「十和子道」第13回
「年齢肌にセルフマッサージや美顔器は不要です。大事なのは〝十和子ツボ〟」
私は、「肌のために絶対にやらない」と決めていることが3つあります。
①紫外線に当たること。
②食事制限によるダイエット。
③顔のセルフマッサージ。
今回は、3番目のセルフマッサージの是非についてお話ししたいと思います。(①の紫外線嫌いは周知のとおり。②のダイエットについては次の機会にお話させてください)
顔のマッサージに関しては賛否両論あり、推奨派と慎重派に分かれるところですが、私はマッサージどころか、できるだけ顔には触れないように心がけているほどのアンタッチャブル派です。
40代に入って間もなく、それまで黙々と粛々と真面目に(A型です)やっていたマッサージをぴたりとやめました。
きっかけは主人の「それって何の効果を求めてやっているの?」という、ひと言。
え、何の効果って…なにを今さらそんなこと。「むくみやくすみ、シミやしわの改善。できればリフトアップもツヤもハリも毛穴も…って、もうあれこれ全部に決まっているじゃない」と、ちょっと憮然と答えたら、「だったら、そのセルフケアは年齢肌には逆効果かもしれないよ。だって顔の皮膚は、あなたも知ってると思うけど厚くても0.5mmくらいしかなくて…」と、懇々と説明を受けるはめに…。
主人は皮膚科の医師だったこともあり、その説明にはしごく納得。というより、「なんでそんなことに気がつかなかったんだろう…」と、愕然としてしまったのです。
皮膚は「表皮」と「真皮」の二層構造になっていて、その厚みはわずかに0.4~2mmほどしかありません。
「表皮」の一番外側にある角質層の厚さは0.03mm。(セラミドを主成分とする細胞間脂質が角質細胞を繋ぎ合わせて、水分をキープします。ちなみに、「表皮」を支えているのが「真皮」。その組織はコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などでできており、皮膚の弾力を保つためのクッションのような役割を果たしています。老化や紫外線の影響などで、成分が不足すると弾力が失われ、ほうれい線やブルドックラインと言われる深いシワやたるみを引き起こすのです)
そんな数mm以下の超センシティブな「皮膚」を、素人が「たぶんこんな感じかな」でマッサージするのはいかがなものか?
水分も皮脂も失われ始めた年齢肌へのダメージは、火を見るより明らかです。
(上の写真 自身がプロデュースするコスメブランド「FTC」表参道店にて。ときどきふらりと立ち寄り、店頭に設置してあるマシーンで肌診断)
「たぶんこんな感じ…」「きっとこれくらい…」は、大抵過度な摩擦になっています。羽根を滑らせるような、ごくごく弱い力のマッサージで十分なのですが、それではやった感がなく、無意識のうちにエスカレートしていってしまうもの。「私はそんなに力を込めていません」という方もいらっしゃるでしょうが、皮膚の表面が動くような力では、すでに強すぎるのです。年齢肌にとって過度な摩擦は色素沈着を起こしたり、筋繊維が断裂し、しわやたるみを増やしたりする原因になりかねません。
確かにマッサージを施すと血流が促されるため、血色もよくなり、ツヤ感が出ます。
けれど、私が以前せっせとやっていたマッサージは、私の肌には効果がなかったように思われるのです。その「キレイ」は一時的で、持続性がありませんでした。マッサージ直後は肌にほんのりと赤味が差し、つるつると手触りもよくなるのですが、その「キレイ」が、1日とキープできない。
思えば、プロが行なう施術と同じクオリティのマッサージが素人にできるはずもなく、また、どこまでもパーソナルな十人十肌に、みな同じメソッドでいいわけがありません。
例えば、皮膚も厚くて丈夫で皮脂も豊富な10代のお肌と、表皮が薄く皮脂腺も流れかかっているようなセンシティブな40代以降のお肌に、同じマッサージを施せばトラブルは必至です。顔の筋肉を知りつくしたプロの技術でなければ無理だと思うのです。
ほうれい線は誰だって気になる悩ましいシワですが、そこをやみくもに擦れば、肌の弾力繊維が瘦せ、必然、口角が下がり、今度はマリオネットラインが目立ってきます。
眼の周囲の皮膚はさらに薄いので、「目の下のたるみが気になる」と、ぐるぐるマッサージをすれば、少ない脂肪がさらに減り、眼窩自体が落ちくぼんでしまいます。
しわやたるみをなんとかしようとしているけれど、この加齢による悩みはマッサージで解決できるものではないと私は思っています。素人がにわかに、やみくもにやっていい類のものではない、と。
触れば触るほど、大事な大事な脂肪が落ちて、顔全体がたるみ、筋肉が瘦せたり細ったりしてしまいます。シワやシミも加齢の憂鬱なシンボルに違いありませんが、「老け感」はそこではなく、瘦せる、こける、しぼむ、落ちくぼむ…そんな「陰影」や「衰退」を感じさせるところに出てしまうものでしょう。
ですので、私はフェイシャルマッサージはプロの方におまかせし(月に1回行くか行かないかくらいですが)、自分では極力肌に触れないようにしています。(当然ですが、超音波やイオン導入などの美顔器や美容ローラーなども使用しません。唯一残ったのは、美顔スチーマーくらい)
とはいえ、毎日のスキンケアでお肌に触れないわけにはいきません。
そのスキンケアで肌に触れる際、私が心がけていることは「点」ではなく「面」でケアするということ。
クレンジングでも美容液でもクリームでも、「指先」という「点」ではなく、「手のひら」という「面」を使います。
手のひらでゆっくり、ふんわりと動かしてなじませていく。皮膚が動くような力は加えません。力を込めたからといって、汚れがより落ちたり、化粧水や美容液の成分が肌により浸透するわけではないので。
私は「角質層に留まって!」とか「真皮に届いて!」と念じて(笑)、手のひらのくぼみを使い、ふわりふわりと肌に乗せています。自身のブランドで洗顔時に理想的な状態の泡が出てくる洗顔フォーム(FTCパーフェクトムースG)や肌に触れることなく成分がゆきわたるミスト状の化粧液(FTCパーフェクトトリートメントミストエッセンスRS/ザ・トワコミスト)をプロデュースしたのも、そんな不要な刺激を少しでも避けるためでした。
顔をマッサージしないかわりに、その分の時間と労力を注いでやっているのが頭皮マッサージです。
なぜ、肌ではなく頭皮マッサージなのか?
その理由は、
・エイジングによる毛髪のトラブルを防ぐことと育毛のためが50%、
・顔のリフトアップとくすみの解消のためが50%。
「頭皮と顔やカラダの皮膚は一枚でつながっている」というのを耳にされたことがあると思いますが、頭皮の血流が悪くなり、栄養が行き渡らず硬化してくると、一枚皮であるお肌にもダイレクトで負の影響がでます。
「頭皮の凝りや血行不良」がイコール「肌のたるみ、くすみ」となります。
頭皮も顔の皮膚も構造的には基本的に同じですが、頭皮自体には筋肉がなく、皮脂腺と汗腺が顔の皮膚よりかなり多いという違いがあります。
ということは…自己流の、稚拙で少々手荒いマッサージでも、ダメージより、効果(成果?)のほうが期待できるのが頭皮だということ。
顔の肌においては禁忌な「一生懸命なマッサージ」や「やる気まんまんなマッサージ」が頭皮では報われる(笑)。
ということで、
私は朝晩2回のブラッシングによるマッサージ(生え際を中心に50回!)やシャンプー時、スカルプブラシで頭皮クレンジング&マッサージ(ゴシゴシと表面を擦るのではなく、地肌をしっかり掴んで、頭皮を動かす)を日々行なっています。
頭皮マッサージのコツは、下に下に下がろうとする筋肉を上へ上へと上げること。上にむかって絞り上げる感じやってみてください。「上へ」を意識するだけでも顔のたるみ方はちがってきます。
また、ちょっとした空き時間にも、側頭部のマッサージをしたり頭部のツボを刺激したりしています(得意の時短というか隙間産業的美容法という感じでしょうか)。
仕事先や外出先では、髪型もメイクも気にせず頭皮をわしゃわしゃとマッサージするというわけにはいかないので、耳の両脇(側頭部)をぐるぐるっとマッサージ。
人差し指と中指で耳を挟みこむようにして、指にあたる筋肉を押し込むように動かします。
側頭筋と呼ばれるここは、ほうれい線などを生む(作る)頬のたるみが関係している筋肉です。
30秒もマッサージしていると、側頭部や脳やカラダに多大な影響を与えるといわれている骨格筋である咀嚼筋が緩み、パーっと顔が温くなり、一気に血流がよくなるのがわかります。
夕方になると、顔の筋肉が疲れて下がってきたりむくんだりするので、オフィスや移動の車の中で人知れず必ずやっていますが、即効性もあり、
メイクも落ちず、ヘアの乱れも気にすることなく手軽にできるので、オススメのマッサージです。
頭皮へのアプローチは、自己流であっても、肌に比べれば「応え」が返ってきやすいものだと思います。抜け毛が減る、生え際に産毛が生えてくる、髪や肌がツヤめく、肌にハリが出てくる、目が大きくなる、アゴのラインがシャープになる…努力への報酬は人それぞれ差異はありますが、確かなものです。もちろん最初は自分にしかわかならいような小さな小さな変化かもしれませんが、自分の手で手に入れた「キレイ」は格別なもの。それは私たちの世代に絶対的に足りない勇気と、努力を継続させるあきらめないエネルギーを与えてくれます。
表情筋のトレーニングも今やベーシックなものになり、それ自体はいいことだと思いますが、まずは表情豊かに機嫌よく日々を暮らすことから始めたい。
大きな声で笑う。口角を上げてにこやかに話す…笑顔は何よりのストレッチ&筋トレになります。
そして表情豊かにいることが表情筋のトレーニングなります。
ちゃんと驚く。大いにテレてみる。本気で不思議がる。白髪やシミを見つけたら「ガーン…どうしましょ!」と大騒ぎしてへこんでみる。お腹から声をだしておいしい!うれしい!と言う。家族とケンカをしても「いってらっしゃい」「ただいま」「いただきます」は絶対に言う。歌をうたう。人や物の名前を気持ちを込めてきちんと呼ぶ。
そんなふうに表情豊かに機嫌よく暮そうとする女性は、年はとっても決して老けこんではいかないと思うのです。
ご機嫌をうかがうべきは他人ではなく自分!
ということにやっと気がついた知命(五十にして天命を知るという論語です)目前の春です。
ツボなんて効くのかしら?と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。
ツボに限らずなんでも、私は自分が信じたいと思うものを選んできました。だってそのほうが人生はきっと楽しいと思うから。
「こんなことどうせ無理」とか「どうせダメ」と思うより、「きっとできちゃうわ」「きっとキレイになれちゃうわ」と思うほうが面白いじゃないですか。
だからツボだって、「信じたい」ので「信じて」夢中になって押します。だから効くんでしょうね。我ながら単純であっぱれだと思いますが。
撮影/冨樫実和、本多佳子 取材/稲田美保 ヘア/黒田啓蔵
*オールカラー、自宅で撮影、オール私服、収録写真400点
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