カビは腸壁に炎症を起こし、毒素を全身に広げる
どんな人にも「お腹のカビ」は一定数存在するのだといいます。では、私たちの体にどのような悪影響を与えるのでしょうか?
「腸内のカビは、腸壁を這うように広がっていきます。つたの葉が壁に張りついて伸びるようなイメージです。このときに、カビ自身が出す酵素で腸壁同士の結合を壊していきます。またカビ毒を発生することで、腸粘膜内のミトコンドリア(人体のエネルギー産生工場)にダメージを与え、腸壁を保護しているムチンを減少させます。
腸壁にはバリア機能があります。細胞同士がしっかり密着することで、体に害を及ぼすような物を体内に入れないようにしているのです。しかし、カビの増殖で腸壁があれることで、このバリア機能が低下し、本来、漏れていかない未消化物や異物、毒素などが血中に入りやすくなります。これを『リーキーガット症候群』といいます。リーキーは『漏れる』、ガットは『腸』の意味です。
こうして体に悪い成分が全身を回ることになります。カビが増えると、そのダメージが腸にとどまらず全身に及ぶのはこのためです。
また、カビは体に悪影響を与えるさまざまなものを産生します。例えば、糖分を発酵させてアルコールを発生させます。これを利用したのが酒造りですね。体内でアルコールが発生すると、めまいや吐き気、頭痛、下痢などを引き起こすことがあります。
カンジダ・アルビカンスというカビが多い場合は、アラビノースという糖の一種を盛んにつくり、体内のタンパク質を変性させます。これは自己免疫疾患を引き起こす原因になります。
ほかに、免疫を抑制したり、必要な栄養素、特にビタミンやミネラルの不足を引き起こす物質を産生します」(内山葉子先生)
がんや精神疾患との関係も!
カビが増殖してしまう要因は、抗生剤などの多用、糖質(炭水化物を含む)のとりすぎ、生活習慣の乱れ、湿度の高い住空間などが考えられます。
※カビの特性や増殖する要因、チェックリストは第1回参照。
特に、甘いもののとりすぎはカビを増殖させる大きな要因です。そして、カビが増えると、さらに甘いものがやめられないという悪循環に陥ります。
「それは、カビの大好物が糖質だからです。食べたものをカビに横取りされて、次から次へと糖質が欲しくなります。こうして大量に糖質を食べると、上がった血糖値を下げようとインスリンが働きすぎて、今度は反応性の低血糖になることがあります。カビによる低血糖はインスリンの上昇を伴わないこともあります。
低血糖になると、空腹を感じたり、慢性消化不良、吐き気などのほかに、動悸や頻脈、うつうつとしたりキレやすい、皮膚疾患、手足が冷える、疲れやすいといった症状が現れることがあります」
こうしたカビによる体への影響はがんとも関連があるといわれています。
「特にカビの中でもカンジダ・アルビカンスは体内へ侵入しやすく、腸壁のバリア機能の衰えにより、血流に乗って全身に回ります。そのため、大腸がんだけでなく、肝臓がん、乳がん、肺がん、頭頸部がんとも関連すると指摘されています
そして、自閉症とも関係があります。自閉症の患者さんの腸内環境はとても悪く、なかでもカビが多いことがわかっています。これが、私が『お腹のカビ』について研究するようになったきっかけのひとつです。
腸内にカビが増殖しているかは、第1回のチェックリストに加え、医学的な検査もあります。それは血液検査で血中にイースト(酵母)に対する抗体やカンジダの抗体がどのくらいつくられているか? 尿の有機酸検査でカビが分泌する有害物質であるアラビノースという代謝物の有無を調べます。
自閉症の人はこのアラビノースが高い確率で検出されます。そして、実際に自閉症の患者さんに、食事や生活習慣を改めてもらうと改善するケースが多いです。
腸内でカビが増殖しているかの検査は特殊なもので自費診療になります。1 回3万~5万円ほどと高額なので、私はカビだけのためにこの検査をすることはほぼありません。第1回のチェックリストと、実際にカビ対策をしてもらって効果が出るか? で判断することがほとんどです」
※カビ検出は一般的な検査ではわからず、対応している医療機関は限られます。
精神疾患や命にかかわるような病気にも、カビが関係しているとは驚きです。
【教えていただいた方】
「葉子クリニック」院長。関西医科大学卒業。大学病院・総合病院を経て、福岡県北九州市で「葉子クリニック」を開設。総合内科専門医、腎臓内科専門医。本当の健康とは「心」「体」「スピリット」が整った状態と考え、西洋医学だけでなく、東洋医学、自然療法、民間療法も取り入れてホリスティックに治療を行う。著書に『おなかのカビが病気の原因だった』(ユサブル)、『パンと牛乳は今すぐやめなさい!』(マキノ出版)、『デジタル毒』(ユサブル)など多数。
イラスト/内藤しなこ 取材・文/山村浩子