睡眠の質を上げるために大切なのは、寝る前の時間だけではありません。それは朝から始まり、一日をどう過ごすかにかかっています。その大事な要素をチェック!
快眠を導くために朝からどう過ごすか
「心地よい睡眠を確保するためには、朝が最も大切です。朝の太陽光を浴びることで、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌がストップ。交感神経が優位な状態になり、体のエンジンがかかりやすくなるだけでなく、夜に再びメラトニンが出やすくなり、快眠に導きます。太陽光でなくても、強めの光を見るだけでも効果があります。
また昼間の過ごし方や食べ物、寝具の選び方など、少しの工夫で睡眠の質はぐんとアップします」(白濱龍太郎先生)
朝、昼、夜の食事が快眠に効く
「朝食にトリプトファンを含む食材をとると、これが体内でセロトニンに変わり、夜には睡眠ホルモン・メラトニンに変化します。昼食は食後に眠くなるのを避けるために、血糖値が上がりにくいものがベスト。炭水化物(糖質)を控えめにして、タンパク質や、野菜などの食物繊維を意識します。夜は体温を上げる温かいものやスパイシーなもの(激辛はNG)もいいでしょう」
おすすめの食事メニュー
●朝
トリプトファンが多い味噌や納豆、セロトニン合成に必要なビタミンB6が多い鮭、それらの効果を高めるご飯が理想
●昼
午後の眠気対策のため、炭水化物を控えめに。ラーメンやそばなどを避け、定食にしてご飯を少なくしてもらうなどの工夫を
●夜
鍋料理などの温かいもの、食材では体を温める発酵食、しょうが、にんにく、唐辛子、玉ねぎ、にんじんなどがおすすめ
睡眠負債は1週間で返済する
夜勤などの仕事や休日の寝だめなどで、時差ボケの状態のことをソーシャル・ジェットラグといいます。「仕事などで完徹をした場合は、朝寝る際に遮光カーテンをしたり、寝つけない場合は睡眠導入剤を活用する方法も。また、日頃の睡眠不足の解消は、休日の寝だめではなく、睡眠が1時間減ったら、翌日に少しだけ早く寝て睡眠時間を取り戻します。30~60分の範囲で1週間以内に調整していくのがポイント」
睡眠禁止時間帯を避けた昼寝はOK
「私たちの体には、起床後6~7時間で眠くなる仕組みが備わっています。朝6時に起きたら12~13時で、ちょうどランチ頃に当たります。強い眠気を感じたときは我慢しないで、15~20分程度の昼寝をするのが正解。その際、コーヒーを飲んでから寝ると、20分後くらいにカフェインが効いてきて、起きやすくなります。一方、帰りの電車や夕食後、16~21時は睡眠禁止時間帯。ここで寝ると、夜、眠れなくなるので厳禁です」
リズム運動をプラス10分!
脚を動かしていないと下肢がむくみ、夜中の多尿の原因に。「ウォーキングや踏み台昇降などで、ふくらはぎを動かすことで下肢の血流を促し、一定のリズムで行うことでリラクセーション効果も期待できます。ただし、こうした運動も筋トレも夕方から20時までにすませることが大切。心拍数が上がると交感神経が優位になり、眠りに支障が出ます。就寝前には体温を上げ、心身の緊張を解消するストレッチがおすすめです」
吸汗性と体を解放するパジャマが大事
Tシャツにジャージーといった部屋着のまま寝る人もいると思いますが、やはりパジャマに着替えることが重要なのだと白濱龍太郎先生。「パジャマの条件は、就寝中に発汗するので吸湿性が高いもの。寝返りが打ちやすいように伸縮性があること。特に冬場は保温性も大切です。これらを考えると素材はコットンをメインにポリウレタン混のものが理想。パジャマに着替えることが、寝るための合図になって、自然と入眠しやすくなるメリットもあります」
ぬるめの湯に15分つかる!
「眠気は深部体温が下がるときに起こるので、お風呂に入って一度、体温を上げておくのが、スムーズな入眠の手助けになります。タイミングは眠りたい時間の1時間半~2時間前がベスト。その際、熱めの湯にさっとより、ぬるめの湯(39~40℃くらい)に15分を目安に入りましょう。夏場で汗だくで帰宅してシャワーを浴びたとしても、寝る前にもう一度、湯船につかる習慣をつけるのがおすすめです」
寝る直前の歯磨きと飲食は禁止!
いよいよ布団に入る直前に歯を磨く…という人は多いと思いますが、実はその習慣、睡眠を妨げている可能性があります。「歯茎が刺激されると、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌量が減るといわれているのです。歯磨きは就寝の1時間前までにすませ、それ以降は飲食を避けるのが理想です。寝る前の飲食は消化器官の大きな負担に、寝酒も睡眠の質を低下させます。飲むなら夕食時にして、それ以降は控えて」
夫婦はせめて別マットレスに
夫の寝返りやいびきで睡眠が妨げられる場合の対応策は?
「寝室を別にする方法もありますが、それが難しい場合は、せめてベッドのマットレスだけでも別にするのがいいでしょう。体型や体重の違い、好みに応じて、マットの硬さなどが選べ、相手の寝返りの振動が伝わりにくくなります。また、いびき問題は放っておいていいものではないので、専門医に相談して改善することが大切です」
【教えていただいた方】
在宅医療の専門クリニック「RESM新横浜」理事長。日本睡眠学会認定医療機関として高い専門医療を提供
イラスト/内藤しなこ 構成・原文/山村浩子