舞妓や歌舞伎役者が愛用する「左り馬の紅筆」
京都の女性なら、きっとその名を知っているのが、繁華街、新京極の中ほどにある「左り馬」というお店。ここは、祇園や先斗町など花街の舞妓さんや芸妓さんたちが贔屓にする化粧品や化粧小物の専門店で、昔も今も、京都の女性たち憧れのお店です。創業は、明治時代で、もともとはメリヤスや小間物を扱っていたそう。昭和になってから化粧品の専門店に。
でも、ここが他の化粧品店とちょっと違うのは、国内の有名化粧品メーカーの品々と共に、練り白粉や紅、鬢づけ油、血のり、付け髭、キラキラ輝くつけまつげなど、舞台用化粧品や小物が、豊富に揃っているところ。だから南座に出演する歌舞伎役者さんや太秦の映画やテレビの撮影所の役者さんたちなども、このお店の常連です。
種類豊富な化粧品や化粧小物のなかで、おすすめは、有名なあぶら取り紙や、クレンジングや化粧水、クリームをはじめとする「左り馬」オリジナルの品々。なかでも、ご店主の井上さんが、ourageの読者のために、今回選んでくださったのは、細い化粧筆です。
「これは、本来『面相筆』と呼ばれ、歌舞伎の隈取りや目張りを入れる万能筆です。適度なコシある馬の毛を使い、扱いやすく、一般には、口紅をつける紅筆としてお使いいただいています」と。和の趣漂う朱色の漆風の軸で、「左り馬特製」の金文字が特別感を漂わせます。
口紅は、紅筆で描くもの。スティック状のもので直接唇につけては、輪郭がぼやけ、美しい印象になりません。丁寧に、紅筆で描くと、引き締まった若々しい口元になり、その違いは歴然。それに、紅筆で紅をさす…その仕草は、美しく、なんとも言えぬ色気が漂います。紅が唇に広がるごとに、顔は、パーッと明るくなって、若々しい印象に…。
京都の花街では、厳しい見習いの『仕込み』時代を終えた女の子が、晴れて舞妓となり、お座敷に出る『店出し』の時、置屋のお母さんは、化粧道具を一揃い贈るのだとか。化粧箱にはいった紅筆は、艶やかな大人の女性として成長する舞妓さんたちを、そっと支える道具のひとつなのです。この和風の紅筆を使うと、なぜか日本の女という気分が高まり、ときめいてしまうのは、私だけでしょうか。
左り馬
京都市中京区新京極通錦小路上ル東側525
☎075-221-2221
小原誉子
ブログ「ネコのミモロのJAPAN TRAVEL」 http://blog.goo.ne.jp/mimoron/