日頃意識することのない「骨盤底筋」。下腹がポッコリ、お尻が下がっている人は、骨盤底筋が弱っていることが多い、なんて、ミーナどきっ!です。尿や便のトラブルにつながりやすいそうなので、将来尿もれなどにならないよう、今からちゃんと意識しなくちゃです。
体調が変わる! ボディラインが変わる!
究極のインナーマッスル
「骨盤底筋」は今日から鍛える!
実は、女性なら、どの筋肉よりも優先して鍛えるべき筋肉があります。それが、目で見ることができない深層筋(インナーマッスル)のひとつ、「骨盤底筋」です。
「骨盤底筋って何?」「どこにあるの?」。そう思ったあなたは、ぜひとも読むべし!
ここでは2回に分け、女性らしい体づくりとともに、女性特有の悩みを解消する「骨盤底筋」を鍛えるべき理由やトレーニングの仕方をご紹介。さらに、専門家4人の方々に対策などもアドバイスしていただきます。
まず今回ご紹介するのは、「骨盤底筋」が衰えることで起こるトラブルやその役割など。そして、女性医療クリニックの関口由紀さんと整形外科医の中村格子さんのお2人にお話をうかがいました。
「骨盤底筋」は"美と健康の要"!
地道に鍛えることで、冷え、生理不順、排尿トラブルの予防にも!
女性のほうが起きやすい!
骨盤底筋トラブル
「骨盤」のことは知っていても、「骨盤底筋」となると、知らない、意識したことがない、という人は多いよう。骨盤は、腰まわりを囲む骨のことで、内側に腸や泌尿器、生殖器を収めていて、上半身の体重を受け止めるような形をしています。そして、その骨盤内のいちばん下(底)にあるのが「骨盤底筋」! 下から内臓を支えています。二足歩行の人間にしかない筋肉です。
男性と比べ、女性の骨盤は横に広くて浅い形をしていますが、骨盤底筋の構造も異なります。男性の骨盤の下側には尿道と肛門しかないのに対し、女性は尿道、膣、肛門という3つの穴があります。また、女性のほうが筋肉の発達が悪く、さらに出産で骨盤底筋がダメージを受けたりするので、老化すると、女性のほうが骨盤底筋トラブルを起こしやすいのです。
トラブルの代名詞は、尿漏れや頻尿ですが、子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤といった〝骨盤臓器脱〞という病気に発展することも。ヨーロッパでは骨盤底筋に関する研究が早くから進み、特にフランスでは産後ケアが普通に行われています。出産により骨盤底筋が傷ついたり緩んだりするのは当たり前、ととらえ、保険内でリハビリ&トレーニングができるシステムも。それに比べると日本は、だいぶ遅れているようです。
「骨盤底筋」が自然と
鍛えられていた、昔の日本女性
日本人は昔、畳の生活、和式トイレ、布団の上げ下げ、床の雑巾がけ、草むしりなど、〝しゃがんで立つ動作〞を頻繁に行っていたので、日常生活の中で、骨盤底筋が自然と鍛えられていました。現代の日本人は、便利な家電や、交通機関、デスクワーク、椅子に座る生活などにより、骨盤底筋が昔の女性に比べて弱いといわれます。
その最たる例が生理のとき。着物に腰巻きの時代には、ふんどしのようなものを当てていました。布や紙、脱脂綿などは高価なので、なるべく膣口を締めて経血を膣の奥や子宮内にためておき、トイレに行ったとき一気に排出するようにしていたのです! それが「月経血コントロール」。最近、布ナプキンの普及により、月経血コントロールを意識する人も増えましたが、昔の女性のようにためておくことは難しいはず。普段から着物を着て帯をキュッと締め、姿勢がよかった日本女性は、骨盤底筋を含むインナーマッスルがつねに鍛えられていたと想像できます。
戦前の日本女性の平均寿命は推定50歳前後。閉経する頃には亡くなる女性も多かったと考えられます。しかし、平均寿命が延び、閉経後も30年以上生きる可能性のある現代では、骨盤底筋を意識して鍛える必要が! 尿漏れなどのトラブルを防ぐためにも、意識してケアしたいものです。
関口由紀 さん Yuki Sekiguchi
profile
1963年生まれ。女性泌尿器を専門に診る
「LUNA骨盤底トータルサポートクリニック」院長。
「女性医療クリニック・LUNAグループ」理事長。
医学博士、日本泌尿器科学会専門医・指導医、
日本東洋医学会専門医・指導医。
『女性外来の骨盤底筋トレーニング』(宝島社)ほか、
著書・監修本も多数。
http://www.luna-clinic.jp
「さまざまな役割を持つ『骨盤底』は、
筋肉というより臓器のひとつです」
LUNAグループを創設し、日本ではまだ遅れているといわれる女性医療の拠点づくりを目指す関口先生。キーワードは「骨盤底」です。
「私たちは〝骨盤底〞と呼び、ひとつの臓器ととらえています。骨盤内の臓器に指示を出し、排泄を担っているのですから、単なる筋肉群ではないんです。骨盤底が傷むといろいろなトラブルが出てきます。尿漏れ、頻尿、便秘、便失禁、月経困難症、骨
盤痛など…。出産時に傷ついたことが尾を引いて、更年期に障害が出るケースも。症状が軽い場合は骨盤底トレーニングで治りますから、初期にご相談くださいね」
■横から見たところ(右)
骨盤底筋は、文字通り、骨盤のいちばん下側から臓器を支えている筋肉。まさに、縁の下の力持ちです!
■下から見たところ(左)
骨盤底筋は、筋膜、靱帯、神経とともに「骨盤底」を形成し、尿道・膣・肛門を取り巻いています
中村格子 さん Kakuko Nakamura
profile
1966年生まれ。整形外科医、医学博士。
「Dr. KAKUKO スポーツクリニック」院長。
2014年、スタジオを備えた整形外科クリニックを代官山にオープン。
健康で美しく人生を送ることの大切さを説く。
数多くの著書の出版、講演、メディア出演と幅広く活動中。
http://www.dr-kakuko.com
「長年続けてきた歩き方の癖も、
骨盤底筋の衰えの原因に」
「整形外科では〝骨盤帯〞という言い方をします。笑ったときに尿やオナラが漏れる方…それは骨盤帯が衰えている可能性がありますね。運動不足や加齢などで、ここが弱くなっている人は、たいてい下腹がポッコリ、お尻が下がっているんです。骨盤帯はさまざまな部位と連動しているので、すり足で歩く人、膝を曲げて歩く癖のある人、足底筋が落ちている人なども、早くから骨盤帯が衰えていることが多いですね」。
腰、骨盤まわりの筋肉にも関係が深く、痛みの改善にも役立つので、格子先生が自ら骨盤底筋トレーニングの指導をすることも。
体幹の核(コア)を形成する
「インナーユニット」の構成要素
骨盤底筋は、横隔膜、腹横筋、多裂筋と連動して動く深層筋です。医療、健康、スポーツの分野でも注目の的!
「骨盤底筋」の衰えは、尿トラブルのほか、
ボディラインのくずれにも直結!
「インナーユニット」の機能の低下は、脂肪がついてお腹やお尻がたるみ、姿勢が悪くなる原因に。体型のくずれが気になる人は、骨盤底筋を見直してみて。
次回は、美ボディを手に入れるための「骨盤底筋」トレーニングの仕方などを、理学療法士の重田美和さんとボディワークプロデューサーのkyoさんに教えていただきます。
イラスト/かくたりかこ 構成・原文/蓮見則子