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やってはいけない、家族への怒り方とは?

怒りを感じたとき、我慢することがアンガーマネジメントではありません。その思いを上手に伝えることが大切です。それにはどんなことに注意したらいいのでしょうか? アンガーマネジメントコンサルタント・一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事の安藤俊介さんに伺いました。

疲れて帰ったら、子どものものが部屋に散らかしっぱなし。夫は家事をまったくやらない。私ばかりがなぜこんなに働き、疲れているの? と思った瞬間に怒りが爆発! そんな経験はありませんか?

 

アンガーマネジメント5回 子ども 散らかし 怒っている

 

「家庭内においても無駄に怒るだけでは、思ったように事は運ばないし、何より自分がさらに疲弊して、平穏な日々を送ることができません。怒りの感情は自分が考える「~すべき」が裏切られたときに、それを守るために生まれるので、それを我慢すればいいわけではありません(詳しくは連載第1回参照)。

 

ではどうしたらいいのでしょうか?

 

「アンガーマネジメントは“怒らないこと”を学ぶのが目的ではありません。怒ったほうがいいと判断したら、その“自分のリクエストを上手に伝える”ことが大切です」(安藤俊介さん)

 

 

怒る必要のあることとないことを分ける

 

そのポイントのひとつは、「その出来事は怒ることで変わるのか?」という観点です。

 

「物事には『変えられる/変えられない』ことと、『重要/重要ではない』ことがあります。このふたつの軸で分類すると、手放すべき怒りが見えてきます。

 

アンガーマネジメント5回 変えられることと変えられないこと

 

ふたつの軸で考えると、怒りは4種類に分けられます。そのなかで『変えられる×重要』なら変える努力をするべきでしょう。一方で『変えられない×重要ではない』なら手放すほうが得策といえます。

 

特に過去のことはもう変えられません。夫の過去を持ち出してグチグチとつついたところで、何も変わりません。また、現在のことでも、例えば、自動車の運転中に渋滞にはまってしまったとします。その道を選んだ夫を責めても、その状態は変わりません。それより、その事実を受け入れて、違うルートを模索したほうが建設的です。

 

ここで使いがちなのが、『あなたは“いつも”そうなんだから~』といった言葉。この『いつも』ははたして本当に『いつも』でしょうか? ほかにも、『必ず』『絶対』もNGワードです。

 

『この前もそうだった~』というふうに過去のことを持ち出して、怒りを強調するのは逆効果です。『関係のないことで文句を言われた』と思われるだけで、本来のこちらのリクエストを通すことはできません。

 

怒るときの鉄則は『過去のことを持ち出さない』『その場で伝えること』です。これは子どもに対しても同様です。

 

そして重要なのは、その人の性格や習慣はなかなか変えられませんが、自分の接し方は変えられることです。そこを変える努力をするほうが、ずっと建設的といえます」

 

 

過度な期待をしない

 

「怒りを感じるのは、期待と結果のギャップが大きいときです。物事を常に自分基準で考えたり、自分が育った家庭のルールにとらわれていると、期待を裏切られることが増えるでしょう」

 

父親が家事を積極的に手伝う家で育ったのなら、何もやらないパートナーにあきれてイライラすることでしょう。逆に家事は女性がやるものというのが当たり前だと思っていたら、男性がへたに手出しすることに違和感があるかもしれません。

 

「それを回避するためには、自分のルールを押しつけずに、過度な期待をしないことです。

 

例えば、掃除はいつも私がやっている=『やらされている』ではなく、部屋がきれいなほうが気持ちいいので、『好きで掃除している』と考え方を変えてみます。

 

また、『いつも』と無意識のうちに使っているのであれば、本当に『いつも』なのかを考えてみることです。前述したように『いつも』はNGワードだからです」

 

やらされていると思わないことで、怒りの頻度は格段に減ることでしょう。

 

 

子どもを叱るときはルールを徹底させる

 

子どもと決めているルールが破られたとき、イライラした気分に任せて激しく怒ったり、逆に機嫌がいいので見逃す…なんてことはありませんか?

 

「その時々で言うこと、怒ることが変わると、ただの『気分屋』だと思われ、信頼度が落ちます。叱ることに一貫性を持たせることが大切です。

正当性のあることを繰り返し伝え、それ以外は大目にみると、守るべきルールが明確になり、リクエストが実現しやすくなるでしょう。

 

叱り方で注意したいのは、『〇〇ちゃんはきちんとできるのに、なんであなたはできないの?』というふうに、ほかの子と比べることです。常に誰かと比べられることは、自己肯定感が低下する原因にも。

 

また、門限を破って遅く帰宅した子を、頭ごなしに感情的に怒るよりも、心配したことやそんなときは連絡してほしい旨を、冷静に落ち着いた口調で話したほうが、説得力が高まるでしょう。

 

目指したいのは、感情任せに怒り散らすのではなく、リクエストを適切に伝えることであることを忘れてはいけません」

 

 

【教えていただいた方】

安藤俊介
安藤俊介さん
アンガーマネジメントコンサルタント
公式サイトを見る
Twitter

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事。新潟産業大学客員教授。怒りの感情と上手に付き合う理論と技術をアメリカから導入。教育現場から企業まで幅広く講演、研修、セミナー、コーチングなどを行う。ナショナルアンガーマネジメント協会では世界で15名しか選ばれていない最高ランクのトレーニングプロフェッショナルの唯一のアジア人。『[図解]アンガーマネジメント超入門  怒りが消える心のトレーニング』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。

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イラスト/カケハタリョウ 取材・文/山村浩子

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