こんにちは、水ソムリエ&水鑑定士の竹村和花です。夏休み!水辺の風景が何とも恋しい季節です。
帰国する度に感じるのですが、日本には日本ならではの美しい風景があります。
今回は夏にこそ訪れたい日本の水都と併せて、涼やかな水辺の温泉を紹介したいと思います。
<納涼!日田水郷の旅>
九州・大分県にある日田(ひた)市は、福岡空港やJR博多駅からのアクセスも良く、古くから「水郷」と呼ばれた水の都です。
市内を流れる三隈川の水の豊かさと清らかさから、濁りをとって「水郷」と書いて「すいきょう」と読むのだとか。
博多駅発のローカル線で約1時間20分。日田駅を目前に、車窓には水量豊かな三隈川の風景が広がります。
訪れたのは丁度「日田祇園祭」の顔見世の日。華やかな物語を模した人形に飾られた9基の鉾が、夕方から駅前に集う日のことでした。
日田では、この日を境に本格的な夏が始まります。
<虹色ラムネと世界のレモネード瓶に出逢う>
日田の街の歴史地区を歩きながら見つけたのが、味噌・醤油・清涼飲料水を扱う老舗『まるはら』。
風にゆれる暖簾をくぐると、まず目に入ったのがキンと冷えた虹色ラムネ。
懐かしいガラス張りの冷蔵庫にはメロン・アップル・レモン・グレープ・オレンジなどフルーツ味のラムネがはんなりとした色に染まっていました。
瓶の中で輝くラムネの色は、赤キャベツやベニバナ・クチナシの花から抽出した色素で色付けしたものとか。
天然色素は光にあたると徐々に色が抜けてしまうデリケートな性質を持ちます。
少しずつ薄らぐ淡い色合いは、まるで虹のようで何だかちょっぴりロマンチック。
『虹色ラムネ』というネーミングも、儚げで美しいラムネ瓶の輝きにぴったりです。
真夏の日差しから逃げるように、お店の中のテーブルで一息。
お店の入口にあるお休み処には、中世ヨーロッパで使われた古いラムネ瓶の展示スペースがありました。
日本にラムネが伝わったのは1853年、アメリカのペリー提督が浦賀に来航した時とされていれます。
「ラムネ」という呼び名も、その当時「レモネード(英語)」が訛って生まれた、と言われているのですね。
<三隈川の清流が生んだ世界ブランド>
ところで『まるはら』の屋号は最近、欧米のレストランやシェフの間でもちょっとした話題になっています。
昨年イタリアで開催されたミラノ国際博覧会。
この時出展された『鮎魚醤(あゆぎょしょう)』は、現地イタリアの料理人からも大きな注目を集めました。
魚醤(ぎょしょう)と言うと秋田の『しょっつる(塩汁)』、奥能登の「いしる(魚汁))、香川の『いかなご醤油』が有名ですが、いずれも魚を塩で漬け込み発酵させることで生まれる調味料です。
魚醤は、その製法から独特の香りと塩分濃度の高いのが特徴ですが、実際はどうなのでしょうか。
店の奥に作られた味見スペースを見つけて、試しに様々なお醤油を味見してみました。
個性的な匂いが印象的な『鮭魚醤(さけぎょしょう)』は、イタリア・サルディニア島の郷土料理・ボッタルガの仕上げにぴったりな個性的な海の味。
匂いがまろやかな『肉醤(にくしょう)』は、ステーキ・ソースとしてそのまま使えるほど味に広がりがあります。
また世界の料理人を魅了する『鮎魚醤』は、意外にも塩分控えめ。ふんわり甘い味に丸みを感じました。
この『鮎魚醤』には、地元日田の清流・三隈(みくま)川の川沿いで養殖された地場産の鮎が使われているのだとか。
琥珀色の小さなボトルの中には、日本の自然と食文化が生んだ智恵がたくさん詰まっているのですね。
<涼やかな三隈川と日田温泉>
さてラムネ休憩のあとは、少し歩いて歴史地区にある日田祇園山鉾会館を訪ねてみました。
この日は日田祇園祭山鉾集合顔見世といい、夕方、各町の社に納められた山鉾が駅前まで流れ曳き(試運転)のある日。
日田祇園山鉾会館からも、高さ10mはある華やかな人形飾りの山鉾が出陣します。
日田の祇園祭りは良い意味で観光イベント化されておらず、地祭りにしかない熱気に包まれています。
地元の若衆らが祭り囃子に合わせ、呼吸を一つにして細い露地に繰り出し、見事な技で辻を曲がり、電線を避けて一列になって進んでゆきます。
何基もの山鉾を見送った後で、ようやく宿に戻り湯浴みを楽しむことにしました。
三隈川沿いに連なる日田の温泉宿の中でも、地元の老舗宿といえば亀山亭(きざんてい)。
前身が「料亭」ということもあり、春はひな会席、夏は鵜飼と屋形舟、冬は天領船で雪見酒など地元でも贔屓筋の多い温泉宿です。
最上階にある展望風呂は三隈川に面していて、夕食時に独り占めにしてゆったり入る温泉は格別。
小ぶりな露天湯は、この日には「夏こそ温泉!」と言いたくなるほど心地良い“ぬる湯”に整えられていました。
“ぬる湯”でまったり長湯すると、自律神経を整え、副交感神経が刺激されることで心もカラダも芯からリラックスすることは良く知られています。
日田温泉の泉質は低張性の弱アルカリ単純温泉ですが、この日の露天は完璧な“ぬる湯”。川風が吹き上げるのも心地よく、カラダの内側から疲れが溶けだしてゆくような体感でした。
温泉は、疲れている時ほどそのチカラを実感しやすいと言われていますが、日々の疲れは自分でも気付かないうちに少しずつ蓄積してしまいます。
水辺の旅では、温泉も含めて“水による癒し”や自然の恵みがもたらす豊かな食と暮らし文化が体感できます。
この夏のお出かけ小旅には、ぜひ水をキーワードにした旅先を選んでみてはいかがですか。
【大分県・日田市data】
JR博多駅からJR日田駅まで特急「ゆふ号」まはた「ゆふいんの森号」にて約1時間20分。
福岡空港から日田バスセンター(JR日田駅前)まで、高速バスにて約1時間30分※15分~60分間隔
◆日田市観光協会(JR日田駅・隣接)☎0973-22- 2036
◆日田市観光観光協会 公式HP http://www.oidehita.com/
<今月のおすすめ銘柄>
日田天領水(ひたてんりょうすい)
日本では珍しい、温泉地から全国規模で展開しているミネラルウォーターです。深井戸から汲み上げた水はクセがなく飲みやすい味です。日田温泉の泉質と共通するのは、炭酸水素やケイ素が大量に含まれていること。
(株)日田天領水の前身はウナギ等の養殖を主としていましたが、養殖に使用していた井戸水のうち、色・ツヤ・身入りなどウナギの生育状態が明らかに異なる井戸があることに気づいたオーナーが、現在の会社を立ち上げたのがはじまりです。水生生物の生育環境に良い水タイプであることは、起業時に実証済みのようです。
【水タイプ】
産地泉源:大分県日田市中ノ島町
湧水温度:未記載
水タイプ:無発泡
知覚ほか:無臭/pH 約8.3
ミネラル:ナトリウム2.2mg,カリウム0.84mg,カルシウム0.96mg,マグネシウム0.19mg,炭酸水素8mg↑,ケイ素8mg↑,塩化物0.98mg ※大分県薬剤師会での分析による(per.100ml)
【水ソムリエの飲み方レシピ】
今年は例年以上に気温の上昇が懸念されています。そこで今回は、熱中症対策にも有効な「経口補水液」を自作するためのレシピを紹介したいと思います。そのままでは飲みにくいと感じられる方は、レモン1/2個分の搾り汁を加えるのがオススメです。また効果的な飲み方としては、コップ1杯分を30分かけて飲むのが目安です。作った補水液は冷蔵庫(10℃以下)で保存し、作ったその日の内に飲みきりましょう。
経口補水液を手作りするとよく分かるのですが、市販のスポーツ飲料に比べ随分味が薄く感じられます。カラダに必要なもの以外一切入れずに作ってみると、日常的に口にしているドリンク類に含まれている糖分や塩分がいかに多いか、ということに気が付きます。
<材料>※飲みにくい時はレモン1/2個分の搾り汁を
・水・・・1リットル
・塩・・・小さじ1/2(3g)
・砂糖・・・大さじ4と1/2(40g)
<ショップ情報> AEON,コンビニ,インターネット・ショップなど