骨粗しょう症を防ぐためにまずとりたいのは、骨をつくる材料であるカルシウム
更年期以降は、女性ホルモンのエストロゲンの減少に伴って、骨粗しょう症になりやすくなります。
予防するために心がけたいのが、毎日の食事で、骨を丈夫にするために必要な栄養素をとること。
具体的にどんな栄養素をとればよいのか、整形外科医の伊藤薫子先生に伺いました。
「まずは、ご存じのように、カルシウムです。
カルシウムは骨をつくる材料になり、不足すると骨が弱くなってしまうので、しっかり補うことが大切です。
カルシウムの摂取量は、厚生労働省によると1日に650mg(15~74歳女性)が推奨されています。
ただ、この量は、ほとんどの日本人はとれています。
骨密度が下がる更年期以降の人は、150mgプラスして、1日に800mgを目指すとよいでしょう。
カルシウムは、牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品や、骨ごと食べられる煮干しなどの小魚、干しエビ、豆腐や納豆などの大豆製品、小松菜などの野菜、昆布などの海藻に多く含まれています。
例えば、コップ1杯(200ml)の牛乳で、220mgのカルシウムがとれます。
カルシウムが含まれる食品を、意識して食事に取り入れましょう」(伊藤薫子先生)
カルシウムの吸収を高めるビタミンDや、マグネシウム、ビタミンKも一緒にとるのがおすすめ
カルシウムの吸収を高めるための栄養素も一緒にとることが、大事なポイントなのだそう。
「カルシウムは問題なくとれていても、しっかり吸収できていない場合があります。
実は、カルシウムの腸での吸収率は3割程度といわれています。
そこで一緒にとりたいのが、カルシウムの吸収率を高めて、骨にカルシウムを定着させてくれるビタミンDです。
『日本人の食事摂取基準2025年版』では、成人のビタミンDの摂取目安量は1日当たり9.0μg(360IU)。
ただ、これは、日常的に日光に当たっているという想定のもとで決められた数値といわれていて、屋内で過ごす時間が長い人や、紫外線対策をしっかりしている人の場合は、この量では足りないと考えられます。
ビタミンD研究の第一人者であるアメリカのホリック博士は、血中ビタミンD濃度を40〜60ng/mLに保つことが、健康を守るための理想的な状態とし、そのために必要な1日の摂取目安量は、50〜75µg(2000〜3000IU)と提唱しています。
ですから、これくらいを目安にしてもよいと思います。
ビタミンDは、食品では、鮭やサバなどの魚や、レバー、干ししいたけ、きくらげ、ウナギなどに多く含まれています。
また、サプリメントや薬でとることもできます。
サプリメントや薬は、医師に相談したうえでとるのがおすすめです」
そのほかにとるとよいのは、マグネシウムとビタミンK。
「体内のマグネシウムの約6割は、骨に蓄えられ、骨の弾力性を高める役割を担っています。
残る4割は、タンパク質の合成や、神経伝達、心肺機能の維持、筋肉の収縮などの働きを担います。
マグネシウムは骨を形成する骨芽細胞に働きかけ、骨に入るカルシウムの量を調節するので、不足するとカルシウムが骨の形成に使われにくくなってしまいます。
マグネシウムは、骨密度の増加や骨折を防ぐ効果があり、カルシウムとマグネシウムを2:1の割合でとるとよいと言われています。
マグネシウムは、昆布や乾燥わかめ、干しひじき、アサリ、干しエビ、干ししいたけ、きくらげ、切り干し大根、ほうれん草などに多く含まれます。
1日に290mgを目安にとるのがおすすめです。
そして、ビタミンKは、骨を再生するときに活躍するオステオカルシンというホルモンの働きを活性化し、カルシウムの骨への沈着を促して流出を防ぐ働きがあります。
コラーゲンの生成を促し、骨質を改善するので、骨粗しょう症の治療にも用いられています。
成人女性の1日の摂取目安量は、150μgですが、骨粗しょう症の人は、1日に250〜300μgはとるとよいと言われています。
ビタミンKは、ひきわり納豆に特に多く含まれています。
そのほか、パセリ、青じそ、ブロッコリー、モロヘイヤ、小松菜、ほうれん草、わかめ、海苔などにも多く含まれます」
カルシウムの吸収を高めるために、腸の状態を整える栄養素をとるとさらに効果的
カルシウムの吸収を高めるためには、“しっかりと消化吸収できる腸”に整えるための栄養素もとるとよいそうです。
「そのひとつが亜鉛です。
亜鉛は骨芽細胞の働きを活発にします。
亜鉛が不足すると骨量が低下して骨粗しょう症の引き金になります。
また、亜鉛が不足すると腸管のバリア機能が損なわれることで、毒素や病原菌が血液中にあふれてしまう“リーキーガット症候群”になって炎症やアレルギーが起き、丈夫な骨がつくれなくなってしまいます。
ですから亜鉛も意識してとるのがおすすめ。
亜鉛の1日の推奨摂取量は成人女性で8mg。
亜鉛は、牡蠣やシジミ、帆立貝、しらす干し、サバ、イワシなどの魚介類、海藻、アーモンドやカシューナッツ、かぼちゃの種などの種実類、チーズなどの乳製品、卵、納豆や木綿豆腐などの大豆製品、牛赤身肉、鶏レバーなどの肉類、ココアなどに多く含まれています」
「そしてもうひとつが、ビタミンA。
ビタミンAのレチノイン酸は、腸管のバリア機能を向上させ、小腸からの消化吸収率を高めます。
また、植物に含まれるβ-カロテンやβ-クリプトキサンチンなどは、小腸でビタミンAに置き換わり、骨密度を高めて骨粗しょう症を防ぐ働きもあります。
ビタミンAの推奨摂取量は、成人女性で1日に700μg。
ビタミンAは、レバー、ウナギ、卵黄、にんじん、かぼちゃなどのほか、モロヘイヤ、ほうれん草などの葉物野菜に豊富です」
記事が続きます女性ホルモンの減少をカバーするために、大豆製品をとるのもおすすめ
「豆腐や納豆、味噌などの大豆製品には、良質な植物性タンパク質が含まれているうえ、大豆イソフラボンもとることができます。
大豆イソフラボンは、腸内でエクオールという成分に変わり、女性ホルモンのエストロゲンと似た働きをするので、骨の再生にも役立ちます。
過剰にとりすぎないよう、1日70〜75mgを目安にとりましょう。
ただし、とった大豆イソフラボンを腸内でエクオールに変換できる腸内細菌を持っているのは、日本女性の約半分といわれています。
エクオールはサプリメントでとることもできるので、それを利用するのもよいと思います」
いかがでしょうか?
これらが、骨のためにとるとよい栄養素です。
骨粗しょう症を防ぐために、今のうちから毎日の食事で意識して取り入れましょう。
【教えていただいた方】

いとう・かおるこ●「女性のための整形外科 かおるこHappyクリニック」院長。日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医。東京女子医科大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部整形外科学教室へ入局。関連病院勤務、アメリカ留学を経て、慶應義塾大学病院骨粗しょう症外来を担当。2021年7月、東京・帝国ホテル内に「女性のための整形外科 かおるこHappyクリニック」を開院。「いくつになっても背筋を伸ばしてハイヒール」をモットーに、女性一人一人の骨と関節の悩みに寄り添う診療に定評がある。院長が伴走するオンライン講座「4カ月の骨活プログラム」も全国から受講されている。
写真/Shutterstock 取材・文/和田美穂
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