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夜間頻尿(夜トイレに何回も起きる)原因と解決法を専門医が解説!

40代以降「夜中にトイレに起きずに、朝までぐっすり眠りたい!」と思っている人は多いのではないでしょうか。実は夜中のトイレの原因は大きく2つ、「尿をためる機能の低下」「夜に大量の尿が作られる」に分けられます。それぞれの原因と対策を専門医・平澤精一さんに聞きました。

朝までぐっすりメソッド①夜中のトイレでもう起きない!

睡眠の質が低下する原因として、40代頃から増えてくるのが「就寝後に何度もトイレに起きる」問題。
就寝後2回以上起きるようなら注意が必要です。

 

夜間頻尿に悩む人は年々増えています

「高齢になるほど、尿のトラブルが増加します。加齢により、腎臓や膀胱(ぼうこう)の機能の低下、ホルモン分泌の変化、筋力の衰えなどが起こるからです。就寝後に何度もトイレに行き、寝不足で日常生活に支障をきたす『夜間頻尿』に悩む人は、予備軍を合わせると男女で約4500万人いるというデータも。特に女性は更年期世代から増える傾向です」(平澤精一先生)

 

排尿の仕組みを知っておこう

腎臓で作られた尿は、尿管を通り、膀胱にためられます。尿が膀胱にある程度たまると、その信号が大脳へ伝えられ、尿意として感知。トイレで出す準備ができると、脳からの信号で膀胱の筋肉が収縮し、尿道が開いて排出されます。
排出ができない状況では、自分の意思でコントロールできる外尿道括約筋により我慢することができます。尿は成人では300~500mlためられますが、通常は100~200mlほどで尿意を感じます。

 

排尿の仕組み

 

夜間頻尿で死亡率は29%増に

就寝後に何度もトイレに起きるけれど、もう年齢のせい…とあきらめている人は少なくないようです。しかし「放っておいていいものではありません」と平澤先生。

 

「複数の研究結果を統合したメタ解析では、夜間の排尿回数がひと晩で2回以上の人は、1回以下の人より死亡率が29%、3回以上になると46%増加することが指摘されています。特に冬には、急激な温度差による血圧変化などで、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まります」

 

夜間頻尿のリスク

夜間頻尿のリスク/睡眠不足から慢性疲労やうつ、イライラの原因になり、生活の質(QOL)が低下します。また脳梗塞や 心筋梗塞などの重篤な病気の引き金になることも
睡眠不足から慢性疲労やうつ、イライラの原因になり、生活の質(QOL)が低下します。また脳梗塞や心筋梗塞などの重篤な病気の引き金になることも

 

夜間のトイレの原因は大きくふたつ!

ひとつめは、尿をためる“膀胱機能の衰え”です。加齢などで膀胱の柔軟性が低下し、過剰に萎縮するなどで、少ない尿量でも尿意を感じるようになります。

ふたつめは、夜間の尿量が増える“夜間多尿”です。通常は夜間には減りますが、なんらかの理由で増えることがあります。これらの原因が複数重なるケースもあります。

 

原因1:膀胱の問題
尿をためる機能が低下

腎臓で作られた尿はいったん膀胱にたまります。この膀胱や排出する尿道の粘膜も、加齢により柔軟性を失ってきます。すると尿をたくさんためられなくなります。
その代表的な病気が「過活動膀胱」で、突然尿意を感じて、もれそうになります。ほかに骨盤底筋が老化して衰えることも、尿をためる力が低下する原因に。特に女性は更年期に入り、女性ホルモンが減少すると、こうした泌尿器の不調が現れやすくなります。

膀胱の伸縮性がなくなる

年齢を重ねると毛細血管の血流が不足して、膀胱の血流も低下。すると膀胱壁の線維化が進み、しなやかさや弾力が低下して、たくさんの尿をためることが難しくなります。

【解決策】
●タンパク質をしっかりとる/毎日の食事に気をつけて、加齢を加速させないこと。
●体を冷やさない/血流を改善させることが、腎臓や膀胱の機能を低下させないために大切です。腹巻きをしたり、体を温める食材(にんにくやねぎなど)をとるのも◎。

女性ホルモンの減少

女性ホルモンは皮膚や粘膜、血管などをしなやかに保つ働きがあります。更年期で女性ホルモンが減少すると、尿道や膀胱の粘膜も乾燥して炎症を起こしやすくなり、膀胱が過剰に収縮して、尿意を感じやすくなります。

【解決策】
●ホルモン補充療法(HRT)/婦人科の医師と相談して、女性ホルモンを補充する方法です。更年期症状のひとつである頻尿の緩和に役立つことも。
●規則正しい生活/自律神経を整えることも手助けに。

過活動膀胱

過活動膀胱は尿が十分にたまっていないのに、尿意を感じる病気。加齢による膀胱機能の衰えに加え、肥満になると内臓脂肪が膀胱や尿道を圧迫して頻尿になりやすくなります。

【解決策】
●膀胱トレーニング/尿意を感じても、すぐにトイレに行かずに我慢します。最初は無理をせず1分間くらいから始め、少しずつ時間を延ばし、尿をためられる訓練をします。ただし、膀胱炎の人は行わないこと。
●ダイエット/内臓脂肪を減らして。

骨盤底筋の衰え

骨盤底筋は子宮や膀胱などの臓器を、下からハンモックのように支える働きをしています。衰える原因は、加齢や運動不足による下半身の筋力の低下です。特に出産経験のある人は骨盤底筋が緩んでいる傾向があります。

【解決策】
●骨盤底筋体操/尿がもれそうになると、膀胱の出口にある尿道をギュッと締めますが、これを意識的に行うエクササイズです。横になって行う(下参照)だけでなく、椅子に座ったままでも行えます。

骨盤底筋体操
↑骨盤底筋体操
両足を肩幅くらいに開いて横になり、両膝を立て、尿道、肛門、腟を意識して締めます。これをゆっくり行い3秒キープして緩めます。10回1セットで、1日3セット行います。

原因2:夜間多尿の問題
夜に大量の尿が作られる

もうひとつの原因が夜間にたくさん尿が作られることです。
通常は、抗利尿ホルモンが分泌され、夜間には尿量が減ります。しかし、このホルモンは加齢(下の、抗利尿ホルモンの変化グラフ参照)や病気、治療薬の服用などで分泌が低下して、たくさん尿が作られてしまうことがあります。それ以外にも、夜の時間帯に水分をはじめ利尿作用のあるアルコールやカフェインをとりすぎたり、日中の運動不足でも夜間多尿の原因になります。

水分の過剰摂取

夜寝る直前に、利尿作用のあるアルコールやカフェインを摂取すると尿量が増えます。また塩分や砂糖が多いもの、辛いものも、喉が渇いてそれを解消しようと水をたくさん飲んでしまい、結果、就寝後のトイレの原因に。

【解決策】
●寝る直前に原因となるものの摂取を控える/飲食は寝る2~3時間前までに。水は2時間ごとに200mlずつ飲むのが目安です。
※注:夏場は熱中症対策として、適度な水分と塩分の摂取は必要です。

抗利尿ホルモンの減少

本来は、日中に尿が作られ、夜寝ている間は尿量を減らす仕組みになっています。それを行うのが抗利尿ホルモンであるバソプレシンです。しかしながら、加齢に伴い、このホルモンの分泌が減少することで、夜間でも尿が作られてしまいます。こうした現象は、高血圧や糖尿病治療の内服薬の副作用で起こることもあります。

【解決策】
●医療機関に相談/漢方薬を服用したり、すでに飲んでいる薬を調整することで改善のサポートに。

夜間多尿の原因のひとつが抗利尿ホルモン(バソプレシン)の減少です。若い頃は多いので夜間の尿量は減りますが、高齢になると減少するので多尿傾向に

多尿になる病気

多尿になる病気には、糖尿病、心因性多飲症(ストレスや緊張が原因で必要以上に水分をとる)、高カルシウム血症・低カリウム血症(ミネラルの異常)、腎不全などがあります。

【解決策】
●病気の治療/医療機関を受診し、こうした原因となる病気を正しく診断して、治療することです。腎臓の病気が疑われる場合は、血液検査(腎機能を反映するBUN、Cr値)、尿検査(尿タンパク)、腹部超音波検査(形や大きさを診断)などを行います。

運動不足

運動不足になると、下半身の筋力が低下し、体の血液を循環させるポンプ作用が低下します。すると足に水分がたまり、むくみやすくなります。その状態で寝ようと横になると、下半身にたまっていた水分が上半身に流れます。これが多尿を引き起こします。

【解決策】
●ウォーキング/ふくらはぎの収縮を行うことで、むくみが解消。
●足上げ/足を10~15㎝上げて横になることで、下半身にたまった水分を上半身に移動させます。

【むくみ防止の足上げ】クッションなどを足の下に敷き、10~15㎝くらい上に足を上げて、15~30分ほど横になります。就寝3~4時間前に行うといいでしょう
↑むくみ防止の足上げ
クッションなどを足の下に敷き、10~15㎝くらい上に足を上げて、15~30分ほど横になります。就寝3~4時間前に行うといいでしょう

【教えていただいた方】

平澤精一
平澤精一さん
泌尿器科医
公式サイトを見る

「マイシティクリニック」院長。東京医科大学地域医療指導教授。健康長寿の臨床研究者として、熟年期障害の治療に尽力

 

イラスト/内藤しなこ 構成・原文/山村浩子

 

 

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