筋肉やトレーニングは裏切らない、なんて聞いたことがありませんか。
先日、知り合いからご家族が起立性自律神経失調症になってしまったのだけれど、なにかアドバイスをもらえないか、という連絡をいただきました。
確かに私は34回や55回でも書いたように、乳がんだけでなく子宮筋腫や子宮頚部異形成、果てはお尋ねの起立性自律神経失調症まで罹患しています。いや、決して自慢ではありません。
そんな、ある意味健康からほど遠いにも関わらず、私のインスタなどでは元気に走り回っている印象しかないようで、未だに闘病中のサバイバーなんて信じてもらえないことがほとんどです。ときどきは乳がん後のホルモン療法による副作用にも苦しんでいるもの事実だし、年齢によるあれこれも満載だというのに…
このやたら元気に見える状況について、このブログでも常々お伝えしているように、私は「運動している(私の場合はランニング)」ことが理由だと思っています。
回復時のあれこれを思い出しても、まさに冒頭に書いた「筋肉」や「運動」が効果ある!と実感しているからです。
その経験から、冒頭の知り合いには、まずは無理のない範囲で身体を動かす(運動する)ことをおすすめさせていただいたのですが、今回はなぜ私がそう感じたのか、経験なども踏まえて改めてお話ししてみたいと思います。
自分が無価値と感じることへの恐怖と焦り
ある程度の年齢になれば、日常において「できること」はそれなりに多いものです。けれども、病気になると、この「普通に」できていたことがいきなりできなくなります。
熱を出したり寝込んだりしたとき、なにもできないと情けなくなることとかありませんか。それと同じような感覚です。
朝、普通に起きるとか、毎日学校や会社に行くとか、一人で用事を済ませに外出するとか、せいぜい一週間程度ならともかく、月や年単位で病気になる前は当たり前だと思い込んでいたことができなくなるわけです。
これ、健康な時には想像もしないレベルでメンタルにくるのです。
もちろん、病気の症状がつらいことも辛いです。痛みや苦しさも辛いです。でも、メンタルの落ち込みも同じくらいきつかったなー、と今振り返ってみて思うのです。
ランニングなどの運動は手軽に「できた」を感じやすい
運動は健康にいいということは誰でも理解していることでしょう。
だから、運動がいいってことでしょ?いえいえ、そういうことではありません。
例えば、走るとか運動が嫌いだったり苦手な人は多いですよね。(過去の自分も含む)
ランニングをしているというだけで「すごいなー」って思ったりしませんか。この自他かかわらずの「すごいね」が、そうです、いいのです。
例えば、途中歩き歩きでも、今日がんばって1km走ってみたとします。一回でもやってみたら実感いただけると思うのですが、この達成感がすごいのです。 ランニングでなくても、ウォーキングとかサイクリング、あと泳ぐとかでも大丈夫。ポイントは「数字で実感できること」と「数日でいいから続けること」。1kmでも、15分でも、一周とかでもとにかく一週間くらい続けてみる。
できない自分に落ち込んでいるとき、やる気もなかなか起きないかもしれませんし、そうなると面倒くささばかり感じがちです。
でも、そんな中で「えいやっ」となにかをクリアすると、「なにもできない」と落ち込んでいる時には魔法のように効きます。ほんの些細なことでもいいんです。一駅歩いた、くらいで全然OK。 想像以上にすっきりするので、びっくりするかもしれません。
もちろん、運動以外でも達成感は得られますし、やりたいと思えることならなんでもありです。でも、頭脳労働は疲労しやすいしメンタルにもきやすい(仕事とか)。歩くとか走るという単純作業はそういう意味でとても適していますし、そもそも運動は挫折しやすいだけに、続けられたという事実だけで自信を持ちやすいことがメリットだと思います。
続けていれば当然健康にも効果があるわけで、体力や免疫も上がって一石二鳥。主治医にも褒められますし、とにかく色々お得なのです。
さらに、普通だったらちょっと難しいかも、ということまで達成できたら、もっと自己肯定感は上がります。 私は乳がん手術の後フルマラソンを完走できた時、「これができたんだから私は大丈夫」と思うことができました。今でもつい、健康な頃の自分や周囲の元気な人たちと比べてしまうことはありますが、病気になっても私は劣化していない、と思えることは心の支えになっています。
「今日も私はちゃんと頑張っている!」と実感するために、多分私は走っているのだと思います。
ランニングは無料のうつ病の薬?!
こんなふうに、身体の調子がいいと、ちょっと凹んでもそこまで落ち込まずに済むことが多いように思います。自分の実感だけかと思ったら、どうも医学的なエビデンスもいくつも出ているようです。
もちろん全ての悩みを運動と筋肉が解決してくれるというのは楽観的にすぎますが、例えば、運動することで脳内にエンドルフィンが放出されてうつの改善に役立つとか、セロトニンが増えて気分がよくなるとか(低セロトニンはうつ病の原因でもあるそうです。)、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑制するなどの、さまざまな効果が期待できるということは、ランニング雑誌などでもよく取り上げられているのを見ます。
私が起立性自律神経失調症になったとき、実は最初の数年は運動ではなく、お酒やたばこ(スモーカーでした)で気分を紛らわせていました。でも、いつもいつ倒れるか、悪化するかの不安と隣り合わせだったように思いますし、症状も一進一退だった記憶があります。
些細なきっかけでランニングをするようになって、ついた体力と筋肉のおかげで症状も出なくなりましたし、乳がんの手術の時はとにかく術後の回復が早く、主治医にも褒められました。
なにより上に書いたように少々のことで落ち込まなくなりましたし、ランニングという共通言語のおかげで、新しい友人がふえ、むしろ以前より興味の範疇も増えている気がします。
もちろん、無理をしてまで運動する必要はありませんし、病気によってはこの方法が難しい人もいると思います。経験として思うのは、病気になって一番避けたいのは一人で考えすぎたあげく、「自分はダメだ」と思い込むことだと思います。運動まではできなくても、ちょっとでも外に出て散歩するとか、なにか他に興味を持って「できること」を続けてみる。紛らわせるためではなく、些細なことでも成功体験をぜひ見つけてみて欲しいなと思います。