『まずは、あなたのコップを満たしましょう』著者インタビュー
玉置妙憂さん Myouyu Tamaoki
東京都出身。看護師・看護教員・ケアマネジャー・僧侶とさまざまな肩書を持つ。長男が重度アレルギーだったのをきっかけに看護学校で学び、看護師として働きはじめる。その後カメラマンの夫のがんが再発、「積極的に治療しない」と決めた夫の自宅介護をスタート。夫を在宅で看取った経験から、真言宗の修行を積み僧侶に。日本に比べ在宅死が多い台湾で行われているスピリチュアルケアをヒントに非営利一般社団法人「大慈学苑」を設立。患者や家族を支える活動を行っている。
著者interview
心が満たされ、初めて人は他者に優しくなれるのです
50歳前後の女性のなかには、親の介護に心身をすり減らしている人も多くいます。「介護する人がそんな状態で、どうしていいケアができるでしょう? まず、自分が いい状態でなければ、人のお世話などできません」と妙憂さん。
そもそも妙憂さんがこの本を書いたきっかけは、がんが再発した夫を在宅で看取った経験でした。彼は「入院しない」と治療を拒否、現役の看護師だった妙憂さんが在宅介護すると決めたのは、プロカメラマンである夫が、膨大な作品の整理を仕上げたい、だから入院できないという強い思いを知ったからでした。
「最初入院しないと聞いたときは、家族の思いを無視してと、憤りました(笑)」
夫はまるで植物が枯れていくように穏やかに旅立っていき、その姿は、点滴でぱんぱんにむくんだ姿で亡くなっていく患者さんの姿に疑問を持っていた妙憂さんに「生きとし生けるもの本来の自然な死に方の潔さ、美しさ」を再認識させたのだそう。
とはいえ、在宅介護の末に最愛の夫を亡くした喪失感は大きく、心にぽっかりと大きな穴が。どうやってそこから脱出したかというと、妙憂さんと二人の息子さんたちは、なんと、ディズニーランド行きを決行。「決して、夫を忘れたり、悲しみが癒えるわけではないけれど、空っぽになった心を満たす何かを欲するのは、むしろ自然な成り行き。それが私たちにとっては、たまたまディズニーランドだったのです」
ホスピタリティあふれるスタッフたちや、遊びに来ている人たちの笑顔が醸成する心地よい雰囲気の中で、妙憂さん親子は元気を取り戻すことができたと言います。
でも、真面目な人ほど家族のためにと、自分のことを後回しにしがちです。
「だから病気になるんです。いいかげん休みなさい、と体がSOSを発信するのです」
病気になってしまったら、元も子もありません。どうしたらいいのでしょう?
「自分を癒す方法を持つこと。大人の女性なら30個(!)は欲しいです。なぜなら人生にはお金や時間があるときも、ないときもあります。どんな状況でも対応できるよう選択肢は多いほどいい。心の避難所をたくさん持つことで健やかな日々を送れ、それが結果的に自然で美しい旅立ちへとつながるのです」
疲れたら休む。そんな当たり前のことが大切なのですね。
『まずは、あなたのコップを満たしましょう』 玉置妙憂 著/飛鳥新社
1,100円
数多くの看取りを経験してきた現役看護師の女性僧侶が見つけた28のヒントをまとめた本書には、生きることと死ぬことをひとつながりのものとして語ることができる著者ならではの言葉が詰まっています。老いや死を前に戸惑う私たちに生きる勇気と知恵を与えてくれます。
こちらもおすすめ
東大出身、現役塾講師が即役立つ言い回しをレクチャー
『たった一言で印象が変わる 大人の日本語100』
吉田裕子 著/筑摩書房 740円
その場にふさわしい配慮が行き届いた言葉遣いができる女性は美しい。なぜならその人の生活環境や信条までが垣間見えるから。たかが言葉、されど言葉。100の言い回しが見開きで紹介されているので、即役立ちます。
ストレス・加齢に負けないしなやかな体をつくる
『48手ヨガ 江戸遊女に学ぶ 女性ホルモンと体力活性法』
鈴木まり著/駒草出版 1,350円
女性ホルモンによる体調不良に悩まされた著者が、江戸時代の春画の48手ポーズをもとに考案したストレッチがこの48手ヨガ。著者自ら10㎏の減量に成功。寝ながらできるポーズがおもなので運動が苦手な人におすすめ。
人気皮膚科医が説く美肌と腸と心の密接な関係
『腸とこころをととのえる 美しい肌が生まれるところ』
山﨑まいこ 著/ワニブックス 1,400円
西洋医学、栄養学、果てはアーユルヴェーダとまさにホリスティック医療を地で行く皮膚科医の著者。美肌への道は、腸内環境を整えること、心を健やかに保つことと説きます。正しい知識と継続が大事という言葉に納得。
グレイヘアを隠さない選択で広がる新たな世界
『グレイヘアと生きる』
近藤サト 著/SBクリエイティブ 1,300円
昨年5月、TV番組にグレイヘアで登場した著者に届いた、女性たちの称賛の声。著者の勇気、素髪の美しさが多くの女性の共感を呼びました。年齢にあらがうことなく、女性の前向きな生き方について指南した初の著書。
撮影/矢部ひとみ 取材・原文/佐野美穂