強いマッサージは、コラーゲン線維や靱帯にダメージを与え、たるみを加速させるリスクが
肌のためによかれと思って、毎日、顔のマッサージをしている人や、コロコロローラーなどのマッサージ器具でケアをしている人は少なくないのではないでしょうか。
でも近年、美容意識の高い人の間で、なるべく肌に触らないようにする“摩擦レス”を心がける人が増え、“マッサージってしないほうがいいの?”と疑問や不安を感じている人もいるのでは? その真偽について、慶田朋子先生に伺いました。
「実は、肌をこすって摩擦するメリットはほとんどありません。
肌のハリは、真皮層のコラーゲン線維によって支えられていますが、加齢劣化していき、たるみやすくなっていきます。
また、皮膚や脂肪を支える靱帯も加齢とともに緩むので、ただでさえたるみやすくなります。そんな状態に追い打ちをかけるように肌をこするようなマッサージを頻繁にすると、コラーゲン線維や靱帯が伸びたり切れたりして、たるみが加速してしまうことに。
特に皮膚は横でも縦でも水平方向(こする)の刺激に弱く、垂直方向(押す)には比較的強いのです。なので、水平方向にマッサージするとよりたるみやすくなります。また、マッサージローラーなどの道具は、皮膚を奥からつかんで引っ張るものが多く、皮膚の薄い部分などに刺激を与えるとコラーゲン線維や靱帯によりダメージを与えやすいので要注意。
垂直方向に押すマッサージも、繰り返すと色素沈着を招く原因に。
特に“かっさ”のようなプレートで皮膚を過度にこすり続けると、色素沈着が起きやすくなってしまいます。
また、肝斑も物理的な刺激で増えることがわかっているので、頬骨のあたりなど肝斑ができやすい部分を強くマッサージするのは厳禁。
つまり、マッサージはやればやるほどいいと思っていたら大間違いで、やり方を間違えるとデメリットのほうが多いことを知っておくべきです。
マッサージをすると顔が引き上がった感じがすることもあるかもしれませんが、それは筋肉が一時的に収縮したためで、効果はそれほど長続きしません」
血液やリンパを流してむくみを解消する目的で、たまに行う分にはOK
では、マッサージは、絶対にやらないほうがいいの?
「マッサージには、筋肉のこりをほぐしたり、血液やリンパの流れを促す効果があるので、こりやむくみを改善するためにたまに行うならよいと思います。
その場合も、強い力で行うのはNG。オイルやクリームなどを塗ってすべりをよくした状態で、点でなく面で優しく圧をかけながらマッサージをしましょう。
特にフェイスラインはむくみやすいので、むくんだときにコロコロローラーなどで優しくマッサージをする分には問題ないと思います。
ただ、テレビを見ながらなど、“ながら”でコロコロローラーを使うと、惰性で長時間やってしまうのでNG。1日5分以上行うのは避け、週2回くらいを限度にしましょう。
かっさマッサージをしたい場合も、肌にオイルやクリームなどをたっぷり塗り、すべりをよくした状態で、ごく軽くなでるようにマッサージをしましょう。軽い力でも血液やリンパの流れは促されます。
また、顔のこりをほぐしたい場合は、こするのでなく、かっさの角などでプッシュしましょう。肌はこする刺激に弱いですが、垂直に押す刺激には比較的強いのです。
こういった注意点を守れば、時々行う分には問題ないと思います。
マッサージをすると親しい人とのハグ同様、自身の手で優しく肌に触れることでオキシトシンが分泌され、癒し効果があるといわれています。ただし強い刺激は逆効果で、フェザータッチがベストと、覚えておいてくださいね。
セルフでなく、サロンなどでマッサージを受ける場合は、専門技術を学んだプロのエステティシャンが行うので問題ありませんが、頻繁に受けるのは推奨しません」
洗顔、スキンケア、メイクのときも、「こすらず優しく」を心がけて
マッサージだけでなく、洗顔やスキンケア、メイクのときも肌を強くこすりがちなので注意が必要と慶田先生。
「特に強くこすりがちなのがクレンジングのとき。拭き取りタイプのものは強くこすってしまいがちなので、おすすめしません。
強くこすらなくてすむように、メイクアイテムはお湯で素早く落とせるものを選ぶことが大事。
そしてクレンジングの際は、額や頬などのメイクが薄めの部分にまずなじませてから、メイクが濃いめの目元になじませ、乳化させます。
このときも強くこすらないようにし、20〜30秒以内に全体になじませること。すすぐときはお湯を優しく顔にかけて洗い流しましょう。34~37℃程度のぬるま湯が理想的です。冬場の入浴時に洗顔する場合など、寒いときも38℃以下にしましょう。
シャワーを直接顔にかける人がいますが、これは肌に刺激が強いのでNG。シャワーで流す場合は、手を顔にかざして手越しにシャワーを当て、手指から流れ落ちるお湯で顔を洗い流すのがおすすめ。
洗顔のときも、ゴシゴシこすらないようにし、洗顔剤をよく泡立てて、泡を肌に当てて洗いましょう。
また、スキンケアのとき、化粧水をコットンでつけると肌をこすってしまいがちなので、手で優しくなじませましょう。
皮膚が薄い目元に美容液やクリームを塗るときは、力が最も入りにくい薬指を使って塗るのがおすすめです。
目元は、メイクのときも注意が必要で、アイシャドウは肌に色がさっとのるものを選び、チップでこするように塗るのは避け、指を使ってなじませるのがベターです。
とにかく肌は引っ張ったり伸ばしたりと動かすたびに老化していきます。摩擦刺激は極力控えることが、若々しい肌をキープする秘訣です」
【教えていただいた方】
銀座ケイスキンクリニック院長。医学博士。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本レーザー医学会認定レーザー専門医。2001年、東京女子医科大学皮膚科助手、聖母会聖母病院皮膚科医員、美容クリニック勤務(兼務)。2006年、有楽町西武ケイスキンクリニック開設。2011年、 銀座ケイスキンクリニック開設。最新の照射治療と注入治療を組み合わせ、メスを使わずに肌質を高め、バランスのとれた若々しい顔立ちに変える治療が人気。著書に『女医が教える、やってはいけない美容法33』(小学館)などがある。
写真/Shutterstock イラスト/平松昭子 取材・文/和田美穂