体温は生体から発せられる信号のひとつともいえます。慢性的なストレスで発熱したり、血流を調整する自律神経がうまく働かず冷え症になったり。正しい体温の知識を学んで、日々の体調管理に役立てて!
慢性的にストレスを受けると体温は高くなる
マンガなどで、怒りのシーンなどでは頭から湯気が立っている絵を見ることがあります。
「実際に感情が大きく揺れ動くようなストレスがかかると、体温も上昇しています。ストレスの情報が脳の視床下部に伝わり、自律神経の働きで脈拍を速め、血圧や体温を高めます。
これが慢性的になると『心因性発熱』という病気になることも。急に高熱が出るケースと微熱が続くタイプがあり、頭痛や倦怠感などで日常生活に支障が出ることも。
しかし、これは感染症の発熱と違い、解熱剤が効きません。この場合は日常生活のペースダウンと睡眠時間を十分に確保することが必要です」(岡 孝和先生)
冷え症と低体温は別ものです!
「冷え症とは、手や足など体の末梢への血流が悪くなり、冷えて苦痛を感じる状態です。女性に多く、ほかにも不眠、便秘、倦怠感、月経異常の症状が現れることも。
一方、低体温とは体の深部体温が低い状態で、最近は若い女性や子どもにも、36℃未満の低体温の人が増えているという報告があります。しかし、このふたつはまったく別もので、冷え症の人でも深部体温は正常なケースが多いです」(岡 孝和先生)
熱産生の低下や血流の悪さが冷え症の原因
「冷え症の人は、血流を調整する自律神経がうまく働かず、寒い環境で体が冷えたとき、冷え症でない人より血管が拡張しません。
冷え症の人が布団に入っても、いつまでも足が冷たいままで眠れないのはそのためです。
実際に血管が詰まっていたり、甲状腺ホルモンなどの代謝を上げるホルモン分泌が低下しているときにも冷え症になります」(岡 孝和先生)
お話を伺ったのは
岡 孝和さん
Takakazu Oka
国際医療福祉大学医学部心療内科学主任教授。産業医科大学医学部講師、九州大学大学院医学研究院心身医学分野准教授を経て、2017年より現職。’20年より国際医療福祉大学成田病院心療内科部長を兼任
イラスト/いいあい 構成・原文/山村浩子