筋力がないとリンパは流れない
パソコンやスマホが手放せない現在、圧倒的な運動不足を実感している人も多いのではないでしょうか?
「リンパは老廃物を集めて運ぶ下水道に似た働きをしていますが、このリンパ管には血液の流れを押し出す心臓のようなポンプ機能がありません。その働きを担うのが筋肉の動きなので、運動不足はリンパの滞りに直結します。
よく『リンパを流す』という言い方をしますが、『リンパが流れる体を取り戻す』ことが重要です」(木村友泉さん)
※詳しくは第1回参照。
リンパが流れる体を取り戻すために、まず行いたいのが筋肉や関節、筋膜を緩めることです。
※横隔膜を緩める方法は第2回、股関節を緩める方法は第3回、体幹を鍛える方法は第4回、筋膜を緩める方法は第5回を参照。
「緩めたあとには、リンパを押し出すポンプ役となる、筋肉を育てることが重要。私はこれを筋育と呼んでリンパケアに組み込んでいます。特に大切なのが、体を支える下半身の筋肉です。下半身というと、股関節から下の脚・足の部分だと思いがちですが、私の定義では、横隔膜から下、腹部や腰部、臀部も含みます。
ここがしっかりしていないと、体を支えられないので不安定になり、転倒のリスクが高まります。体を正しく動かせないので、リンパもスムーズに流れてはくれません」
あれもこれもやるとなると面倒になって続きませんが、最低これだけ日々の習慣にするといい運動が、椅子スクワットと四股エクササイズです。
効率よく鍛えられるエクササイズを毎日の習慣に!
このふたつのエクササイズはシンプルな動きですが、股関節を大きく動かすことで、太ももの前と後ろ、ふくらはぎといった脚部から、腹部や腰部、臀部の筋肉、骨盤底筋まで広い範囲を鍛えることができる、とても効率のいいエクササイズです。
椅子スクワット
椅子の背に手を置いて体を支え、片脚ずつ行うスクワットです。この方法だと上半身の姿勢を正しく維持しやすいので効果抜群。通常のスクワットよりも簡単にできるので、筋トレ初心者におすすめです。ぜひ1日1回の習慣にしてください。
【1】
椅子の背に軽く手を添えて立ち、背すじを真っすぐに正し、視線は前を見ます。
※写真の椅子のキャスターは動かないようにロックしています。
【2】
上半身はそのままに、両足を前後に大きく開きます。
【3】
上半身をそのまま保ち、息を吐きながら、前に出した脚の膝が90度になるまでゆっくり曲げて腰を落とします。後ろの脚の膝は曲がってもかまいません。この状態で5秒キープ。
このとき、前に出した脚の太ももの前と後ろ、ふくらはぎ、後ろの脚の太ももの前、腹筋、背筋、お尻の筋肉に効いているのを感じることが大切です。
そしてゆっくり元に戻ります。これを2~3回繰り返し、反対の脚も同様に行います。これを1セットとして、左右交互に3セットを目安に。
【これはNG!】
上半身が前に傾いたり猫背では、腹部や背中の筋肉に効きません。上体はそのままで、前に出した脚を90度になるまで深く沈み込むのがポイントです。
四股エクササイズ
両足を左右に大きく開く、相撲でおなじみの四股のポーズです。これは太ももの内側と外側をはじめ、腹筋、背筋、お尻の筋肉、腟を締めるようにすることで骨盤底筋まで、下半身の筋肉をバランスよく鍛えることができます。
【1】
両足を左右に大きく開いて、足先を外側45度くらいに向けて立ちます。上半身は真っすぐ伸ばします。
【2】
ゆっくり息を吐きながら、左右の膝を曲げて、太ももが床と平行になるくらいまで腰を落とします。両ひじは両膝のあたりに置いて、顔は前に向けます。このとき、上体は前に傾きますが、背すじは真っすぐに伸ばしたまま、膝と足先が同じ方向に向いていることが大切です。この状態で息を止めずに10秒キープして、ゆっくり元に戻ります。【1】→【2】を3回繰り返します。
これを最低でも1日1回。座り仕事で脚・足がだるくなったとき、夜のリラックスタイムなどに行って、こまめに下半身のむくみをリセットするようにしましょう。
【教えていただいた方】
LHJ(Life &Health Joy)代表。薬剤師として勤務するかたわら、リンパケアのインストラクターに。体に負担がなく、効果的な美容・健康法であるリンパケアの普及に取り組んでいる。テレビ、ラジオ、講演などで活躍。著書に『60歳からのリンパケア入門』(宝島社)、『1日10分でどんどん若返る! 一生使える若返りリンパケア』(三空出版)など多数。
撮影/フルフォード海 取材・文/山村浩子