掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)
私がお答えします!
社会福祉法人聖母会聖母病院皮膚科部長
小林里実さん Satomi Kobayashi
掌蹠膿疱症、乾癬が専門分野。患者会の顧問医や相談医であり、掌蹠膿疱症の情報サイトを作成するなど、精力的に活動を展開している
相談
仕事でストレスが続いたあと、手のひらに水疱ができて治りません。人にうつしてしまわないか心配。どんな病気ですか?
答え
白いブツブツがみられる場合、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)の可能性があります。人にうつすことはありませんが、少しやっかいな病気です。
手のひらや足裏に水疱ができる皮膚疾患で、骨や関節の症状を伴うことも。
「掌蹠膿疱症」は、手のひらや足裏などに、たくさんの小さな水ぶくれ(膿疱)が繰り返しできる皮膚の病気です。
膿疱のでき始めはかゆみを伴うことが多く、しばらくするとかさぶたになり、はがれ落ちます。まわりの皮膚にも炎症が広がって赤くなりカサカサに。足裏にできると、厚くなった角層が歩くたびにひび割れるため、痛くて歩けないことも。10〜30%の割合で鎖骨や背骨などの骨関節炎を生じることもあり、そうなると激痛が走ります。
膿疱の中に菌やウイルスは入っていないので人に感染することはありませんが、見た目の印象が悪いので、人前で手が出せない、サンダルが履けない…などと悩んで病院を訪れる人が少なくありません。
原因はまだ解明されていない部分も多いのですが、日本人の場合、無症状の「扁桃(へんとう)炎」や「歯周炎」が関係していることが70~80%。なんと喉や口腔内の炎症がおもな原因という、少しやっかいな病気です。
体のどこかに慢性的な炎症があると、それが引き金となって体の別の部位に別の病気を引き起こすことがあります。これを「病巣感染」と呼びますが、掌蹠膿疱症はまさにその代表的な疾患なのです。
ほかに、喫煙、頑固な便秘や過敏性腸症候群などが関係している例もあり、いずれの場合も過度なストレスをきっかけに症状が現れると考えられています。
多発年齢は30代~60代が90%、女性が多く、ある年のデータでは日本の患者数は約13.6万人との報告が。
2020年にウェブサイト「掌蹠膿疱症ネット」が開設されたり、患者会「PPPコミュニティ」が発足するなど、近年、この病気への理解を深める活動が始まったばかりです。
診断がとても難しい病気なので、専門医を受診することが大切です。掌蹠膿疱症と診断されたら、歯科で歯の根元の炎症や歯周炎がないか、X線画像と歯周ポケット計測で検査します。あれば無症状でも治療する必要があります。副鼻腔炎があれば耳鼻科で、甲状腺炎や糖尿病が見つかれば内科で治療を。皮膚科―歯科―耳鼻科―内科と、科をまたいだ連携が重要になります。
皮膚症状にはステロイド軟膏や活性ビタミンD3軟膏などの外用薬、重症例には注射薬があります。
患者本人は、喫煙者ならまず禁煙。日頃から歯科のチェックをし、腸内環境を整え、過度なストレスを避けるよう心がけることが大事です。
自分で行う対策
- ●禁煙。
- ●ストレスをためない。
- ●歯科の定期的なチェック。
- ●腸内環境を整える(乳酸菌の摂取は避ける)。
病院で行う治療法
- ●皮膚科を中心に、耳鼻咽喉科、歯科、内科と連携をとり、発症にかかわる要因を除去する。
- ●薬物療法(あくまで対症療法として)。
イラスト/macco 取材・原文/山村浩子
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