【お話を伺った方】
大手食品メーカー勤務を経て2003年フリーに。全国での講演活動、メニュー開発、栄養コラム執筆、NHKをはじめ健康番組出演など幅広く活動。料理家としてのキャリアは30 年以上。これまで指導した生徒は7万人以上に及ぶ。『目からウロコのおいしい減塩 乳和食』(主婦の友社)、『はじめよう乳和食』(日本実業出版社)ほか著書多数。栄養と作りやすさに配慮したオリジナルミルクレシピにファンも多く、メディアで話題の乳和食の開発者でもある。
ダイエット中も、牛乳のサポートでスイーツOK!?
小山:こんにちは。管理栄養士で、ミルク料理研究家の小山浩子です。
今日はダイエットを頑張っているギリコさんに、ちょっと甘いスイーツ系を楽しんでいただこうと思っています。
ギリコ:スイーツ? それはもう、ぜひ食べたい!
ですが…先生、私ダイエットを始めてから、スイーツに関してはお米やパンなどの主食同様、まずは「我慢」でここまで結果を出してきました。だからスイーツを楽しむ、なんて怖くてできません。
小山:いえ、ギリコさん、ダイエットに禁物なのが「無理をすること」。ダイエットは細く長く…。継続することがいちばん大切なので、あまり「我慢しすぎないこと」「適度なガス抜き」も大切ですよ。
ギリコ:確かに、仕事ですごく疲れたときなんかにプツッと我慢の糸が切れて、「もういいやー、今日は食べちゃえ、お酒も飲んじゃえ」ってなったことはありました。その結果、自己嫌悪に襲われ、後悔するのですが。
小山:そうでしょう? でも大丈夫。今日、ご紹介するのは罪悪感なく食べられて、甘いモノ好きさんも満足できる、とってもおいしいスイーツ系です。さぁ、一緒に作りましょう!
牛乳と甘酒を混ぜ合わせるだけ! 牛乳が血糖値上昇を抑えます
ギリコ:自分で作るとは…。先生、私は毎日の食事もできるだけ簡単なものにしたいと思うくらいなので、スイーツを作るなんてとてもとても…。無理です~。
小山:大丈夫! そんなギリコさんにも簡単に作れるのが「甘酒いちごミルク」。またの名を「混ぜるだけスイーツ」です。
はい、材料はこちらです。
<材料(1人分)>
A2牛乳(*)100ml *A2牛乳とは「消化がよくて、お腹に優しい」など、お腹がゴロゴロしずらいことが特徴の今、注目の牛乳(詳細は後述)。
甘酒 100ml ※濃縮タイプの甘酒を使用する場合は、A2牛乳を150ml加えてください。
いちご 5粒 (輪切りにする)
オートミール 小さじ1
<作り方>
グラスに牛乳、甘酒、いちごを合わせ、オートミールをかける。
小山:ほら、もう完成です。
〔上の写真:ギリコが家で作ってみた「甘酒いちごミルク」。今回、甘酒は家に常備している金沢の老舗メーカーの「玄米甘酒」を使用しましたが(グラスの底のほうに沈んでいる茶色い部分が甘酒です)、「スーパーに売っている甘酒で十分おいしいですよ」と先生〕
ギリコ:確かに簡単…それにこのビジュアル!
おしゃれですねぇ~。これだけで気分が上がります。
でもいちご&甘酒…これっていちごの果糖と米麹の糖質というダブルの糖ではないですか。
本当にダイエット中も食べていいんでしょうか?
小山:確かに、甘いモノの糖分は血糖値を急激に上昇させてしまい、それが肥満の原因になります。
糖を大量に摂取することで、血液中にあふれてしまったブドウ糖は、まずは肝臓と筋肉に貯蔵されますが、それでも貯蔵できなかったブドウ糖は、体脂肪として蓄積されてしまいますからね。ご心配なのはよくわかります。
ギリコ:げ! やっぱり甘いはモノはNGではないですか~。
もう食べちゃいましたよ(涙)。
小山:そこで牛乳の出番です。
牛乳はGI値(食品に含まれる糖質の吸収度合いを示す値。血糖値の上がりやすさを示す値)の低い食品。
GI値の高い甘酒と一緒にとることで、甘酒に含まれる血糖値の急上昇を抑えてくれる働きがあります。
これが、肥満の予防につながる秘密です。
また、いちごでビタミンCを補完することで肌のコラーゲン生成にも役立ちます。
ギリコ:そういうことか!
以前の私は「牛乳は太る」というイメージがあり、ダイエットを始めてからは避けてきましたが、実は違うということを、先日、先生から教わったのでした。
小山:この「牛乳を組み合わせてGI値を下げる」という作戦は、大福やクッキーなど、他の甘いモノを食べるときにも応用できますよ。
ギリコ:大福! 私が最も避けてきたスイーツです。でも「スイーツのお供には牛乳!」でやればいいんですね。
お腹がゴロゴロしにくい「A2ミルク」は、生乳100%の成分無調整の牛乳
ギリコ:あれ? 先生、この牛乳のパッケージ、初めて見ました。珍しいですね。
小山:これ、「A2ミルク」です。
「消化がよくて、お腹に優しい」など、健康上のメリットが高いということで、今、注目の牛乳なんです。
オーストラリアやニュージーランドなど海外ではかなり普及しているようです。
牛乳を飲むと、お腹がゴロゴロするという乳糖不耐症の方もいますよね。
これは牛乳に含まれるβ‐カゼインが原因といわれています。
β‐カゼインは加熱することで、お腹をゴロゴロさせる酵素の働きが弱まるといわれていますが、今日は非加熱でとるので、この牛乳を選びました。
ギリコ: A2って、何やら化学記号のようなネーミングですが、化学的な新しい成分でも何か添加されているのでしょうか?
小山:いえいえ。A2ミルクは、乳牛から搾った生乳100%の、成分無調整牛乳です。安心してくださいね。
実は、牛乳に含まれるβ‐カゼインというタンパク質にはA1とA2という2種類があり、乳にどちらのβ‐カゼインが含まれるかは、その牛の持っている遺伝子で決まるそうです。
「乳糖不耐症」と呼ばれる人たちの「お腹がゴロゴロする原因」になっているのはA1のほうで、通常市販されている牛乳にはA1、A2の両方が含まれているのですが、このA2ミルクは、A2のみを持つ乳牛から絞った生乳を使用しています。
ギリコ:そういう乳牛がいることすら知りませんでした。
それに、カゼインにも種類があるなんていうのも今日初めて聞きました。
小山:もともと日本ではすべての牛がA2だったそうですが、今の日本の乳牛でA2のみを持つ乳牛は3割程度なのだそうです。
この「北海道A2別海牛乳」は一頭一頭ゲノム検査を行って、きちんと個体管理された牧場でA2のみを持つ乳牛から搾っているとのことですよ。
ギリコ:このA2牛乳、風味がマイルドで、いわゆる乳臭さがないですね。
小山:そうなんです。甘酒の甘味とよく合いますよね。
麹から生まれる優しい甘味の甘酒で腸活も
小山:甘酒には糖質が多く含まれていますが、白砂糖のように「ただ甘いだけ」ではなく糖質の一種であるオリゴ糖が腸内の善玉菌であるビフィズス菌の餌になり、腸内環境が改善されることも魅力です。
ギリコ:甘酒は「腸活にいい」、というのはよく聞きます。
小山:そのとおりです。腸内環境を整えることで便秘も解消されますからね。
ギリコ:しかも今はスーパーに置いてあることが多いので、買いやすい!
甘味料の代わりにぜひ使いたいです。
小山:また、タンパク質を合成する成分であるアミノ酸も豊富です。
牛乳と組み合わせれば植物性と動物性、両方の必須アミノ酸を補完しあうことになります。
甘酒のオリゴ糖と牛乳の乳糖を一緒にとることで、さらに腸活力がアップします。
ギリコ:牛乳×甘酒の組み合わせ、すごいです!
腸内環境が乱れていると、不要な脂肪や老廃物を排出する力が落ちたり、摂取した栄養がきちんと吸収されなかったりするので、ダイエットや美肌の大敵と言われますよね。
それに更年期に入ってからお通じも悪くなってしまい、若い頃より腸内環境が乱れているのではと気になっていたんです。
だから甘いモノを楽しみながら、腸活もできるなんてうれしいです!
小山:ここでひとつ大事なことがあります。
米麹から造った甘酒の中にも、砂糖を加えているものがあるので要注意。米麹100%の甘酒を選んでくださいね。
ギリコ:わかりました、仕上げにはオートミール…ですね。
一時期すごいブームになったとき、買ったはいいけれど、すぐ飽きてしまい、そのまま放置しているオートミールがあるので、さっそく使います!
小山:オートミールも腸活に有効な食物繊維が豊富なので、ぜひ活用してくださいね。
ギリコ:あと、今回、いちごをここで選んだのはなぜでしょう。
小山:いちごのビタミンCとオートミールの食物繊維はどちらも牛乳にあまり含まれていない栄養素。またトッピング感覚で簡単に補えるので、いちごを使いました。
そうそう、ビタミンCもビタミンB群も、水溶性ビタミンなので、いちごは切って洗うと切り口から流れ出てしまいます。
洗うときはヘタだけ取って、切る前に洗いましょう。
ギリコ:う~ん、いちごかぁ。
うちは家族の人数が少ないのでいちご1パックは量が多く、めったに買わなくなってしまったんです。
いちご以外で冷蔵庫に余っていて、何か入れられそうなものはありませんか?
小山:きたー! ギリコさんお得意の「冷蔵庫で余っているものアレンジ」。
そうですよね。それにいちごは旬以外「どこの家庭でも、いつもある」というものでもないし。
冷凍のミックスベリーなどのフルーツもよいですが、それもなければ、「チューブ入りのすりおろししょうが」がおすすめです。
食物繊維もとれますから、いちごの代用になります。
ギリコ:すりおろしのしょうがをプラスするとは!
いちごとはまたちょっと違った、大人のスイーツになりそうです。
〔上の写真:牛乳×甘酒×しょうがは、いちごバージョンとはまた違ったおいしさ! 少し温めるとさらにおいしいです〕
味噌汁に牛乳を加えて減塩、血圧対策にも!
ギリコ:この連載では、先生が考案なさっている「牛乳を水の代わりに使う」という「ミル活料理法」で、ダイエットをサポートしてくれるいろいろなメニューを教えていただきましたが、そのほか、毎日の食事で実践できる「ミル活料理」はありますか?
小山:普段の食事に牛乳をプラスすることで、タンパク質やカルシウムの摂取量を増やしたり、血糖値の上昇を抑えたり、というのがミル活料理法のポイント。
旨味調味料の感覚で、いろいろなものに「ちょい足し」していただけたらと思います。
例えば、お味噌汁にプラスするというのは、とても簡単なのでおすすめ。
毎日の「ミル活」が無理なく実践できます。
牛乳の旨味のおかげで、味噌を使う量を減らせるので減塩にもなるんです!
50歳から急に高くなる血圧対策にもぜひ。
「1人分塩分1.5g」の即席ミルク味噌汁
<材料(2人分)>
味噌 大さじ1
牛乳 大さじ2
顆粒和風だし 小さじ2/3
焼き麩 10個
湯 350ml
作り方
500mlの耐熱タイプの計量カップに味噌、牛乳、顆粒和風だしを入れて混ぜておく。ここに麩を入れ、湯を注ぎ混ぜる。お椀に注ぎ分ける。
具材には、手軽に使えて、タンパク質もとれる焼き麩がおすすめですよ。
〔取材時、先生のキッチンにあったのがこのセブンプレミアムのやき麩(税込み170円)。使いやすいミニサイズのお麩がたくさん詰まっていて、ギリコも即購入。袋の裏面を読んでみたら、「ハンバーグを作るときにパン粉の代わりに使うと、ふっくらに」と書いてありました〕
ギリコ:乾燥わかめとか、もみのり、あとずっとキッチンの隅に残ったままのとろろこんぶなんかも具に使えそうですね。
包丁もお鍋も使わずに作れるなんて、うれしい!
もう最近家事がおっくうで、特に料理が苦行でしかない私にぴったりです。
それにしてもダイエット、美肌、骨活、腸活、脳活…どれも私たちが気になる健康と美容の問題ですが、このすべてに牛乳とミルクがよい作用をすることを教わり、牛乳を見る目が変わりました。
しかも、牛乳にもプレミルのように栄養を強化した商品や、A2のようにお腹に優しい牛乳などがあるなんてことも今回の取材で初めて知りました。
特にセブン‐イレブンの「脂質70%オフ 低脂肪牛乳」は、ダイエット中の私にぴったり。
私にとって、今まで牛乳はスーパーで買うもの。コンビニで買うことはなかったので、この商品の存在すら気づいていませんでしたが、これからはどんどん活用します!
〔ダイエット中の方におすすめセブン‐イレブンで手に入る「脂質70%オフ 低脂肪牛乳」〕
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ここからはギリコによるおまけです♪
取材が終わり帰ろうとしていたとき、先生から「そうそう、プレミルに紅茶のティーバッグを入れて、そのまま冷蔵庫に置いておくだけでおいしいミルクティー〝プレミルクティー〟ができるのよ」と聞き、家でやってみたのですが…。
〔上の写真:〝プレミルクティー〟はプレミルにティーバッグを投入し、冷蔵庫に置いておくだけ!私は、いつもティーバックのタグと糸をハサミで切り、中にティーバッグを押し込んいますが、写真の場合、それだとわかりにくいので、上の写真はタグと糸がついている状態で2包を入れて撮りました。だいたい6包くらい投入することが多いですが、使うティーバッグの量はお好みで〕
信じられないくらいおいしかった!
「紅茶は茶葉で丁寧に淹れるのがいちばんおいしい」という長年の思い込みがみごとに打ち砕かれました。
ちなみに、使っているのはスーパーで購入した一箱20包入りで350円くらいの、ちょっと手頃な値段のアールグレイのティーバッグですが、大手スーパーのプライベートブランドのものなら、もっとお手頃なものがあるかと思います。ぜひトライしてみてください!
〔上の写真:朝の〝プレミルクティー〟タイム。朝食後、ダイエット中のストレスをやわらげるために、スイーツをつまむのが日課なのですが、そのとき一緒にプレミルクティーを飲むと満足感が高くなるので、食べるスイーツの量がちょっと減りました。その点でもダイエットに役立っています。毎日何度も使っているこのカップは30年近く前に買った、大倉陶苑のもの。口にあたったときの感触やカップの薄さが私にはちょうどいいので、コーヒー、紅茶だけではなく日本茶、麦茶、冷たいドリンクなど、なんでもこのカップで飲んでいます〕
取材・文/瀬戸由美子