怖い骨粗しょう症、でも治せる時代に!
進化する骨粗しょう症の最新治療
●骨密度を増やす効果が高い分子標的薬も登場
近年進化しているのが骨粗しょう症治療。「かつては骨粗しょう症の薬といえばカルシウム製剤、女性ホルモン製剤、活性型ビタミンD3製剤、ビタミンK2製剤などでした。でも2000年代に効果の高いビスホスホネートとSERM(サーム)が登場し、2010年代にはデノスマブやロモソズマブといった分子標的薬が登場。
ロモソズマブは大腿骨の骨密度を年率で6%増やす効果が。これらの薬からその人の骨の状態に最適なものを選び、場合によっては複数組み合わせて治療をします。これにより骨粗しょう症は治せる時代に。ですから、早めの治療が肝心なのです」
骨粗しょう症のおもな治療薬
骨吸収を抑える薬
・ビスホスホネート
破骨細胞の働きを抑え骨密度を高める薬。飲み薬や点滴、注射などがある。治療に広く使用される
・デノスマブ
骨吸収を抑えて骨量を増やす薬。6カ月に1回の皮下注射でOK。骨吸収抑制剤では現時点で最強
・SERM(サーム)
女性ホルモンのような働きをして骨吸収を抑える薬。骨などごく限られた部分の受容体にのみ反応
・HRT(ホルモン補充療法)
女性ホルモンを補うことで骨量の減少を抑制。更年期のさまざまな不調の改善に効果的なのが利点
骨形成を促進する薬
・副甲状腺ホルモン(テリパラチド)
骨の形成を助けて骨量を増やす唯一の薬。1日1回自己注射するもの、週1回注射するものがある
骨の吸収抑制・形成促進作用を持つ薬
・ロモソズマブ
骨形成促進と骨吸収抑制の作用を併せ持つ初の薬。月1回の皮下注射で1年のみ使用できる。2019年に世界に先駆けて日本で使用可能に
骨に足りない栄養素を補う薬
・活性型ビタミンD3製剤
カルシウムの腸での吸収や、腎臓での再吸収を助けて骨代謝を改善し、骨量減少を抑える
・ビタミンK2製剤
骨に存在するオステオカルシンを活性化させてカルシウムを骨に沈着させ、骨の形成を促進する
・カルシウム製剤
骨の主成分であるカルシウムを補う薬。ほかの薬と併用されることも多い
ここまで治る! 骨粗しょう症改善例
「72歳の骨粗しょう症の患者さんに、6カ月に1回デノスマブを皮下注射し、それとともにビタミンD・カルシウム・マグネシウムの3剤の合剤を服用していただく治療を行いました。すると治療前はYAM(若年成人平均値)の68%だった腰椎の骨密度が、6年後にYAMの83%にも増えました。
骨粗しょう症の診断基準はYAM(若年成人平均値)の70%以下なので、この方は骨粗しょう症が治ってしまったわけです。このように適切な治療をすれば骨粗しょう症は治せるのです」
日本産婦人科学会専門医、日本骨粗鬆症学会認定医、日本抗加齢医学会監事・専門医。日本の女性医療をリードするパイオニア。骨粗しょう症・アンチエイジング分野の第一人者
イラスト/本田佳世 取材・原文/和田美穂