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「頑張りすぎ」のあとが危ない!更年期世代のうつ&落ち込みは、どう防ぐ?

交感神経と副交感神経からなる自律神経。私たちの体は、このふたつがシーソーのようにバランスをとりながら調整を図っています。「しかし、そのバランスがくずれてしまうのが更年期です」と、往診鍼灸師の森田遼介さん。更年期との関係や仕組み、簡単なセルフケアを知っておくだけでも、うつや落ち込みは予防することができる!というお話です。

自律神経のバランスがとれている状態とは、日中の活動時には交感神経がやや優位になり、活発に動ける状態に。一方、休息時や睡眠時には副交感神経がやや優位となり、体がリラックスして回復を図っています。

 

「しかし更年期の時期は、このシーソーのバランスがくずれ、うつや落ち込み、無気力感に襲われてしまう人がいます。これは、副交感神経が強く働きすぎている状態、とも言い換えることができます」と、森田さん。いくらリラックスを司る副交感神経とはいえ、「強くなりすぎもよくない」ということを知らない人は多そうです。

 

「そうなんです。問題になるのは、交感神経と副交感神経の“振り幅”が大きい場合。交感神経、いわばアクセルのほうを踏み続けた状態が長期間続くと…。体力や自律神経がいずれ限界を迎え、体は、“これ以上は無理!”と判断し、今度は大きくブレーキを踏むような形で、活動を停止してしまいます。これが落ち込みや無気力感、思考力の低下として現れるのです」

 

真面目な「頑張り屋さん」ほど要注意

 

そして、更年期の時期に特に注意が必要なのは、「真面目で、責任感が強い性格の人」だそう。

 

「不調を抱えながらも、仕事や家事、子どもの習い事の送迎などをこなし続け、休むべき夜の時間も忙しい生活を送っている人は、私の患者さんにも大勢います。OurAge世代の人の場合では、子どもの大学進学や就職などのタイミングで子育てから解放され、急に空虚感を感じやすくなるケースも多いです」

 

精神不調の治療も得意とする森田さん。そんなOurAge世代の中で、うつ病の心配があるのは、子どもの自立のタイミングに、趣味がない人、と言います。

 

「自律神経は生活の大きな変化のときに乱れやすいため、長期間アクセルを踏み続けていた状態から突然減速すると、心が深く落ち込む危険性が高まります。できれば子育てが一段落する時期に備えて、少しずつでも自分自身の趣味、新しい時間の過ごし方を模索してみましょう」

 

人生設計を立てながらも、うつ&落ち込みを予防する具体策も知りたいところ。そこで森田さんには今回も、今日からできる、超簡単セルフケアを教えてもらいました。

 

【簡単セルフケア①】
気持ちの乱れを整えるツボを押す&温める

ツボ「神門」

 

心経(心に属するツボを結んだライン)の中で、「神門(しんもん)」というツボが手首にあります。場所は、手首の内側、横ジワの上のラインにある小指側の骨(豆状骨)を探してください。その内側の部分を指圧やお灸で、気持ちがよいと感じる強さで刺激。不安や焦燥感、不眠、混乱、感情が不安定なときに効果が。

 

「神門のツボを直接押すときは、3回を目安に。ツボを探すのが難しい人は、手首にアンクルウォーマーをして、全体を温めるのもおすすめです。私自身も、寒い時季には手首にアンクルウォーマーを装着するようにしています」

 

 

【簡単セルフケア②】
メンタル不調に活躍する「バナナ」を食べる

バナナのトリプトファンをとる

 

 

精神の安定に重要なセロトニン(幸せホルモン)を作るための材料であるトリプトファンは、体内で生成できないため、食事から摂取する必要があります。トリプトファンを含むバナナには、「痰湿(たんしつ)」といって、体にたまったネバネバした老廃物を除去する働きも。

 

「さらに、バナナに含まれるマグネシウムは、ヨーグルトに含まれるカルシウムの吸収や働きを助けます。組み合わせて食べることで、骨形成の促進、骨粗しょう症を予防する効果も期待できます。ただし、バナナは体を冷やす食べ物でもあるので、温かいものを食べたあと、あるいは体温の高い15時から夕方頃に食べるようにしましょう」

 

情報を知り、トリプトファンなどのセロトニンの材料を意識的に食べるのはいいこと。でも、肝心の胃腸の働きが弱っていては、消化吸収ができないので、元も子もありません! 便秘や下痢、胃痛、食欲不振、口内炎や口角炎が出ている人は、胃腸が疲れているサインだそう。

 

「そのほかにも、唇の色が青白い、口まわりに吹き出物が出やすい、みぞおちを押すと不快感がある、体がむくみやすい、食欲が異常に旺盛である、すねの筋肉が張りやすい…といった症状も、胃腸の働きが低下している可能性が。鍼灸治療では、胃腸の働きをサポートし、内臓のバランスを整える効果も期待できます。食事の改善だけでは効果を感じられない、落ち込みやすい、気分が晴れないという自覚がある人は、一度鍼灸治療を試しながら、食生活を見直してみてください」

 

心と関連する五行・五臓の働きとは?

 

最後に、メンタルの不調と体の関係についても、東洋医学の考え方を森田さんから教わりました。下のイラストに注目してください。

五臓五行

 

五行(木・火・土・金・水)をあらゆるものに当てはめながら治療をしていくのが東洋医療。
「その中でも、それぞれの五行に対応した五臓(肝・心・脾・肺・腎)のバランスを中心に治療をしていきます。精神面は、“心”(イラスト内の「火」の部分)と深く関係があります。神門というツボもご紹介しましたが、心は神(しん)を宿すとされ、思考や感情、意識、記憶などの機能を指します」

 

つまり、「心」が健全であれば精神的に落ち込みにくく、感情は安定して、思考や判断も明確になるそう。
「イラストにある矢印は、次のふたつの相互作用によって、全体の調和が保たれていることを表しています」

 

① 相生関係(補う働き):

例えば、「肝(木)」が「心(火)」を補うことで精神の健康が保たれます。

② 相剋関係(抑える働き):

その一方で、「肝(木)」が「脾(土)」を抑えることで、過剰な頑張りを制御する役割を果たします。

 

これらの関係は私たちの体内で絶えず作用し、そのバランスがくずれると特定の臓器に負担がかかり不調が生じる、ということに。五行五臓の循環、またそのバランスの重要性を知るだけでも、セルフケアの必要性やその意味をよく理解することができます。

 

 

【教えてくれたのは】

森田遼介
森田遼介さん
TC鍼灸マッサージ院院長。はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師(国家資格)
公式サイトを見る
Instagram

鍼灸院などに勤めながら、勤務後や休日に個人で訪問治療を行い、予約1年待ちが続いたタイミングで2023年2月に独立、4カ月で予約満杯となる。現在は埼玉・東京エリアの訪問自費治療を中心に活動。人生100年時代をできるだけQOL(生活の質)を落とさない目的の治療が需要として高い。*現在、新規予約は紹介制のみ。近著に「自律神経にいいこと大全100

 

 

イラスト/きくちりえ(Softdesign) 取材・文/井尾淳子

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