「足の診療所」
5大トラブルの原因と治療
足に問題を抱える患者さんに専門的なケアを提供している「足のクリニック 表参道」を訪れる人に多い5大トラブル、外反母趾、強剛母趾、ハンマートゥ、足底筋膜炎、モートン神経腫。
ここでは、その原因や治し方について、桑原 靖 先生に詳しく説明していただきます。
まずひとつ目の今回は、「外反母趾」についてです。
原因は、ハイヒールではなく
足の骨格構造の歪み
「骨格構造の歪みが原因で足底を支えるアーチが崩れ、足元のバランスがとれていない人は極めて多く、世界の人口の7割が回内という状態、2割が回外だと言われています。つまり、整った足の骨格構造を持っている人は、わずか1割しかいないのです」
と桑原先生。
外反母趾は、親指の関節が外側に曲がった状態を指します。本来、親指は真っすぐ伸びているものですが、外反母趾になると人差し指のほうに曲がったり、付け根の骨が外に突き出たりしてしまうのです。
「外反母趾は足の構造の歪みがおもな原因であり、ハイヒールや先の細い靴を履いたからなるというわけではありません。事実、裸足で生活する民族にも、この疾患が見られます。とはいえ、足に合わない靴を履き続けることで、症状を悪化させているケースもあるので注意が必要です」
症状の重症度は、骨が曲がっている角度で判断します。親指の関節部分が赤く腫れて痛みがあるなど、早急な治療が必要な人や、タコや巻き爪を合併している人も多いのだとか。
「進行性の病気なので、早めに進行を止める治療をすることが大切です。治療法としては、外反母趾パッドによる靴との摩擦の軽減、ステロイド注射、インソール療法などがあります。重度な変形に対しては根治的手術が必要になりますので、医師とよく相談を」
【外反母趾】
親指の骨が「くの字」に曲がってしまう
<症状>
■母趾(親指)が隣の指のほうに「くの字」に曲がっていく足指の変形。
脱臼しかけのときには腫れや痛みがあるが、一度脱臼して変形が進むと、痛みを感じない人が多くなる
■母趾が隣の指の上に乗ったり下に入り込んだりすると、靴選びも難しくなってしまう。
何も対処をしないと悪化し続けることになるため、早期の診察・治療が大切
<原因>
■過回内をはじめとした足の軸の調整不良、遺伝的なものなど
<治療法>
■変形してしまって症状が強い場合には、手術での対応も
■外反母趾パッド、インソールでの治療
<自分でできるケア>
■足に合った靴を履く
■インソールを着用する
■外反母趾と巻き爪を併発している人もいるので、つねに爪の状態を確認する
正常な足指(右)
親指が真っすぐに伸びている正常な足。骨の出っ張りもありません
外反母趾(左)
親指が隣の指に向かって「くの字」に曲がっています。ひどくなると赤く腫れたり、痛みを伴うようになります
外反母趾の発症の要因は「掛け算」?
外反母趾になる原因はさまざまですが、発症の要因は「掛け算」だと考えられています。
発症しやすい足の構造を持っているかどうかも含め、クリニックでは足の構造の見極めと生活習慣を考慮した診断が必要になります。
足のクリニック 表参道
DATA
東京都港区南青山5-6-24 南青山ステラハウス3F
03-6434-1082
診療時間/10:00~13:30、15:00~19:00
休診日/日曜・祝日・年末年始
診療科目/形成外科、整形外科
次回は、足の親指の付け根が痛む「強剛母趾」の症状を治療法についてご紹介します。
イラスト/かくたりかこ 構成・原文/上田恵子