40代、50代のくまは、皮膚のたるみや脂肪の萎縮、骨量の減少など複合的な要因で起こる
年齢を重ねるにつれ、目の下のくまが目立ってきたという女性が多いようですが、まずはその原因について、皮膚科専門医の慶田朋子先生に伺いました。
「くまには、さまざまな種類があります。若い世代に多いのは、紫外線や摩擦などによって起こる色素沈着が原因の茶ぐまや、冷えや寝不足、スマホの見すぎなどからくる血行不良で起こる青ぐまです。
また、もう少し年齢を重ねると、加齢と光老化などから皮膚の真皮層のコラーゲンやエラスチンが劣化して皮膚がたるんでその部分が膨らみ、下方に影ができて黒くまができやすくなります。
そして40代、50代になると、皮膚のたるみに加えて、脂肪が萎縮して、骨量も減少するので皮膚がくぼんで影ができ、よりくまが目立つようになります。
このように、40代、50代のくまは複合的な原因で生じることが多いです」
そんなくまに悩む人が多いことから、最近、“くま取り”専門のクリニックが急増していて、テレビCMやSNSなどで、その宣伝広告を見たことがある人も多いと思いますが、安易に駆け込むのは注意が必要だと慶田先生は話します。
「くま取り専門のクリニックで行っているのは、おもに、下まぶたの裏側を切開して脂肪を取り除く方法です。
この方法は、目の下のたるみがほぼゼロで脂肪が出て膨らんでいるタイプのくまの場合なら、脱脂することでフラットになるのでくまは確かに目立ちにくくなります。
問題なのは、皮膚がたるんでいるだけで脂肪の突出がほとんどないタイプにもかかわらず、脱脂をしてしまうことです。
特に加齢によって脂肪が萎縮しているタイプのくまなのに、脱脂をしてしまうと、その部分がさらにこけてしまい、逆にくまが目立って老け込んでしまいます。
また、くま取り専門クリニックでは、まだ若くてたるみのない人にも脂肪を取る施術をしてしまうことも多く、目の下がこけてしまい、私のクリニックに駆け込んで来られる方も少なくありません。
ほかにもよく他院修正のご相談を受けるのは、皮膚がたるみ、眼輪筋や靭帯も伸びているため脂肪がヘルニア状に出てきて膨らんでいるタイプなのに、脱脂だけしてしまったため、目の下にドレープ状のたるみが出現し、深いへこみも相まって病後のように老けてしまったというケースです」
最近、美容医療が身近になりましたが、美容外科でのトラブルも増えています。クリニック選びで気をつけるべきポイントを教えてください。
「インスタグラムなど、SNSにくま取り専門クリニックの広告がたくさん載っているので、そのBEFORE、AFTER写真を信じて安易に駆け込むと、こういったトラブルに巻き込まれかねないので要注意です。
くまを改善する治療法、手術法がいくつも用意されていて、その人に合ったベストな施術や手術法を選んでくれるクリニックならよいですが、脱脂しか選択肢がないクリニッは避けたほうがよいです」
大人世代のくまは、照射系治療やヒアルロン酸注入などの組み合わせで改善可能
では、40代、50代に多いくまを改善するためにはどんな選択肢がありますか?
「目まわりの手術はとても難しいですし、脂肪を一度取ってしまうと失ってしまった組織を元に戻すのはかなり難しいので、くま治療の第1選択にするのはおすすめしません。
美容皮膚科での美容医療でも十分にくまを目立ちにくくすることは可能です。
まずサーマクール(高周波)やウルセラ(ハイフ)などの照射治療で、伸びて劣化したコラーゲン線維を引き締めつつ、再生を促して内側からふっくらさせて土台を整えます。
それに加えて、脂肪の萎縮や骨量の減少がみられる部分(主に骨膜上)にヒアルロン酸を注入すると、かなり肌がフラットになります。
それでもまだ段差が目立つ場合には、脂肪浅層にカニューレ針を用いてベビーコラーゲンを面状に薄く注入する場合もあります。
脂肪がたるんで突出してきたタイプのくまでも、この方法でかなり目立ちにくくすることは可能です。
また、くまを改善するためのセルフケアとしては、目元も十分な保湿と紫外線対策を心がけて、たるみを加速させないことです。
茶ぐまの場合は、紫外線対策と、美白化粧品でのケアを。
青ぐまの場合は、寝不足や冷え、スマホの見すぎなどの習慣を改善したり、目まわりのツボ押しを取り入れるなどして血行をよくするのがおすすめです」
【慶田先生の銀座ケイスキンクリニックでのくま取り症例】50代女性
「ウルセラ」 アイリフトミニ1回 ¥88,000
「脂肪溶解注射」 1回1ブロック ¥33,000
「ヒアルロン酸注入」 1本 トライアル¥104,500
くまはセルフケアでも改善しやすいので、いきなり極端な方法に飛びつかずに、毎日のケアから始めましょう。
改善しない場合は、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本形成外科学会認定形成外科専門医など、きちんとした資格を持った医師がいる医療機関で治療を。
【教えていただいた方】
銀座ケイスキンクリニック院長。医学博士。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本レーザー医学会認定レーザー専門医。2001年、東京女子医科大学皮膚科助手、聖母会聖母病院皮膚科医員、美容クリニック勤務(兼務)。2006年、有楽町西武ケイスキンクリニック開設。2011年、 銀座ケイスキンクリニック開設。最新の照射治療と注入治療を組み合わせ、メスを使わずに肌質を高め、バランスのとれた若々しい顔立ちに変える治療が人気。著書に『女医が教える、やってはいけない美容法33』(小学館)などがある。
写真/Shutterstock 取材・文/和田美穂