「とことん息を吐く」呼吸ができれば、自律神経が整って眠れる体に!
40歳以降の女性の約半数が「不眠症」ともいわれています。
不眠症とは、
睡眠障害のうちでも寝つきが悪い(入眠障害)
熟睡できない(深く寝た気がしない)
夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)
早く目が覚めて眠れなくなる(早朝覚醒)
…など、眠りたいのにきちんと眠れないこと。
それが心身の不調につながり、ほかの更年期症状にも拍車をかけてしまいます。
「眠りの問題は、自律神経がトラブっていることがほとんど。自律神経は自動的に働いてくれている神経なので、自分でコントロールすることはできないと思われがちです。でも、実は自律神経を直接的に調整できる唯一の方法が呼吸なんですよ」と教えてくれるのは、国内では珍しい呼吸の専門家、呼吸コンサルタントの大貫崇さん。
自律神経は全身のあらゆる機能を司っている神経で、交感神経と副交感神経というまったく逆の働きをする神経からなります。
健康な人は日中活動しているときは交感神経が活発になり、心身を休ませる夜になるとリラックスモードの副交感神経が自然と優位に働きます。
「不眠で悩む人は、眠りに入る前でも交感神経が優位なままになっていることが多いのです。ヒトは、
息を吸うと交感神経が優位に、
息を吐くと副交感神経が優位に、働きます。
つまり、吐く時間を吸う時間より長〜くすれば、副交感神経にスイッチが入り、眠りやすい状態になるはずです」
「また、呼吸と直接的にリンクしているものに血圧があります。年齢を重ねると高血圧が気になる人が多くなりますが、これらも呼吸で改善が期待できます。
呼吸の数が減ると心拍数が減ることは確かで、血圧も抑えられます。
人間本来あるべき呼吸は、“鼻呼吸”。鼻呼吸は体内に一酸化窒素を増やします。一酸化窒素は神経伝達や性機能にも関わっており、血管の拡張をしてくれる。血圧を下げることができるという見方もあるんです」
ベッドで羊の数を数えるくらいなら、呼吸の数を数えよう
では、どんな呼吸をしたら、よく眠れるようになりますか?
高血圧にもよい影響を与える呼吸とは?
「寝つきが悪い人は、布団に入ったら『きほんの呼吸(第2回参照)』をすること。これを毎日の『入眠の儀式』にしてしまうのが理想です。
眠れなくて羊の数を数えるくらいなら、代わりに1分間の呼吸数を数えてみてほしい!(第1回参照)
眠りの悩みを全面的に解消したい人は、この練習を1日1分でもよいのでやってみてください。いつどこでやってもOKです。座る、立つなどの姿勢でもよいので、継続しましょう」
大貫さんの「きほんの呼吸」は…
息を吐く時間を長くし、吐ききること。吸いすぎないこと。呼吸の数をとことん減らすこと。必ず鼻呼吸すること。
横隔膜をリラックスしてしなやかに動かすためのポイントです。
【吐いて】8〜9秒かけて、鼻から(すぼめた口を使ってもOK)ゆっくり息を吐き
【止めて】3秒息を止めて
【吸う】少なめに(短いほどいいのですが、目安は3秒程度)息を吸う
秒数は絶対ではなく、吐く:止める:吸う=3:1:1を目安に。
苦しくてたくさん吸ってしまう人は、自分のできる秒数から始めます。
例えば、3:1:1であれば、6秒2秒2秒でもかまいません。
これを頭に入れてSTEP1〜2を復習しましょう。椅子に座って行う方法も、基本的にはあお向けに寝て行うのと同じ要領です。
きほんの呼吸をやってみよう
きほんの呼吸 STEP1
胸とお腹が同期する「アンチパラドックス呼吸」
胸とお腹に手のひらを当て、両方の動きを感じます。
8〜9秒吐いて/3秒止めて/3秒吸う。
このとき、胸とお腹が同じように動いていれば横隔膜を正しく使って呼吸できています。胸だけが動く、お腹だけが動くなどはNGです。
きほんの呼吸 STEP2
肋骨を下げたまま呼吸する「肋骨内旋呼吸」
肋骨に両手のひらを当て、息を吐きながら肋骨を内側に下げていきます。
肋骨がポコッと開いている人はなかなか下げられないものですが、焦らず練習していると、そのうち必ず感覚がつかめます。
慣れたら、肋骨を下げたまま呼吸を。
「本当は、呼吸に加えて、日中は少しでも運動することが睡眠の悩みを改善する近道です。
自律神経は、一度上がったら次は下がる習性があります。
運動することは交感神経を優位にしてくれるので、夜になったら自然と副交感神経にスイッチし、眠りたくなりますよ」
■■まとめ■■■■■■■
【教えていただいた方】
1980年神奈川県生まれ。呼吸コンサルタント。アスレティックトレーナー。京都にある呼吸専門サロン「ぶりーずぷりーず」主宰。大阪大学大学院医学系研究科 健康スポーツ科学講座スポーツ医学教室 特任研究員。呼吸に関連した企業研究や商品開発など法人向け呼吸コンサルティング事業を展開し、アスリートから高齢者まで呼吸目線でのコンディショニングに従事。著書に『きほんの呼吸 横隔膜がきちんと動けば、ムダなく動ける体に変わる!』(東洋出版)など。
【呼吸についての悩みや質問、大募集】
この連載では、大貫さんへの質問を募集しています。
●レッスンの内容でよくわからなかったこと、うまくできなかったこと
●自分の呼吸についての悩みや困ったこと
●呼吸についての素朴な疑問
連載内容についての感想などもOKです。大貫さんにお答えいただく予定です。
こちらからお気軽にどうぞ!
撮影/露木聡子 取材・文/蓮見則子