心理学の「コーピング」、言い換えると「自分助けの手段」とは一体どのようなものなのでしょうか? 臨床心理師の伊藤絵美さんに詳しく伺いました。
教えていただいたのは
伊藤絵美さん
Emi Ito
1967年生まれ。公認心理師、臨床心理士、精神保健福祉士。カウンセリングの専門機関「洗足ストレスコーピング・サポートオフィス」所長。クライアントへのカウンセリングのほか、企業研修やセミナー、ワークショップを積極的に開催。『セルフケアの道具箱 ストレスと上手につきあう100のワーク』(晶文社)など著書も多数。
ストレッサーを書き出す
ストレスで折れそうな心に効くケア・レシピの第3回、第4回、第5回、第6回の「心がザワつくときに試してみたいお守りレシピ」や、前回、前々回の「書き出す」作業は、“つらさ”を緩和するために意識的に行う対処法です。これを心理学では「コーピング」と呼びます。言い換えれば、「自分助けの手段」。
自分を助けるという意図があれば、どんなことも「コーピング」といえます。例えば、無意識にため息をつくのは単なるストレス反応ですが、リラックスしようとして意図的にため息をつくのは「コーピング」なのです。
その行為に効果があるかどうかは別問題で、コーピングの手段はとにかくたくさん持っていることが大切。
ひとつ試してもし効果がなかったら、次から次へと別のことを試せばいいのです。「コーピングは、自分が楽になりそうな小さなことでいいんです。100個を目標に、たくさん書き出してリストにしておきましょう。
コーピングレパートリーといって、それを持ち歩いて実行することでストレス耐性が格段にアップします」(伊藤絵美さん)
例えば、こんなことが「コーピング」
コーピングは頭で考えるだけのものと、実際に行動するもの、必ず2種類を入れましょう。下の例を参考に、あなたのコーピングを100個以上リストアップしてみて。
【考えるコーピング/前向きになれそうな発想や空想】
- ●好きな韓流スターを思って妄想する
- ●子どもたちの幼い頃をイメージする
- ●子どもたちが幸せなことに感謝する
- ●「私はいつもラッキーだ」と思う
- ●ヨガがうまくなった自分を想像する
- ●昔飼っていた猫に思いをはせる
- ●「天国の父が見守っている」と思う
- ●リゾートの映像を見て行った気になる
- ●おばあちゃんの昔話を思い出す
- ●頑張って生きている自分を褒めてみる
- ●楽しかった旅行の思い出にひたる
【行動するコーピング/つらさを軽減できそうなこと】
- ●YouTubeで昔のアイドルを見る
- ●子どもがくれた手紙を読み返す
- ●親友と飲んで愚痴を聞いてもらう
- ●温泉旅行の計画を立てる
- ●半日かけてパンを焼く
- ●贅沢なオリーブオイルを買う
- ●飼い犬にマッサージをしてあげる
- ●美容室でヘッドスパをしてもらう
- ●施設にいる母を訪問して笑顔を見る
- ●お風呂で大声で歌う
- ●散歩に行って花の写真を撮る
コーピングはささいなことでOK
いつでも消したり増やしたりを簡単にできるのが、よいコーピングリスト。つまりコーピングとして選ぶ事柄は、ささいなことのほうが断然いいのです。趣味も立派なコーピングです。
リスト化したら持ち歩き、最初は効果を考えずにやってみて。実践したときに、自分がどう感じたかを検証してみましょう。
望ましいコーピングとは…
- ●お金がかからないこと
- ●時間がかからないこと
- ●健康に影響がないこと
- ●人に迷惑がかからないこと
- ●人間関係を損なわないこと
- ●後悔しないこと
- ●気軽に続けられること
イラスト/雨月 衣 指導・監修/伊藤絵美(洗足ストレスコーピング・サポートオフィス) 構成・原文/蓮見則子