“筋肉枯れ” が深刻なミーナ。「姿勢筋」衰えると、お腹も背中も真っすぐ伸ばせなくなり猫背に、おばあさんのような体型ができ上がっていくのだそう。きちんと姿勢を意識しなくちゃですね。
中村格子先生、教えて!
私たち、運動しないと将来どうなりますか?
背中が丸まって、杖をついてゆっくりゆっくり歩くおばあさん。その姿、自分には関係ないと思っていませんか?
高齢者の筋力低下予防が、すでに社会的課題となっている事実を考えてみましょう。運動不足、栄養不足を少しでも感じる人は、真剣に対策を練らなくては!
中村格子さん Kakuko Nakamura
profile
1966年生まれ。整形外科医、医学博士。
「Dr. KAKUKO スポーツクリニック」院長。
横浜市立大学整形外科客員教授。
2014年、スタジオを備えた整形外科クリニックを代官山にオープン。
健康で美しい人生の大切さを伝え、数多くの著書の出版や講演、
メディア出演と幅広く活動中。 http://www.dr-kakuko.com
「サルコペニア」と「ロコモ」。
覚えておきたいキーワード
格子先生の言う「筋肉枯れ」と同義語に「サルコペニア」があります。これはギリシャ語の「サルコ(筋肉)」と「ペニア(減少)」の造語で「加齢とともに筋肉量が減少していく現象」のこと。原因は加齢、運動不足、低栄養、性ホルモンや成長ホルモンの減少、環境など多岐にわたるとされています。
「特に、運動不足とタンパク質不足が大きいですね。20代でもサルコペニアと診断されるケースもあるんです。サルコペニアは『姿勢筋』の衰えから始まります。『抗重力筋』とも呼びますが、これが弱くなるため早々におばあさんのような姿勢になり、転倒や骨折のリスクも増大。逆に言えば、美姿勢を意識している人は、日常的に姿勢筋を鍛え、サルコペニア予防をしていることになりますね」
サルコペニアと似た概念に「ロコモティブシンドローム」(通称ロコモ)もあります。2007年に日本整形外科学会が提唱したもので、「筋肉、骨、関節、軟骨、椎間板といった運動器の障害により、要介護になる危険性が高い状態」のこと。サルコペニアが筋肉の衰えを指すのに対し、ロコモは運動器全般の衰えを問題視しています。
衰えるのは「姿勢筋」から!
「サルコペニア」予防には
美姿勢をキープするだけでもGOOD
姿勢を保っている筋肉は、「姿勢筋」とも言われる「抗重力筋」。
上の写真で示しているのが「姿勢筋」です。
おもな抗重力筋のうち、股関節を屈曲させる腸腰筋が衰えると、
骨盤が後傾してお腹が突き出ます。
大腿四頭筋が衰えれば膝が曲がり、
お尻の大殿筋が弱くなれば足を後ろに振り上げられず、老け込んだ歩き方に。
腹筋群や背中にある脊柱起立筋、広背筋が衰えると、
お腹も背中も真っすぐ伸ばせなくなり、猫背になる…。
こうしておばあさんのような体型ができ上がっていくのです。
反対に、きちんと姿勢を意識して生活している人は「姿勢筋」が衰えにくく、
見た目も若くいられて、いいことずくめ。
「筋肉枯れ」を予防する
第一歩は「歩く」こと
サルコペニアもロコモも、筋肉に関して言えば、運動で予防することができます。筋肉は何歳になっても発達させることができるからです。
「運動の第一歩は日常的に『歩く』こと。関節痛などのトラブルがなければ、1日の歩数を増やすことです。群馬県中之条町で行われた『中之条研究』という有名な調査で、どれくらい歩けばどんな病気を予防できるか、という指標がはっきり示されています。もちろん、正しく脚を使った歩き方でなくてはダメですよ。そして40代、50代なら、できるだけ大股で、スピードを上げて歩くことで運動効果は大きくアップします!」
次回は、歩き方からわかる「歩行年齢」を「花王パーソナルヘルスケア研究所」で測定したお2人の体験談をご紹介します。
撮影/藤沢由加 ヘア&メイク/木下 優(ロッセット) 構成・原文/蓮見則子