自然に近づきたい!でも暮らすのは街ナカがいい! の、「終の棲家」ジレンマ
「終の棲家」、という言葉を、いつからか、少し身近なものに感じるようになるのがOurAge世代。
その響きには暖かさや懐かしさもあり、自分にとってはどんなところかな、と考えると、「広々とした自然に囲まれた、木づくりの素敵な家で、ゆったりと暮らす」……なんていうイメージが浮かんできて、しばらくウットリと白昼夢に浸りたくなります。
白昼夢に見た環境はこんなイメージ。「終の棲家」とはちょっと違うワイルドさだけど、自然のただ中に身を置きたい!という憧れに刺さりました
でも、もちろん現実はキビしいもの。都市に住んでいる人なら、そんな環境を得ることは、石油でも堀り当てるか宝くじにでも当たらない限りムリです。住宅地の、庭といえるような広さもないような住まいでは、そこまでゆったりと自然を感じることは、まずありえないよなー、とすぐ夢から引き戻されてしまいます。
じゃあ郊外に引っ越す?と自問するもすぐ否定。実はそんな都市圏を離れがたく感じているのも本音です。
「今は人生100年時代、これまでとは『老後』のイメージも変わりました。日々刺激を受けたり、出かけたり、働いたりを楽しむことも大切です。定年になったから人里離れた自然のただ中に隠居、というのは急病などの危機管理の面からも、あまりお勧めできません」
と、アワエイジ世代の夫婦のお金と暮らしの悩みを解決する本、『100歳までお金に苦労しない 定年夫婦になる!』、著者の井戸美枝さんも、「定年夫婦」の住まいについて書き、語っていました。
たしかにそう。住み慣れた土地、大事な友人、どこへでもすぐ出かけられるアクセスの良さ。そうした要素がより必要になるのは、むしろ家で過ごす時間が増えるこれからかもしれないと感じます。
とはいえ都会の生活はやっぱり自然が足りない。便利な都市に暮らしながら、ゆったりと自然を感じながら暮らす、そんな暮らし方って、できないのかなー? そんなの無理? などと考えていたら、まさに、それを叶える住宅ができたと聞いてびっくりしました。
大和ハウスが50~80歳代の都市に住む家族に向けて提案する新しい住宅プラン、『森が家(もりがいえ)』が、それです。
パンフレットは深く包容力のありそうな森のビジュアル。自然を求める心がくすぐられます
1月末のある日、この『森が家』のコンセプトとモデルルームの発表があると聞いて、住宅好きな「マドリスト」でもあるワタクシ編集Rが、興味津々!で出かけてみました。
「自然を感じる家」が「都市ストレス」にさらされている人を癒す
まず、名前が面白い。「森の家」ではなく、
「森が家」
なんですね。展示場のモデルハウスはこんな感じです。
住宅展示場にあるとコンパクトに感じますが、実は床面積が約100坪という、堂々たる大きさ。外観はシックで落ち着いた雰囲気
「森」、というわりには、一見した外観は都市型の戸建てプランです。街ナカに多い、3階建て住宅。木造で、モダンだけれど尖りすぎていない、スマートさもいい感じ。ただ、「広々としたお庭」はありません。雰囲気のいい植栽はありますが。
これで「森が家」? と思いながら、お部屋に入ってみると、へえ~、と驚きました。
部屋の中にも外にも緑がいっぱい! の、リビング。(上) ダイニングと一体になったテラスにも、こんもりと緑(下)
確かにお部屋に入ると中外に、大、種類もさまざまなグリーンたちがモリモリ、いえ、
「森森」
しています!
2階のリビングダイニングの3面をぐるりと囲むバルコニーに、緑がいっぱい! 窓を通して差し込む木漏れ日のきらめきを見ていると、まるで自然の中にトリップしたような気分に。この家では、「緑視率」が室内だけで10%を超えるように植栽をアレンジしているのだとか。どこにいても緑が目に入ってくる環境は、たしかに都市では珍しいもの。
テラスの手前はダイニング。キッチンから見ると、2面に開けた窓に広がる緑が優しい風景が(上)。お風呂の中からも、窓の外のグリーンが目に入ります(下)
部屋の中にも、グリーンがたくさんなのに加え、梁や柱の仕上げなど、建物自体にも随所に木の部材が使われていて、新しい家の気持ちよさとともに、ずっと以前から親しんできた場所のような心地よさも感じられます。
そして、リビング奥にはモダンな暖炉もしつらえられているのにはグッときました。豪邸にあるような大きな暖炉でもなく、カントリー感の強い薪ストーブでもないちょうどよさ。そして、なんだか炎がユラユラするのを見ていると、ホッとします。そしてどこからか、鳥の声や風の音が聞こえてくるのは気のせいかしら? なんだか気持ちが落ち着いてくるような・・・・。と、すっかり「森」感に浸っていると、現場レクチャーが始まりました。
→この心地よさには理由があった! 医学博士が調べた「エビデンス」とは?
右が医学博士の石川善樹さん。左はこの家と部屋の緑のコーディネートをしたフラワーアーティストの田中孝幸さん。この家の植栽費用は約150万だそう
「この家にいて感じる日差しのきらめき、炎の揺らめき、緑視率10~15%を確保された緑に囲まれた環境・・・・・・。すべては、ある目的において『効果的』というエビデンスを得ています。その計画と調査をこちらの石川先生が手がけました」
と紹介されたのは、予防医学界の気鋭の研究者として、各種メディアでも注目されている、医学博士の石川善樹さん。
その目的とは・・・・・・?
「『都市ストレス』の軽減です。」
なるほど。これほどまでに私たちが「自然に包まれたい!」と思うのは、便利で楽しい都市の生活は、同時にストレスフルでもあるからなんだ・・・・・・、と納得。
この『森が家』にいると、「平均ストレス度」が普通の都市の部屋にいるときに比べてなんと14%も軽減されるのだそう。また、興味関心の度合いを示す「平均インタレスト度」は16%アップ。また、この年になると気になる「認知」については「認知テスト」を受けたときの正答率が、この部屋で過ごした後には13%アップしたのだそうです。(数字は、都市を再現した「都市の部屋」と「森が家」とに10分間いた場合の比較実験による。)
実験でこれだけの効果があるのだから、プライベートな時間を過ごす場が「都市の空間」か「森が家」かの違いは、長い間には大きな違いがあるだろうと感じます。
陽だまりのテーブルに落ちる、木の葉の陰。風で揺れる影に、私たちは知らず知らず癒されているみたいです
その仕掛けは緑だけではありません。さまざまに自然を取り入れた中で感じる“五感のゆらぎ”は、リラックス感をもたらすので、それをこの家では積極的に取り入れた、と石川さん。目の端で動く木漏れ日や、暖炉の炎はまさにその「ゆらぎ」。
気のせいかと思った風の音や鳥の声も、実はこの家に備えられたオプションの設備から聞こえていました。超高性能のスピーカーから流れる、白神山地などの自然あふれる森で実際に録音された音が季節や時間ごとに自動的に流れてきます。そこには「人の耳ではとらえられない高周波の音」も混ざっており、それも大切な「ゆらぎ」のひとつなのだと説明されて、なるほどーとさらに感心しました。
光、炎、音、緑・・・、効率や画一化の進んだ都会からは排除され、遠ざけられた、自然の「ゆらぎ」に包まれて過ごす時間。それを都会で味わえるのは、とても貴重なことなんですね。
3階のベッドルームも大きな窓を備えながら、バルコニーの壁と深い軒でプライベート感高く、低ストレスな仕上げ。常に流れる自然の音が気持ちいい(上)。設備ももちろん充実。お出かけ好きアワエイジ世代には必需の大きめクローゼットまでずっと、床はナチュラルなヘリンボーン組み(下)
さらに、「都市ストレス」に負けないための提案がもうひとつ、この家の1階にあるそう。
このモデルハウスは2世帯仕様。親世帯向けと思われる1階は、2,3階よりさらに落ち着いた雰囲気で、照明の色も柔らか(上)。植え込みは適度に目隠ししながらも、玄関脇からひょいと顔を出せそうな「抜け」もある(下)
玄関脇のお部屋の前にある植え込みも、ナチュラルな感じで風情がありますが、それだけでなく、この植え込みの脇がオープンなのがポイント。そこから地域の人と「つながる」ことを可能にしているのだそうです。都市の中で、家にいると戸外の世界と隔絶してしまうこともあって、そんなときに感じる「孤独」も、大きなストレスの元。社会やコミュニティと「つながる」ことで、孤立せずほどよく刺激や楽しみを維持するのも大切なんですね。
やっぱり住まいに求めるものは、自然のやすらぎ。だから、身近に「森」を感じることが大事なんだと、改めて気づかされました。
一見して「おしゃれな住宅」というだけでなく、いろんな試みが盛り込まれた『森が家』。今のところ日本で唯一、品川シーサイド展示場にあるモデルルームで体験できます。「なんか良さそう!」と思った方は、訪ねてみてはいかがでしょう?
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