【この回の質問に答えてくださった方】
入社後7年、洗剤用酵素の研究を担当。その後、ヘアケア研究所にて、黒髪メラニンのもとを使った白髪染めの商品開発(リライズブランド)に10年携わる白髪ケアのエキスパート。 〔撮影:山田英博〕
ケア成分とともに色を少しずつ入れる、それがカラートリートメント
セトッチ:白髪染めの頻度が上がってくると、美容室に行く時間を確保して予約を入れるのが、結構大変だったりしますね。回数が増えてくると、金額的にもなかなか厳しいし…。
かと言って、自宅で自分でヘアカラーをするのも、意外と気合がいるというか、気力&体力が十分なときでないとおっくうになってしまいます。仕事で疲れた日は、「今日はやめて明日でいっか」と先延ばしにしてしまったり…。
そんなとき、ふと広告で見て気になったのが、カラートリートメント。
お風呂でシャンプーをしたあとに、トリートメントしながら白髪が染まるなんて最高! と思いました。
シャンプーやリンス、トリートメントなどの幅広いヘアケアアイテムを手がけていらっしゃる花王さん、いかがでしょうか?
花王 島津:カラートリートメントは染めるというよりは、少しずつ髪に色を定着させるといった感覚。
髪を傷めずに白髪ケアをしたい方に好まれていますよ。
〔上の写真:女性誌と共同開発して生まれたという花王「ブローネ カラートリートメント」。サロンで染めた髪にも合わせられる4色展開で、OurAge世代におすすめなのがこの3つ。左からカカオブラウン、オリーブアッシュ、サクラピンク。パールプロテインエキスやシルクエッセンスといった補修成分のほか、保湿成分として海藻エキスを配合。また香りもアールグレイを採用するなど、女性が心地よく使えるようこまやかな工夫が!〕
セトッチ: カラー「トリートメント」というくらいだから、いわゆる、髪の傷みをケアするトリートメントに、染料が混ぜてあるということですか?
花王 島津:名前は「トリートメント」ですし、髪をケアする成分が多く入っているのは確かですが、薬機法上では、「染毛料」という化粧品に分類される、ヘアマニキュアと同じ分類になります。
セトッチ:なんと! いわゆる一般的なトリートメントとはちょっと違って、基本的には「髪を染めるもの」という製品になるんですね。
そして、ヘアマニキュアと同じ分類とは意外です。ヘアケア製品だと思っていたので…。
花王 島津:白髪を染める「ヘアカラー」は、医薬部外品に分類される「染毛剤」で、キューティクルを膨潤させてその隙間を広げ、染料を髪の内部に浸透させて色をつけます。
一方、カラートリートメントは、化粧品に分類される「染毛料」で、毛髪の表層部に色素を徐々に浸透させることで髪を染めていくという製品です。
同じく「染毛料」であるヘアマニキュアとの違いは、ヘアマニキュアが1回の使用で染まるように作られているのに対して、カラートリートメントやカラーリンスは、連続して使用することで徐々に染まっていくように設計されています。
セトッチ:カラートリートメントなら髪が傷まない、逆にケアできるというイメージは正しいですか?
花王 島津:化学反応を伴わない染め方なので、髪が傷む心配はありません。
また、髪に栄養を与えてハリ・コシを出すとか、傷みをコーティングしてパサつきを抑えるなどの効果もあります。
セトッチ:それは、カラー頻度が上がってくるこの年代にはうれしいです! ほかにもメリットはありますか?
花王 島津:そうですね。あとは、入浴中にトリートメント感覚で使用できることに加え、乾いた髪で白髪が気になる部分に塗ることもできるので手軽ですし、周囲を汚す心配が少ないというのもメリットだと思います。
また、アレルギーなどにより、一般的なヘアカラー(ジアミン系)が使えない方でも使用できるというのもよい点です。
セトッチ:なんだかよいことだらけ…ですが、逆にデメリットはありますか?
花王 島津:デメリットとしては、脱色しないので、染める前の髪色より明るくすることはできないということですね。
また、ヘアカラーの染まりとは異なり、白髪を目立たなくするといった仕上がりなので、しっかり黒髪のように染めたいという方には物足りないかもしれません。白髪が完全に隠れなくても、ぱっと見わからなければよいという方向きですね。
まだそれほど白髪が多くなく、目立たなくできればいいという方、手軽に白髪を目立たなくしたいという方に人気です。
あとは、ヘアカラーとヘアカラーの間のつなぎとして、白髪をなじませるといった感覚で使用する方も多いようです。
「髪色メラニンのもと」という新しい発想
セトッチ:次のヘアカラーまでのつなぎという使い方は参考になります。
傷むのを避けるという意味でも、カラートリートメントはすごく魅力的だなと思います。
実は私はコロナ禍の中、美容室へ行く頻度を抑えるために、ホームカラーに挑戦していたのですが、そのうちの1年半くらいは花王さんの「リライズ」を愛用していました。
リライズの「100%天然由来の着色成分」「黒髪メラニンのもと」というワードにビビッと反応した感じ。「これであれば傷まないのでは?」と思って試したくなりました。
〔上の写真:〝生え際まで染められる〟〝5分おいて流すだけだから、とにかく使いやすい〟とOurAge編集部員やライターたちにも愛用者の多い花王「ブローネ リライズ 白髪用髪色サーバー」。好みの仕上げに応じた2タイプがあり、写真左が毛先まですんなりまとまる「まとまり仕上げ」、右が根元からふんわり仕上げたい人向けの「ふんわり仕上げ」〕
実際、それまで使用していたヘアカラーで染めるよりも傷みが少なく、高級トリートメントを使ったあとのような仕上がりが気に入っていました。
花王 島津:ありがとうございます。そうなんです。「リライズ」は年齢を重ねた髪がどう変化していくのか、長年研究を続けてきた結果生まれました。
「白髪」や「ハリ・コシの低下」などの髪質の変化に対して、髪を傷めずにいつでも髪色のケアができる商品として開発されましたが、特に、「白髪にはメラニンがない」という事実に着目しました。
セトッチ:なるほど、「メラニンがないのならメラニンのもとを供給してあげればいい」ということですね。
「黒髪メラニンのもと」という言葉は、リライズを知った際にはじめて聞いたのですが、そもそもどういうものなのですか?
花王 島津:「黒髪メラニンのもと」は、植物から成分を抽出し、麹の発酵技術を応用した製法で作り出した100%天然由来の成分。
酒造メーカーは製造過程でできる黒い麹に悩まされていましたが、実はその原因は麹のチロシナーゼが作るメラニンでした。
このことが開発のヒントになり、100%天然由来の「黒髪メラニンのもと」が誕生しました。
セトッチ:「黒髪メラニンのもと」が、少しずつ髪の毛の色になっていくということですか?
花王 島津:「黒髪メラニンのもと」は髪表面のキューティクル層に集まって定着。
リライズを使用するたびに、キューティクルに定着していって、徐々に自然な黒髪色になります。
セトッチ:お風呂で使えるというのも簡単でよかったです。
ヘアカラーで染めてもすぐに根元から白髪が出てきてしまいますが、リライズを2、3日使用した後に、週1回くらいで使っていると、根元から白髪が伸びてくるのが気にならなくなってきますね。傷まないというのもうれしいです。
花王 島津:リライズを長年愛用されている「リライズの達人」の方々は、リライズを使用する曜日を決め、ご自身の生活の中に組み込んでいらっしゃる方もいるようです。
セトッチ:なるほど。何をするにしても、習慣化することが長続きの秘訣とよく言いますよね。
花王 島津:そして、自分の髪の状態に合わせて臨機応変に使いこなしていらっしゃいますね。
例えば、週に1回、根元を中心に白髪が気になる箇所に使用するというのをルーティンにしているけれど、たまにちょっと今回は染まり方が弱いなと思ったら、2日続けてやってみるとか。
ご自身で微調整されるようです。
それから、リライズは使用したあとにヘアカラーをするのもしやすいです。
というのは、リライズの着色成分である「黒髪メラニンのもと」は、ヘアカラーで脱色することができる成分だからです。
次のヘアカラーまでに、生え際など気になる部分だけにリライズを使用して、白髪を目立たなくしても、後日、ヘアカラーをすれば、部分的に使用したリライズの色が残ることなく、ヘアカラーの色に染め直すことが可能です。
セトッチ:それもありがたいですね!
なんだか聞けば聞くほど、カラートリートメントは私たち白髪に悩む女子の心強い味方なんだということがよくわかります。
私も白髪ケアの達人になれるよう頑張ります!
取材・文/瀬戸由美子