忙しいときこそ朝日を浴びて深呼吸を!
「大雪」という名のとおり、北国から雪の便りも増えてくる頃。太平洋側では冬晴れの日が多いものの、朝晩の冷え込みが厳しくなり本格的な冬の到来を感じます。
「この時期は、『閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)』と、どんより重い雲が空を覆い、天地の気が塞がれると表現される、本格的な冬の訪れです。
この時期になると、『熊蟄穴(くまあなにこもる)』と熊が冬眠のために穴にこもり、『鱖魚群(さけのうおむらがる)』と鮭が群れで川を遡上するというように、動物たちは冬に向けての準備に入ります。
この頃には日がかなり短くなり、太陽からの陽のエネルギーが弱まります。本来ならそれに合わせて、人間も動きを弱めて、ゆっくり長い睡眠をとりたい季節です。しかし、師走ともなると、人間界だけはそうはいきません。
仕事は年末に向けてさらに忙しさを増し、大掃除、忘年会、クリスマスなどのイベントも満載で、一年で最もせわしない時期となるのが現状です。
せめて心がけたいのは、睡眠をしっかりとることです。遅くなっている日の出に合わせて、いつもよりも少しだけ朝寝坊する日を作るといいでしょう。
そして朝起きたら、太陽の光を浴びてゆっくりと深呼吸をしましょう。忙しいときはとかく呼吸が浅くなりがち。すると新鮮な空気が体に取り込めずに、疲労がどんどん蓄積していきます。冬に不足しがちな太陽のエネルギーと新鮮な空気を、体いっぱいに吸い込むことが大切です」(齋藤友香理さん)
自然の恵み、補陽(ほよう)の食材で元気を補充!
「この時期には、五臓の『腎』の機能が低下します。腎は生命エネルギーの貯蔵庫であり、老化現象などとも深い関係があります。腎が弱ると手足のむくみ、頻尿や夜間尿などの泌尿器系の不調が出やすくなります。また、頭がボーっとしたり、やる気や集中力の低下がみられることも。
そんなときには、陽の気を補う『補陽』の食材を積極的に食べるといいでしょう。補陽の食材には、羊肉、エビ、にら、ねぎ、にんにく、くるみなどがあります。エビとにらをたっぷり使った水餃子を、くるみを砕いて加えたたれでいただくといったメニューはいかがでしょうか?
ほかにも元気を補充するものには、鶏肉、卵、山いも、にんじん、しいたけ、なつめなどがあります。これらを使った炒め物、また、薬膳鍋もいいですね。
暴飲暴食に走りがちなこの時期、疲れをためない食事と生活習慣を心がけることが何よりも大切です」
二十四節気の養生法とは?
旧暦の1年を24等分して、季節の移り変わりとそれに伴う生活の知恵を結びつけた「二十四節気」の養生法。この考えは紀元前の中国で生まれ、日本でも古くから親しまれています。
二十四節気はまず1年で昼の時間が最も長い日を夏至(6/21)、最も短い日を冬至(12/21)と決め、そこに昼と夜の長さがほぼ同じになる日である春分(3/20)と秋分(9/22)を加えて、1年を春夏秋冬の4つの季節に区分。さらにその中を、気温の変化や気象現象、動植物の様子などで6つに分けたものです。(詳しくは第1回参照)
※日にちは国立天文台発表の2024年のもので、年により多少前後します。
「二十四節気は長年の生活経験や知識で導き出した、農作業の目安にするための『気候・天気の予報』であり、それに従った養生法は、『人は自然の一部で、自然と調和して生きることが大切』という考え方に基づいた健康管理の知恵です。これらは漢方の陰陽論や五行説ともつながっています」
【教えていただいた方】
東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務め、多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら外部セミナーも担当し、漢方を学ぶ楽しさを広めている。また「養生を指導できる人材」の社員育成、『薬日本堂のおうち漢方365日』『薬膳・漢方検定 公式テキスト』など、書籍監修にも多く携わっている。
イラスト/河村ふうこ 取材・文/山村浩子