年齢とともに足アーチが崩れてくる=フットエイジングと呼ばれる足トラブルの元凶を、足専門医の桑原靖先生にお伺いしました。
お話を伺ったのは
桑原 靖さん
Yasushi Kuwahara
「足のクリニック 表参道」院長。2013年に日本初の足専門クリニックを開設。海外の足病医学に基づいて、形成外科、整形外科、皮膚科、リウマチ科など各分野の専門医によるチーム医療で足の総合診療を実践。
「フットエイジング」が進む原因
「年齢とともに、筋肉の衰えや靱帯の緩みなどによって足アーチが崩れてくることを、私はフットエイジングと呼んでいます」。
これが進む要因は、加齢のほか、遺伝と、履いている靴や運動の有無などの生活習慣も関係していると桑原靖先生。
「しかし、たとえ遺伝的要素があっても、生活習慣を変えることで何歳からでも、進行を緩やかにすることは可能です。今からの“足メンテ”が決め手です」
◆遺伝
遺伝的にアーチが崩れやすい足の骨格の場合、年齢とともにアーチ崩れが加速することも。
◆加齢
加齢は止められないけれど、筋力や柔軟性を低下させない努力で足アーチを維持することは可能。
◆生活習慣
足に優しい靴を選び、体の柔軟性を高め、筋肉を衰えさせないよう適度な運動を習慣に。
土踏まずが衝撃を吸収する
立ったときの足を横から見ると、中央に少し浮いている部分(=土踏まず)があり、地面についている部分が左右対称なのが理想です。
「この土踏まずのアーチは、体重を支え、姿勢のバランスをとり、地面からの衝撃を吸収するなどさまざまな動きを助けるバネの役割を果たします。
しかし、アーチが崩れた扁平足や甲高足だと衝撃がうまく吸収できず、靴ずれ、足指や爪の変形などのトラブルを招きやすくなります」
◆正常
土踏まずが適度にある、理想的なアーチの足。日本人には約1割しかいないといわれています。
◆扁平足
足アーチが下がり、土踏まずがない足は衝撃がうまく吸収できず、疲れやすくトラブルが生じがち。
◆甲高
足アーチが高すぎてもアーチがたわまず、足指の付け根とかかとに過度な圧がかかり痛みの原因に。
かかとの変形にも要注意!
「扁平足の人を後ろから見ると、足全体が内側に大きく歪んでいます。靴底のかかと部分は内側から減りやすく、アーチを引き上げるための筋肉がつねに働いているため、すぐに疲れたり夜間にふくらはぎがつったりします。
一方、甲高の人は外側に歪んでいるので、靴底は外側から減りやすく、ねんざをしやすい状態です」。特に甲高足タイプに合う靴が日本に少ないため、足へのダメージが多くなるのだとか。
◆扁平足
かかとの骨が内側に倒れている状態。扁平足の場合が多く、疲れやすく、外反母趾の悪化の要因に。
◆甲高
かかとが外に傾いていると、指の付け根やかかとに負荷がかかり、やはり足トラブルの原因に。
現代っ子に扁平足や浮き指が急増!
現代の子どもには、「扁平足」や、立ったときに足の指が床につかない「浮き指」の子が激増していると、桑原靖先生は危惧しています。
「生まれたばかりの赤ちゃんに土踏まずはありません。歩きはじめて、足の指を使って運動することで足アーチが形成され、9歳頃までに大人に近い形になります。
子ども時代に十分な運動をしなかったり、足に合わない靴を履いていると、健全な足の成長が妨げられてしまいます」
イラスト/内藤しなこ 取材・原文/山村浩子