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不眠や中途覚醒がツラい更年期世代。睡眠の質を上げるセルフケアって?

自律神経評論家として話題の鍼灸師、森田遼介さん。「真面目な人ほど、セルフケアも頑張ってしまいがち」という視点から、とにかくハードルを下げ、誰にでも習慣化できるセルフケアが人気です。今回は、更年期世代に多い不眠の悩みについて。自律神経との関係と、今日からできる超簡単セルフケアについて伺いました。

寝つけない、眠りが浅く、寝ても疲れがとれない、日中もボーッとして眠気がある…など、睡眠にまつわる不調を抱える人はOurAge世代にもたくさん!「更年期による自律神経の揺らぎが、睡眠に大きく影響を与えていることが考えられます」と、森田さん。

 

睡眠の質が落ちている人の特徴は、オン(活動モード)とオフ(リラックスモード)で言うと、オンを担う自律神経の交感神経が過活動になっていること。「車に例えると、交感神経はアクセルの働きです。つねにアクセルを踏み続けているとエンジンは熱くなってしまいますよね。実は、そんな状態に傾きやすいのが更年期。リラックスモードの副交感神経が働きにくいため、体も休まりにくい状態になる、というわけです」

 

後頭部が硬い人ほど、睡眠の質が落ちている!

 

そして、不眠症状が出る人の2つめの特徴は、後頭部の筋肉が硬くなっていること! 交感神経が集まっている首や背中の筋肉が凝り固まってしまうことから、後頭部の筋肉も硬くなるそう。

 

「ストレスが多く体が緊張している人、パソコンなど、仕事で目を酷使している人が当てはまりますね。また、筋肉は冷えや湿度によっても硬くなりやすいため、入浴後に髪をよく乾かしていない人も要注意。ドライヤーで乾かしているつもりでも、意外と後頭部は乾かし切れていない場合が多いので、ちょっと意識を向けてみてください」

 

後頭部が硬くなると、不眠だけではなく、頭痛や吐き気にもつながってしまう、とのこと。そこで不眠のツボを活用した、2種の簡単セルフケアを教えてもらいました!

 

【簡単セルフケア①】

後頭部を緩めるツボを温める

後頭部を緩めるツボ

 

「イラストのツボ①天柱②風池③完骨の場所全体を、ホットタオル(濡らしたタオルをラップに包み、500〜600Wで30-60秒ほど電子レンジで温める。火傷に注意)で温めます。首、肩、背中のコリや痛み、眼精疲労、睡眠不足、頭痛、気圧の変化による不調の予防にも効果があります」

 

注意点は、ツボ周辺を強く押したり、ゴリゴリ揉んだりしないこと。

 

「後頭部のこのエリアはとてもデリケートな部分。硬くなっているからと強く揉んでしまうと、体は防衛反応を起こし、余計に緊張するので、ホットタオルで温めるだけのセルフケアをおすすめしています」

 

ただし更年期の人の場合、頭部に熱が偏りやすいことから、めまいやのぼせの症状が出る場合も。

 

「それは、その人には合っていないという体のサインですからムリをせず、他のセルフケアに変えましょう。ホットタオルを当てた時、気持ちが良いと感じられた場合は体に合っているので、目安にしてください」

 

【簡単セルフケア②】

睡眠の質を改善する「神闕(しんけつ)」のツボを温める

 

「睡眠にも熱が関わっています」と森田さん。東洋医学では、「睡眠時には、“陽気(暖気)”が、お腹に集まると良い」と、二千年以上前の書物にも書かれ、受け継がれているのだとか。

 

「おへそのあたりには、神闕(しんけつ)というツボがあります。ここを睡眠前に温かい手で温めたり、火傷をしないよう、厚地の服の上に小さなカイロを貼って温めることで、睡眠の質は改善します」

「神闕(しんけつ)」のツボ
「就寝前、おへそを中心に、その周囲をカイロやお湯を入れたペットボトルを当てて温めましょう。手が温まっていれば、イラストのように手を当てるだけでもOK。不眠をはじめ、冷えによる腹痛、便秘、下痢、胃腸の不調、偏頭痛、耳鳴り、やる気の低下、アレルギーなどの症状にも効果があります」

 

「神闕」のツボをカイロで温める場合、日中も温めたいならカイロは下腹部に、就寝前に温めるならカイロはおへその真上に貼りましょう。

 

「23時就寝」とは言うけれど…でも、なぜ大切なの?

 

不眠以外にも、貧血や動悸、疲れ目、耳鳴り、月経過多、不安などの更年期症状がある時は、夜は23時までに寝るのが理想的。でもこれを守るのは、なかなか難しい!

 

「更年期症状の対策として、病院でも鉄分や亜鉛などのサプリをすすめられることがありますよね。東洋医学でも、血液やホルモンの働きを示す血(けつ)の不足が原因にあると考えます。このように東洋医学と西洋医学では、言葉は違えど似ている部分が多くあります」

 

睡眠時間と体調の関係をわかりやすく示しているのが下のイラストの「子午流注(しごるちゅう)」。一日を12分割して、さらに五臓六腑を配分した考え方です。

 

【子午流注】

子午流注

 

 

「鍼灸や漢方などの東洋医学の先生は、たしかによく、夜は23時には寝てくださいと言いますよね。それはイラストの中にある、“胆”と“肝”の部分に理由があるんです。この2つは血(けつ)と関係が深い臓器で、23時から午前3時の間に休ませることが、血を増やすことにつながっているからなんです」

 

この時間帯に睡眠を取らずにいると、どうなるのでしょうか?

 

「体調を落ち着かせる働きを持つのは、“陽気”の反対の“陰気”です。“胆”と“肝”が充分に休めずにいると、この陰気が減り、体はいわゆる貧血状態になってしまうんですね。すると、不眠や他の更年期症状もなかなか改善しません。

 

仕事があったり、家事や子育てで忙しいOurAge世代の人は、どうしても就寝時間が遅くなりがちですが…。少しでも早く寝る日を設けたり、セルフケアで体を温める時間を作ったり、ご自身でバランスをとることを心がけてほしいですね」

 

また、就寝前に目を酷使することでも肝は疲れやすくなるため、PCやスマホの見過ぎには要注意。ブルーライトは交感神経を優位に働かせる作用があり、脳が覚醒して寝付きが悪くなるため、注意しましょう!

 

【教えてくれたのは】

森田遼介
森田遼介さん
TC鍼灸マッサージ院院長。はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師(国家資格)
公式サイトを見る
Instagram

鍼灸院などに勤めながら、勤務後や休日に個人で訪問治療を行い、予約1年待ちが続いたタイミングで2023年2月に独立、4カ月で予約満杯となる。現在は埼玉・東京エリアの訪問自費治療を中心に活動。人生100年時代をできるだけQOL(生活の質)を落とさない目的の治療が需要として高い。*現在、新規予約は紹介制のみ。近著に「自律神経にいいこと大全100

 

 

イラスト/きくちりえ(Softdesign) 取材・文/井尾淳子

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