留まらないお米への自由な発想も、他にない凄さです。
最後は「大トロ」。これがまた唸る出来。 まずは2枚づけに驚き、そのなめらかで繊細でまるで上質な肉を思わせる握りに歯を当て嚙むと、内側に乗せていたエシャロットと揚げしょうがの香りが立ち上ります。まさにこれぞヤニック・アレノの仕事、といわんばかりの完成度。今まででいちばん新鮮な大トロの味わいでした。
デザートの前の「大地と海のコンソメスープ」は、牛脂、牛筋、しめじ、椎茸、乾燥椎茸、乾燥えのき、昆布、チキンコンソメなどをじっくり抽出した、深く滋味深いスープ。
デザートも、4品出ました。
イチゴの砂糖窯焼き、ウイキョウ
白味噌と麦のアイスクリーム、すだちのジュレ
紫蘇の天麩羅
海藻のパイ、ジャスミン・クリーム
白味噌と麦のアイスクリーム、すだちのジュレは、特にとても複雑。白味噌と麦は焦がし風味に仕立て、お皿の淵にも京都の白味噌を炙って焦がし香をつけたものが塗ってあります。かぶと生姜を合わせてコンフィチュールにしていたり、マッシュルームのキャラメルは、エキスを12時間かけて抽出していたり。
コーヒーも4時間かけて水出し。 こういうデザートを大切にするのも、日本の鮨店にはない発想。「抽出」をはじめ、随所にフランス料理の仕事が生きています。
面白いのは、ワインと日本酒と行ったり来たり、自由に合わせやすい料理だということ。
ちなみに最後の大トロには、エレガントで優しいローヌのシラーを合わせていました。エシャロットと生姜がソースの役目を果たし、ぶつからずしっくり合うのも、印象的でした。
海外で日本料理の調味料や素材を取り入れて料理をするのとは全く違ったレベルの、完全に新たな鮨料理を構築した、ヤニック・アレノシェフ。
昨今とても値上がりしている高級鮨店よりリーズナブルに、今までにない鮨の境地を味わえることは、間違いありません。
ちなみに朝食は、フォーシーズンズらしい充実度。特に、ここ作られているパンと焼き菓子はほんとうに美味しいので、つい食べてしまいます。
スペシャリテのクロワッサンベネディクトもこの迫力!
フィナンシェなどの焼き菓子が人気で、ビジターさんも買いに来るのも納得のクオリティ!
広東料理 江南春も天井が高く抜けのある空間で、いるだけで気持ちが上がります!
江南春とバーも、鮨 ラビス 大阪 ヤニック・アレノと同じ37階で絶景です。
バーには「道頓堀スライダー」など、ちょっとユニークな大阪らしい名前のカクテルなど味わいが予想できないものも多いので、トライするのも楽しい。
目の前に広がる夜景とともに、大人の雰囲気を楽しんでみるのも素敵です。