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「骨粗しょう症」と診断されたら、どんな治療をする? どれくらい改善するの?【更年期の骨活】

骨密度検査を受けて骨粗しょう症と診断されたとしても、過度に不安になる必要はありません。現在、治療は進化し、さまざまな治療法が用意されていて、早めに治療をすることで改善が可能です。そこで、「女性のための整形外科 かおるこHAPPYクリニック」院長の伊藤薫子先生に、骨粗しょう症の最新治療について教えていただきました。

「骨粗しょう症」にはどんな治療法がありますか?

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骨密度検査を受けたら、“骨粗しょう症と診断されてしまった”、あるいは、“骨粗しょう症ではなかったものの骨密度がかなり低かった”…。

 

こんなときは治療の始め時ですが、どんな治療法があるのでしょうか?

整形外科医の伊藤薫子先生に伺いました。

 

「骨粗しょう症は、薬で治療するのが一般的で、飲み薬と注射があります。

 

骨密度検査を受けて低いという結果が出た場合、血液検査をして、骨を壊す破骨細胞と、骨を作る骨芽細胞のバランスを調べて、そのうえで、その人にどの治療法が適しているか決めます。

 

薬の種類には、骨が壊れるのを抑える薬(骨吸収を抑える薬)と、骨形成を促進する薬、そのどちらの作用もある薬のほか、骨に足りない栄養素を補う薬などがあります」(伊藤先生)

 

破骨細胞が古くなった骨を溶かして壊していく(骨吸収)→溶かされた部分に骨芽細胞が集まって新しい骨を作っていく(骨形成)。この新陳代謝を「骨代謝」といいます。

骨はこの新陳代謝を繰り返しています。

 

その仕組みにどう働きかけるかによって、さまざまな種類の薬があります。

 

「骨粗しょう症」の薬にはどんなものがある?

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骨粗しょう症の主な治療薬は、以下のとおり。

 

骨吸収を抑える薬(骨が壊れるのを抑える薬)

・ビスホスホネート

骨吸収を抑えることで、骨量(骨密度)を増やす働きがあります。

飲み薬と注射薬があり、飲み薬は1日1回、1週間に1回、4週間に1回、月1回のタイプ、注射薬は4週に1回、月1回、年1回のタイプがあります。

 

・SERM(サーム)

破骨細胞の働きを抑える女性ホルモンのエストロゲンと同じ作用を発揮し、骨量(骨密度)を増やす効果があります。

飲み薬で、エストロゲンの分泌が欠乏して起こる骨粗しょう症に用いられます。

 

・抗RANKL抗体

RANKLとは、破骨細胞の形成・活性化などを促進するタンパク質。

この薬はRANKLに作用することで骨吸収を抑制。

骨密度を増やし、背骨や脚の付け根の骨折が発生する割合を抑える効果も認められています。

注射薬で、注射の間隔は6カ月に1回。

 

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骨形成を促進する薬

・副甲状腺ホルモン薬

骨芽細胞を活性化させて骨形成を促す作用があり、骨量(骨密度)を増やします。

背骨の骨折が発生する割合を減らす効果も認められています。

注射薬で、1日1回患者自身が注射するタイプと、週に2回患者自身が注射するタイプ、医療機関で週1回注射するタイプがあります。

 

骨の吸収抑制と、骨形成促進作用を持つ薬

・ロモソズマブ(抗スクレロスチン抗体)

スクレロスチンは骨の細胞から出る物質で、骨形成を阻害する働きがあります。

抗スクレロスチン抗体はスクレロスチンの働きを抑えて骨形成の維持と促進をしながら、骨吸収の働きを抑えて骨量(骨密度)を増やします。

注射薬で、医療機関で月1回の注射を12カ月続けます。

 

骨に足りない栄養素を補う薬

・カルシウム

骨の構成成分のひとつで、骨代謝に欠かせない栄養素。

他の薬剤と併用されることが多いです。

 

・活性型ビタミンD3

骨代謝に欠かせないカルシウムやリンの腸での吸収を促す働きがあり、骨形成の促進と、骨吸収の抑制により骨量(骨密度)を増加させます。

 

・ビタミンK2

高齢者で摂取不足になると、太ももの付け根の骨折リスクが高くなります。

摂取すると、骨量(骨密度)の維持や、わずかながら増加効果があり、太ももの付け根以外の骨折の発生割合を抑える効果も報告されています。

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骨粗しょう症治療の効果はどれくらい?
ホルモン補充療法との違いとは?

 

上記が、骨粗しょう症の主な治療法です。

では、これらの治療法で、骨密度はどれくらい上がるのでしょうか?

 

「特に注目されているのが、ロモソズマブで、1年間で骨密度が5〜10%も上がるといわれています。

 

ほかの薬は、1年で2〜3%程度といわれているので、これはかなり高い効果です。

 

ただ、ほかの薬の2〜3%も決して低いわけではなく、何もしなければ骨密度は下がっていく一方なのに対し、薬を使えばそれを防ぐことができるということ。

 

ですから、治療をすることは大切なのです」

 

ちなみに、女性ホルモンの減少で骨粗しょう症になりやすくなるなら、ホルモン補充療法(HRT)で骨粗しょう症は防げるのでしょうか?

女性ホルモンと同じ作用があるというSERMとの違いとは?

 

「HRTは、骨粗しょう症の予防にはなっても治療にはならず、骨密度が下がるのを防げますが、上がることはありません。

HRTは、更年期症状を改善するものなので、更年期症状があって骨密度が低いわけではない場合は、HRTを受けるといいと思います。

 

SERMのほうは、骨だけに効くもので、更年期症状には効きませんが、HRTのように血栓や乳がんなどのリスクは低いのがメリット。

 

更年期症状があってHRTをしている人も、HRTを止めたら骨粗しょう症のリスクは高まるので、SERMに切り替えるというのもひとつの選択肢です」

 

骨粗しょう症の治療は、保険はきくのでしょうか?

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「基本的に保険適用です。

ただ、ロモソズマブは、保険適用の3割負担でも1回1万5000円と、結構高めです」

 

また、骨粗しょう症の治療は、ずっと続ける必要があるのかどうかも気になるところ。

「骨粗しょう症の治療は、一生続けることを推奨されることが多いですが、必ずしもそういうわけではありません。

 

3〜5年ほど治療をして、骨密度が上がっていけば、その後は、食事や運動などの“骨活”をしながら経過を診て、治療を続けるかどうか決めることもできます。

 

いずれにしても、骨密度は何歳からでも改善できます。

なるべく骨代謝の活発な50代〜60代のうちに治療を受けておくと効果が高いので、そのことをぜひ知っておいてください」

記事が続きます

 

 

【教えていただいた方】

伊藤薫子
伊藤薫子さん
整形外科医
公式サイトを見る

いとう・かおるこ●「女性のための整形外科  かおるこHappyクリニック」院長。日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医。東京女子医科大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部整形外科学教室へ入局。関連病院勤務、アメリカ留学を経て、慶應義塾大学病院骨粗しょう症外来を担当。2021年7月、東京・帝国ホテル内に「女性のための整形外科  かおるこHappyクリニック」を開院。「いくつになっても背筋を伸ばしてハイヒール」をモットーに、女性一人一人の骨と関節の悩みに寄り添う診療に定評がある。院長が伴走するオンライン講座「4カ月の骨活プログラム」も全国から受講されている。

 

写真/Shutterstock 取材・文/和田美穂

 


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