陽が再び増してくるので「一陽来復」とも!
12月半ばともなると日没の早さを実感します。「冬至」の東京の日没時間は16時30分頃。一年でいちばん太陽が出ている時間が短く、夜が長くなります。
「こうしたことから、冬至は陰の気が最も強くなるといわれています。その一方で、これから陽の気が増していくことから、『陰極まりて陽生ず』や『一陽来復(いちようらいふく)』という言葉もあります。陽が高まり再びおめでたいことがやってくることを意味します。
『乃東生(なつかれくさしょうず)』というように、夏になると枯れる靫草(うつぼぐさ)の芽が出て、『雪下出麦(ゆきわたりてむぎいづる)』というように、積雪の下で秋に種をまいた麦が芽を出します。冷たい土の中では春に向けての準備が始まっているのです。
そして、『麋角解(さわしかのつのおつる)』とは、雄のヘラジカ(またはオオジカ)の角が生え変わる頃という意味です。枝分かれした大きな角は冬に自然に落ち、春にまた新しい角が生え始めます。
寒さが増すなかで、自然のなかでは着々と季節が巡る準備がされている様子を表しています」(齋藤友香理さん)
体をしっかり温めて! ゆず湯もそのひとつ
これから徐々に日は長くなりますが、まだまだ寒さは厳しくなっていきます。
「とにかく冷えないようにしてください。寒さで体が縮こまると、血の巡りが悪くなり、手足が冷えたり、肩こり、関節痛、腰痛を発症することも。血管が収縮するので、動悸や血圧の上昇、この季節には心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなるので注意が必要です。
冬至といえば有名なのが「ゆず湯」。その爽やか柑橘類の香りにはリラックス効果があり、ゆずの皮に含まれるリモネンという成分には、毛細血管を刺激して、全身の血行をよくする効果があります。豊富なビタミンCは肌の保水力を高め、抗酸化作用もあるので、美肌効果も期待できそうです」
黄色や赤の食材で「脾(ひ)」や「腎(じん)」を元気に
「冬至には各地でかぼちゃや小豆を食べる風習があります。かぼちゃは南京ともいい、『ん』がつく食材は縁起がいいとされていて、無病息災を祈り、ほかに豊富に含まれるビタミン類の補給の意味もあるようです。
かぼちゃなどの黄色い食べ物には、栄養の消化吸収にかかわる『脾』を元気にする働きがあり、気や血をつくり、筋肉に栄養を補給します。黄色い食材には、ほかにさつまいも、大豆、栗、柿などがあります。
冬至に小豆が入ったお粥を食べる地域もあります。小豆はその赤い色が邪気を祓い、縁起がいい食材とされています。
この寒い季節には汗が出にくいので、『腎』が膀胱とともにせっせと働いて、不要な水分を尿として排出しています。冬になるとトイレが近くなったり、むくんだりしがちなのはこのためです。小豆には利尿作用や解毒作用があるので、こうした腎の働きをサポートします。
かぼちゃと小豆を一緒に煮て『いとこ煮』にする地域もあり、この時期に弱まりやすい脾や腎を元気にするという意味でも、理にかなった風習といえます」
二十四節気の養生法とは?
旧暦の1年を24等分して、季節の移り変わりとそれに伴う生活の知恵を結びつけた「二十四節気」の養生法。この考えは紀元前の中国で生まれ、日本でも古くから親しまれています。
二十四節気はまず1年で昼の時間が最も長い日を夏至(6/21)、最も短い日を冬至(12/21)と決め、そこに昼と夜の長さがほぼ同じになる日である春分(3/20)と秋分(9/22)を加えて、1年を春夏秋冬の4つの季節に区分。さらにその中を、気温の変化や気象現象、動植物の様子などで6つに分けたものです。(詳しくは第1回参照)
※日にちは国立天文台発表の2024年のもので、年により多少前後します。
「二十四節気は長年の生活経験や知識で導き出した、農作業の目安にするための『気候・天気の予報』であり、それに従った養生法は、『人は自然の一部で、自然と調和して生きることが大切』という考え方に基づいた健康管理の知恵です。これらは漢方の陰陽論や五行説ともつながっています」
【教えていただいた方】
東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務め、多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら外部セミナーも担当し、漢方を学ぶ楽しさを広めている。また「養生を指導できる人材」の社員育成、『薬日本堂のおうち漢方365日』『薬膳・漢方検定 公式テキスト』など、書籍監修にも多く携わっている。
イラスト/河村ふうこ 取材・文/山村浩子