カチカチに固まった筋肉ではリンパは流れません
一日デスクワークなどで動かない、もしくはずっと立ちっぱなしでいると、夕方になって足がむくんだ…という経験はありませんか? これはリンパの流れの滞りによるもの。
「リンパ管は静脈に沿って全身に張り巡らされており、その中の液体をリンパ液といいます。その働きは、老廃物を集めて運ぶ下水道に似ています。そのリンパ管の途中にあるリンパ節は外部からの細菌やウィルスなどの病原体や老廃物を浄化する浄水場のような役割を果たしています。
このリンパ管には、血液を送り出す心臓のようなポンプ機能がなく、末端の毛細リンパは自動的に流れてはくれません※。それを担うのが筋肉の動きです。
※太いリンパ管は平滑筋の収縮で微弱ながら自動的に流れます。
よく『リンパを流す』という言い方をしますが、リンパは本来、日常生活で体を動かしてさえいれば、自然に流れるものです※。ですから、リンパの流れをスムーズにするには、『リンパが流れる体を取り戻す』ことが重要です」(木村友泉さん)
※例外として、がん転移などでリンパ節を切除している場合は自然に流れないので、リンパマッサージやリンパドレナージなどの外力が必要になります。
※詳しくは第1回参照
では、リンパが自然に流れる体にするには、どんなことをしたらいいのでしょうか?
「それは筋肉を動かすことです。とはいえ、普段運動をしていない人がいきなり激しい運動をしたり、グリグリと強いマッサージをすればいいというものではありません。重要なのは、まずは大きな筋肉を緩めて、筋肉の柔軟性や筋膜の滑走性を高めることです。
特に最初に行いたいのが、横隔膜を緩めることです!
上半身と下半身を隔てている横隔膜、実はこれも筋肉です。胸郭の下部にありドーム状をしています。これが上下することで、胸腔内の圧力が変化して、肺が膨らんだり縮んだりして呼吸をしています。
特に毎日、デスクワークなどで前かがみの姿勢をしていると、呼吸も浅くなり、横隔膜の動きも悪くなっています。まずはここを柔軟にすることで、深い呼吸をして酸素を取り込みやすくします」
下半身を揺すると、その振動で横隔膜が緩む
横隔膜を緩める…と聞いても、どうやって? と思ってしまいます。その方法は、太ももと股関節を片脚ずつユラユラさせて緩めること! ※慣れてきたら両脚同時に行ってもOK。
【1】
横になり、右手を右股関節に、左手を右肋骨の下あたりに当てます。膝から股関節のあたりを意識して、左右にユラユラと揺らします。
「股関節下から横隔膜をつなぐように大腰筋が走っています。そのため、太ももから股関節をユラユラ動かすことで、その振動が横隔膜まで伝わり、効果的に緩めることができます。右股関節と右肋骨の下あたりに手を当てるのは、その部分の筋肉に意識を向けるためです」
【2】
右脚の足先→ふくらはぎ→太もも→お尻→腰と、下から順番にギューッと絞り上げるようなイメージで力を入れて4秒キープ。次に一気に脱力します。
【3】
右足のかかとを床につけたまま膝を軽く曲げて、続いてストンと落として、骨に適度な振動を与えます。これにより横隔膜にも振動が伝わります。下半身をリラックスした状態で行うのがポイント。
アフターチェック!
1~3のケアをひと通り右脚だけやったあと、脚を上げたり、膝を胸に引き寄せたりしてみてください。行ったほうの脚はポカポカ温かくなったり、軽くなって動きやすくなっていませんか? あまり感じない場合は1~3を何回か繰り返してください。軽く感じたら、左脚を行います。
※腰痛のある人は無理をしないでください。
「足・脚が軽く感じたり、横隔膜の位置を軽く押してみて柔らかくなって肋骨の下に手が入りやすくなっていたらOK。一日の体の緊張をほぐすケアとして、または体を動かす前の準備運動として行うといいでしょう」
【教えていただいた方】
LHJ(Life &Health Joy)代表。薬剤師として勤務するかたわら、リンパケアのインストラクターに。体に負担がなく、効果的な美容・健康法であるリンパケアの普及に取り組んでいる。テレビ、ラジオ、講演などで活躍。著書に『60歳からのリンパケア入門』(宝島社)、『1日10分でどんどん若返る! 一生使える若返りリンパケア』(三空出版)など多数。
撮影/フルフォード海 イラスト/内藤しなこ 取材・文/山村浩子